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    takatowasi

    @takatowasi
    使い方がいまいち分かってない字書きリハビリ中の人。
    解釈違いがあろうがなんだろうが、書きたいものを書いて投稿するだけの我が道をゆく系の人

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    takatowasi

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    いわゆる閉じ込められた系のそれ。現パロで隆鹿。
    オムライス作ってるだけです。

    #戦国無双5
    sengokuMusou5
    #山中鹿介
    yamanakaKagosuke
    #小早川隆景
    takakageKobayakawa
    #隆鹿
    lonDeer

    【俺たち】オムライスを作ろう!【閉じ込められました】 いつも通りの朝だと思っていた。
     起きて、歯を磨いて、着替えて、少し世間知らずで、わがままな恋人からのLINEを確認して、適当に朝ごはんを食べてバイトに行く。
     変わらない、いつも通りの朝……だと思っていたのに。

    「どこだよ……ここ」

     鹿介が目を覚ました時、全体が真っ白な壁で覆われた部屋のベッドの上であった。



    「俺だけなのかな…」

     と、辺りを見回した鹿介は隣のベッドで寝ている人物に驚いた。

    「坊ちゃん!」

     焦りを滲ませつつ、坊ちゃん…もとい隆景の元へ駆け寄り肩に手をかける。
     どうやら隆景は普通に眠っているらしく、すやすやと寝息を立てていた。

    「おい、坊ちゃん起きろ。起きろって」

     ぺしぺしと頬を軽く叩いたら、隆景が身動ぎしながらうっすらと目を開ける。

    「坊ちゃん!」
    「ん…なんだよ………ってなんだここ!?」

     鹿介に起こされ、うつらうつらと目を開けた隆景は、変わりに変わっている光景に身体を思い切り起こして辺りを見回す。

    「起きたか?坊ちゃん」
    「……!っ鹿介!?何だここは?なんで私たちだけなんだ?」
    「お、落ち着けって坊ちゃん。俺だって今起きたとこでまだ何もわかってねえんだから…」

     不安を滲ませつつ鹿介の肩を掴んで問いかける隆景をなだめていたら、突如背後からバンッと音がして二人は驚きながら音の方へ振り向いた。
     すると背後に配置されたルームライトがのっている引き出しが開いていることに気付く。
     鹿介は引き出しに近づいて中を覗くと、そこには一枚の封筒が入っており、それを手に取ると封を開けて中の紙を見た。

    「なんだこれ……」

    その紙にはこう書かれていた。

    【この部屋はルールに従って行動しないと出られない部屋となっております。この部屋のルールは【二人で協力してオムライスを完成させる事】となります。それでは頑張ってくださいませ】



    「なんだ簡単な事じゃないか」
     
     環境にもう慣れたのか、鹿介から受け取った紙を見た隆景はもう余裕の笑みを浮かべている。

    「いやいや坊ちゃん。これちゃんと読んだか?【二人で協力して】だぞ。作業分担しないと条件クリア出来ねーって」
    「私に出来ない事が無いとでも?さっさと作って早く出ようじゃないか。ところでキッチンはどこだ?」

     隆景が辺りを見回し、ドアを見つけた。

    「鹿介」
    「何?」
    「ドアがある。あの先かもしれない」
    「まさか俺に先に行けって?…ったく、わかったよ」

     鹿介が先導してそのドアを開ける。
     その先には、最新の設備が整えられたキッチン、大きい冷蔵庫が備えられ、更にはテーブルまで設置されていた。

    「普通にキッチンだな…」
    「そうなんだ…」

     部屋を覗き込む鹿介の後ろから隆景もちらりと部屋を覗く。
     鹿介はそのままキッチンへ向かって、あちこち戸棚を開けて中に何があるのか確認する。
     隆景はそのまま冷蔵庫へ向かい、ドアを開け中身を確認した。

    「すごい…色々入ってるぞ」

     隆景が確認した冷蔵庫には卵はもちろん、ハムや肉類等も一通り入っており、オムライス以外の料理も出来そうであった。
     一方の鹿介の方も、食器から色とりどりの調味料までしっかりと揃っているのを確認していた。

    「食いもんも調味料も揃ってるとなると…ちゃんと作ったら出られそうだな」
    「そうだな。お腹空いてきたし早く作ってさっさと出よう」

     隆景はそう言いながら、冷蔵庫の中のミネラルウォーターのボトルを取り出し、鹿介に渡す。

    「俺に先に飲めってか!?毒味役かよ…」

     渡されたボトルを躊躇なく開けて飲む鹿介を見て、隆景もボトルを開けて飲んだ。
     部屋に何故閉じ込められているのか?何故自分達なのか?そもそもこんな所に閉じ込めた犯人は誰なのか?という疑問は念頭に置いてないらしい。

    「じゃ、早速作るとするか…って飯がねえな…まずはそこからか」

     鹿介はボウルとザルを取り出し、棚の中にあった米を取り出し軽量カップで2合分計ったあと、米を洗い始める。
     隆景がその光景を後ろから覗き込んで鹿介の手さばきを眺める。

    「坊ちゃん。米炊けるまで暇になるから向こう行ってていいぞ」
    「暇だからここにいるんだ」

     絶対動く気ないなと思った鹿介は、隆景に構わずにそのまま米を洗い終えて炊飯器に移しスイッチを入れる。
     そしてそのまま米が炊けるまで、部屋にあるベッドの上に寝転がる。
     そのまま一緒に隆景も寝転がって来たので鹿介は隆景の頭を軽く叩いた。

    「坊ちゃん、狭い。向こう行けって」
    「いいじゃないか。せっかくなんだし少し相手しなよ」

     隆景がそのまま鹿介に詰め寄り頬を寄せ口付けようとするが

    「どこで誰が見てるか分からねぇからやめろ」

     と、すかさず鹿介の手が隆景の顔を覆い回避する。

    「鹿の癖に生意気だぞ」
    「あんたが場所も考えずに盛るからだろ?」

     せっかくの行為を回避され、少し不貞腐れた隆景ではあるが、後ろから鹿介を抱き寄せる事には抵抗されなかったのでそれなりに納得し、そのまま鹿介の首元に顔を埋める。
     鹿介の方も首元に触れられた一瞬、その身体を震わせたが、それきり隆景のする行為には抵抗を示さなくなった。
     それをチャンスと見た隆景は鹿介の髪に触れその頭を撫でる。
     もう片方の腕は鹿介を離さないようにしっかりと力を入れる事を忘れない。
     一方、撫でられて心地がいいのか鹿介の方も、力を込めた隆景に合わせるように身体を隆景に寄せてきた。

    「鹿介…」
    「ん…」

     どうやら鹿介はご飯が炊けるまで寝ようとしていたようだ。
     微睡んだ様なその返事に隆景は今なら…と邪な考えを巡らせる。
     隆景は鹿介と向かい合うように回り込み、ゆっくり鹿介の頬に触れ、そのまま口付ける。
     今度は抵抗されなかったので、そのまま彼の頭を支え、髪の毛を撫でながら口付けを楽しんでいると、ふと彼の髪の毛から自分の知る香りが流れてきた。

    (あ…こいつ…)

     以前会った時とは違うシャンプーの匂いがする。
     そしてそのシャンプーの香りには覚えがある。
     自分が使ってるシャンプーの香りだ。

    「鹿介…もしかしてこの間お前に贈ったシャンプー…」
    「あ、飯炊けたわ」

     さっきまで微睡んで隆景を受け入れてたというのに、その空気は何処へやら。
     炊飯器の炊けた音に即座に反応して、隆景を振り切りつつ起き上がった鹿介はそのままキッチンへ向かう。
     その場に残された隆景は、まるでお預けを食らったような気持ちに苛まれつつもゆっくりとキッチンへ鹿介の後を追った。

    「お、来たか坊ちゃん。二人で作んなきゃだから坊ちゃんにも手伝ってもらうからな」
    「…んな事わかってるよ…」

     隆景はあと少しの所の雰囲気を潰されたので少々不機嫌混じりの声で返事をしたのだが、鹿介はそれに気づく事無く先へ進める。

    「坊ちゃん」
    「何だよ…」
    「この中にたまご割っといてくれないか」

     鹿介はガラスのボウルとたまごを隆景に手渡し、冷蔵庫へ向かう。
     オムライスに使う材料の選定をする為だ。

    「うーん、オムライスなんてしょっちゅう作らないからな…。とりあえず良くありそうなやつっぽいの作ればいいか…」

     と、オムライスのライス部分に使う材料を選んでいると、背後からガラスの割れた様な音が聞こえたので鹿介は慌てて振り返った。

    「坊ちゃん!?大丈夫……か………」

     振り返った鹿介は思わず絶句して隆景の方を見た。

    「坊ちゃんさ…俺、確かにたまご割っといてって言ったけどさ…」
    「ん?何だよ。ちゃんと割ってるじゃないか、言われた通りにさ」
    「いや、それはそうなんだけど…」

    (嘘だろ、マジかよ…)

     隆景は確かにたまごを割っていた。
     ボウルの中に、殻ごと割っていた。
     先程の音は、ボウルにたまごを叩き付けた音だったのだ。

    「なぁ坊ちゃん」
    「何だよ」
    「TKG(卵かけご飯)って知ってるか?」
    「何だよそれ。新しいファッションブランドの事かい?」
    「卵かけご飯の事だよ!食った事ねえのかよ!」
    「それって、たまごご飯の事かい?それなら食べた事くらいあるさ。金持ちだからって庶民的なものに触れてないとか勝手に想像しないでほしいな」
    「じゃあたまご割った事は?」
    「無いね。さっき言ったろ?私は【たまごご飯】は食べた事あるって」

     良く話を聞いたら、隆景の言う【たまごご飯】は、すでにたまごは割られている(黄身だけがのっていたり、白身もメレンゲになっていたり等)状態で出てくる為、自分で割った事も味付けも自分でした事は無いという。
     鹿介は頭を抱えた。
     隆景は料理が出来ないだろうと予測はしていたが、想定をはるかに超えている。
     一から教えながらやらせても協力の条件を満たせるだろうか?
     鹿介は考えを巡らせ、そして切り替えた。

    「坊ちゃん、今から教えてやっからその通りにやってくれ」

     まずは、たまごの割り方から教えねば。
     鹿介は隆景の隣に行き、目の前でたまごを割って見せた。

    「こうやってたまごを割るんだ。初めは殻にヒビを入れて、器の中でこうやってたまごを開く。その時殻が入りやすいから殻を開く時は慎重に。あ、最初のヒビ入れる時、角とかぶつける時に叩き付けたりするなよ?」

     言われた通りに隆景もチャレンジを試みるが、初めてゆえか、たまごを持った手が震えてる。
     鹿介は隆景の背中に回ってその手を支える。

    「ほら、こうやってコンコンってぶつけてだな…」

     隆景の手を取った鹿介はそのまま力加減を教えるように、手を動かし割り方を教える。
     隆景の方は触れられた手の方に意識が集中してしまい、されるがままとなっていた。

    「ほら、ぼーっとしない」

     鹿介が手を動かすように促すも、隆景はこの密着した状態に緊張してしまい、鹿介の方しか見ていない。

    「坊ちゃん?聞いてんのか?」

     鹿介が隆景の顔を覗き込んで声をかける。
     上目遣いになっている鹿介と目が合った隆景の緊張は高まるばかりだ。

    「だ、大丈夫だよこれくらい。一人で割れるから早く離れな」

     自分の緊張と同時に湧き上がる感情を隠そうと、あえて素っ気ない態度で隆景は鹿介から離れると、そのままたまごを割り始めた。
     触れられた手の感触と胸の高まりは治まる気配を見せてくれない。

    「あ、そういえばさ」

     鹿介はたまごを両手に一個ずつ持って隆景に話し掛ける。
     隆景も手を止めて彼の方へ向いた。

    「何してるの?」
    「こういう割り方もあるんだよ」

     そう言って鹿介はたまご同士をコンコンとぶつけ合う。
     すると、片方のたまごだけがヒビが入った。

    「変に力入れずにたまごをぶつけあうとさ、片方だけがヒビはいるんだよ」

     そう言って鹿介は両手のたまごを見せた。
     片方だけがヒビが入ったたまごを見て素直に隆景も感心してしまう。

    「へぇ、なるほどね」
    「さ、坊ちゃん。たまご割ったし箸かそこの泡立て器で、たまごをかき混ぜといてくれ。味付けは俺がするから」

     鹿介は再び冷蔵庫に戻りオムライスの材料選びに戻る。
     そして、取り出したのは鶏のひき肉、ミックスベジタブル、玉ねぎだった。

    「玉ねぎのみじん切り、冷凍であると思ったのに無かったなー」
    「ひき肉は何に使うんだ?」
    「ああこれの事か、チキンライス作ろうと思って鶏肉見たんだけど、早く作りたいから鶏肉切るのやめようと思ってこっちにした」
    「チキンライス作るなら鶏肉入れて欲しいんだけど」
    「この期に及んでわがまま言うなよ坊ちゃん。俺らなんだかんだで閉じ込められてんだぜ?手っ取り早く作って出るの優先ってやつだよ」
    「嫌だね。出来上がったそれは私達で食べるんだろう?どうせ閉じ込められてるなら、いっそ開き直って美味しいやつが食べたい」

     手っ取り早く作りたい鹿介と、美味しいオムライスを食べたい隆景の意見がぶつかるも、結局は鹿介の方が折れて、冷蔵庫の中からむね肉を取り出した。

    「わかったから玉ねぎの皮、剥いてくれよ。茶色で薄くなってる部分だけひん剥くんだぜ」
    「…………」
    「…坊ちゃん?」

     (あーまぁそうだよな…)

    「ほら、こうやってだな…少しずつ少しずつ。白い所は食べられる部分だから剥きすぎに気を付けて…」

     鹿介は隆景の側へ行き、玉ねぎを剥いて見せる。

    「はい、後は出来るだろ?残り頼むぜ」

     少し剥いた玉ねぎを鹿介は隆景に渡すも、その本人は真横で皮を剥いている、鹿介の睫毛が綺麗だなと見蕩れていた事には気付かない。
     大人しく隆景が皮を剥き始めるのを確認した鹿介は、再び持ち場に戻り鶏肉をひと口大の大きさに切っていく。
     しばらくして玉ねぎの皮も剥けたので、隆景は鹿介に玉ねぎを渡してきた。

    「ありがとう坊ちゃん。また呼ぶから休憩してて」
    「わかったよ」

     鹿介が玉ねぎを軽快に刻む音を聞きながら、そういえば冷凍庫に何故かアイス入ってたなと隆景は冷凍庫を開けた。
     すると、冷凍庫の中身がバランスが悪かったのかバラバラと落ちてきた。

    「うわっ!」
    「坊ちゃん!?大丈夫か?……っ!」
    「鹿介?」

     隆景が落ちた物を拾いつつ鹿介を見ると、鹿介が自分の指を見ている。
     拾っていたものを放置して、隆景はまっすぐ鹿介へと近づいた。

    「指切った?」
    「え、いや、大した事ないよ。軽くやっちまっただ…け」

     先程の音に驚いて、自分の方へ振り返った時に鹿介は包丁を滑らせ人差し指を切ったらしい。
     指からわずかに流れる血を見て、洗い流そうとした鹿介を遮り、隆景は彼の指を口に含んだ。
     焦った鹿介が指を引き抜こうとして引っ張るも、隆景の力は強くピクリとも動かない。

    「おい、離せ坊ちゃん。変な事してんじゃねえ。頼むから…っ」

     鹿介の言葉を無視して隆景は指を口に含み続ける。
     傷口を舐め血を拭うと、水音をたて傷口を吸うと、また血が溢れたのでそれを舌で拭う。
     隆景のその仕草は、まるで情事を思い起こさせるのか、鹿介の顔が紅潮の様子を見せる。

    「なあ、もういいからっ!……早く離せよっ…」

     いよいよ鹿介が本気の抵抗を示し始めたので、隆景はわざと煽るように指を引き抜いた。
     鹿介は気恥しさから視線を逸らしているが、その顔は紅潮している。

    「何赤くなってんのさ」
    「…っ!うるさい!」

     してやったりといった隆景に対して、余裕が削がれた鹿介は背中を向けてそそくさとキッチンへ戻った。
     傷口を洗い流し絆創膏を巻いた後はそのまま調理を続行する。
     隆景はそんな鹿介の背中を見つつ、鹿介が寝転がっていたベッドに戻る。
     彼の残り香がまだ残っている事を堪能しつつ、先程の事を思い返す。

    (やっぱり、使ってくれてるんだな…)

     実は先日、隆景は鹿介に対し

    「君の髪は何だか傷んでるみたいだね。普段使ってるのが低品質なシャンプーだからそうなるんだ。それでは髪が可哀想だから、私が使ってるシャンプーをあげるから、これで髪を洗って私を満足させてみせなよ」

     なんて言う建前と

    (君は私の恋人なのだから変な虫に寄られるのだけは避けたいから、早く私色に染まって貰わないと)

     という、口に出さない本心を持ちつつ、鹿介に半ば押し付けるようにしてシャンプーを贈ったのである。
     その時は鹿介と軽く口論したものだが、結果として鹿介は受け取ってくれたし更には使ってくれている。
     その事が隆景にとってはとても嬉しく、なんなら本当に可愛い奴め、なんて思ってたりする。
     ここの部屋がもし別な案件で閉じ込められていたのであったならば、今頃理性は保っていたかどうか…。
     そうやって一人ベッドの上でゆったりくつろいでいたが、鹿介に呼ばれたのでキッチンへ向かうと、もう材料を炒める作業に入るところだった。

    「坊ちゃんは俺が言った事を手伝ってくれ」

     鹿介は熱したフライパンに油を引きまずは鶏肉を入れて炒め始めた。
     隆景は鹿介の隣に立って指示を待つ。

    「玉ねぎ入れて」

     と、言われれば玉ねぎを入れて。

    「ミックスベジタブル入れて」

     と、言われれば封を開けてミックスベジタブルを入れた。
     フライパンを時々揺すりながらテキパキと具材を炒めてる鹿介を、ちらりと覗いては逸らしを繰り返す隆景と指示をしようとした鹿介がバッチリ目が合うも。

    「次、ご飯入れてくれる?」

     と、特に気にするでもなく鹿介が指示を出すので隆景はとりあえずそれに従う。
     どっちにせよ、完成させないとここから解放されないし、色々と手を出せない。
     しばらくいたからこそ、この部屋の拘束力が本物なのだと判断した隆景はとにかく早くこの部屋から出たかった。
     一方の鹿介はご飯が投入された後、手早く具材と混ぜ合わせ味付けに入る。
     塩コショウを少々、何味にしようかと思って思い付いたのはケチャップ味。
     サッと入れられたケチャップを焦げ付かない様に手早く混ぜ合わせ、鹿介はケチャップ味のチキンライスを完成させた。
     後はたまごをどうするかなのだが、ここでまた一悶着起きた。

    「坊ちゃん…ほんと頼むからわがままやめてくれよ」
    「嫌だね。私はあのふわふわたまごのオムライスが良い」

     薄焼きたまごでチキンライスを包む派の鹿介(この方が手っ取り早く作れる)と、ふわふわオムレツ派の隆景(切ると、とろりとたまごが溢れ広がるタイプ)で意見が真っ二つになり、それで揉め始めたのだ。

    「チキンライスの鶏肉は叶えたろ?たまごはこっちに任せてくれよ…」
    「せっかくここまで済んだのに妥協とか嫌だね。たまごもこだわるべきだよ」

     ここでつまづいたらせっかくのチキンライスも冷めてしまう。
     またしても鹿介は折れて、たまごの味付けに入る。
     少し生クリームを入れて、ほんの少しだけマヨネーズを加える。

    「ねぇ、今何入れた?」
    「マヨネーズ」
    「なんで!?」
    「ほんの少しだけならマヨネーズの油分と酸味でふわふわになるんだよ。冷めてもそんなに固くならないしな。あ、酸味は飛ぶからマヨネーズの風味は残らねぇよ」

     鹿介の料理知識に感心しつつ、隆景は鹿介をじっと見つめる。
     隆景は何か出来ないことはないかと考え、そうだと思い付いたのか食器棚から皿と楕円形の金型を出して来た。

    「坊ちゃん?何すんの?」
    「私にだってこれくらいは出来るさ」

     と、チキンライスを金型に詰めると、それを皿の上にのせる。
     皿の上で綺麗な楕円形にチキンライスが盛られた。

    「やるじゃん坊ちゃん。ありがとう」
    「別に、こんなの出来て当然だし」

     鹿介にありがとうと言われた事がとても嬉しくてつい照れる隆景だが、それを見られたくなくてついそっぽを向いてしまう。
     しばらくして、綺麗なオムレツが焼けた。

    「のせるぞ…」

     ちゃんとオムレツがのるかどうか、隆景も心配で息を飲んだ。
     見事にチキンライスの上にオムレツがのり、こうしてオムライスは完成した。

    「出来た…!」
    「やったな!」

     二人はハイタッチを決めてオムライスの完成を喜んだ。

    「じゃあ、先に食べといてくれよ坊ちゃん。俺も後からそっち行くから」

     鹿介が先に食べるよう隆景に促すも、彼は鹿介の分の完成まで待つことを決めていたようで、テーブルまで運んだ後は、オムレツを割る事もなく待っていた。

    「あれ?まだ食べてなかったのか?冷めてない?」
    「一緒に食べるんだろう?冷めてないから早く座れ」

     素直じゃない隆景に苦笑いしつつも、鹿介もテーブルにつく。

    「それじゃあ」
    「いただきます」

     隆景がオムレツにヒビを入れると、それは綺麗に割れてふわふわとたまこが広がった。
     そして一口食べるとチキンライスとオムレツはしっかり融合して、立派なオムライスとして完成されていると自覚する。

    「美味しい」
    「そう?そりゃ良かった。案外適当でも何とかなるもんだな」

     鹿介は軽くオムレツ部分にケチャップをかけてひょいひょいと食べている。

    「あのさ…」
    「何?」
    「これ、俺と坊ちゃんで作ったんだよな!何だかんだ言って二人で作れたのすっげー楽しかったし、また俺が教えてやるから一緒に何か作ろうな!」

     満面の笑顔を向けられつつ告げられた言葉に、今度こそ隆景は照れる表情を隠せなくなった。

    「お前さ、何でそういう事平気で…」
    「あはは、坊ちゃんめっちゃ顔赤くしてやんの。照れすぎー」

     などと和やかに談笑していたら突如として、ガチャリと音が鳴り二人は身を強ばらせた。
     音の鳴るほうへ二人が向かうと、ベッドルームの奥に先程まで無かった廊下と、その先には玄関とおぼしきドアが見えた。

    「どうやら出られるみたいだね」
    「おう…さっさと食ったら出ようぜ坊ちゃん。また変な条件突き付けられて閉じ込められたら大変だ」

     条件を満たした事でこの異質な空間ともそろそろおさらば出来そうだと、二人はオムライスの完食に戻る。
     隆景としては出られるのは確定したと思うし、もう少し二人きりを味わいたいところがあったのは確かだが、さっさと部屋を出たいのも確かなので早く食べ切る事に専念する。
     食べ終わったのち、少し休憩をして二人は新しく現れた廊下を歩く。
     先導しているのは隆景で鹿介は時々後ろを振り返る。

    「怖いの?」
    「いや、怖くねーよ。ただ、急に後ろがなくなったりしないよなと…」
    「やっぱり怖がってるじゃないか」

     隆景は鹿介の手を取り、自分の元へ引き寄せると、そのままドアを躊躇なく開けた。
     その瞬間、二人は大きな光に包まれた────



     いつも通りの朝だ。
     キッチンに向かいトースターにパンをセッティングして洗面所へ向かう。
     歯を磨いて、服を着替えて、スマホのLINEを確認したら、少し世間知らずでわがままな恋人からの「今日、お前の家に行くから」のメッセージ。
    「了解」と短い返事に適当なスタンプを押して、そのままリュック片手にキッチンへ戻る。
     今日のトーストの付け合わせはオムレツにするかな…と、たまごを取り出して割る時にようやっと鹿介は気付いた。

    「あれ?」

     いつの間に巻いていたのか。
     左手の人差し指には絆創膏が巻かれていた。
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