現代鬼殺隊 参『ふぅ…よし、行こう』
都会は夜でも明るいというが、思ったよりも暗い、自分の格好の方が変かもしれないが…黒のパーカー、ズボン、手袋、ブーツ、そして狐のお面、腰には日輪刀、完全に不審者
『えっと…位置情報は…』
今世では鎹鴉ではなく自身のスマホに鬼の位置情報が送られてくる
"鬼殺隊専用"って付けた緑のメッセージアプリに"○○付近の鬼を倒しに行きます"等を送って誰かと被らないようにして鬼を狩る
『えー…キメツ公園の鬼を倒しに行きますっと』
直ぐに既読がついて了解のスタンプが7個来た
『さて、どんな鬼がいるのかな』
今キメツ商店街入口を通り過ぎた、ってことはもう少しで公園に着くってことだ
『あ、ここかな………!』
しまった、遅れた
公園にいたのは巨躯の異形の鬼、一人の子供が足を掴まれて喰われかけてる所だった
『雪の呼吸 参ノ型 氷雷雪化粧』
とりあえず鬼の四肢を切り落とす、奥に無造作に重ねられている子供達はどうやら気絶しているだけのようだ、良かったとホッと息を吐く暇は無いけど
「テメェ!何しやがる!」
『え?貴方を倒しに来たんだよ』
「へっ、どうせ人間じゃ俺には勝てねぇ!」
刹那、鬼が私を襲う前に私は鬼の後ろにいた
「な…」
『さようなら』
ズルっと鬼の頸が地面に落ちた、鬼はまだ自分が死んだ自覚ができていないようで、豆鉄砲をくらったような顔をしている
「は…嘘だろ…?俺が…人間、如きに…」
『人間はそんなに弱くないよ、鬼殺隊、聞いたことないかな?あ、もう聞こえないね、ごめん』
鬼は今世でも頸を斬れば死ぬようだ、灰のようになって消えていく様もよく似ている
"討伐しました"
何人かは既読が付かないけど仕方ないよね、皆も鬼狩ってるんだから
『ぼく、この子達は知り合いかな?』
「あ…うん、近所のともだちなの」
『家まで案内してくれるかな?皆をお家に帰したいから』
「うん!わかった!」
素直な良い子、こんな幼い子を攫って、喰って、何が楽しいんだろう、鬼…今の鬼は鬼舞辻が生み出したんだろうか
『どっちにしろ…狩るべき対象であることに間違いはないね』
数時間後、もう何体鬼を狩ったかは覚えてないけど、あのメッセージアプリを見たら分かるし良いよね
『ただいま戻りました』
「お疲れェ」
「お疲れ様です、凜音さん」
「お疲れ様です!」
「やっと帰ってきたか!」
私が会議室に戻って数分後に宇髄さんと善逸君、カナヲちゃんも戻ってきた
「全員無傷のようですね、良かったです」
『お館様の情報通り、強い鬼はいないね』
「おう、まあ一般人の怪我人はいたけどよ、応急処置でどうにかなる程度だったからな」
皆の談笑を聞いてて、私は不安が無くなっていった、最初は怖かった、もし十二鬼月みたいな強い鬼がいて、また誰かがいなくなるのが、でも、皆弱くなんかないし、何よりチームワーク抜群だから、不安がってた自分が馬鹿みたいに思えてくる
『さて、皆着替えたから一旦家に帰ろう、明日は何事もなかったかのようにしてね』
「「「御意」」」
ふぁ…眠い、多少仮眠をとってもちょっとキツイなぁ
『晩御飯どうしよう…』
もう空は白み始めていて、雀や鴉は飛び交って餌を求めているようだ
『おはようございまーす』
「「「おはようございます!」」」
鬼狩り初日の翌日、職員室からは元気な挨拶が飛んできた
『おはようございます、胡蝶先生』
「おはよう、細雪先生」
朝一から満点のスマイルを頂いた、眩しいね
「どうした!細雪先生!どこか眠たそうだが!」
げっ
『今日小テストを立て続けにやらないといけなくて、3クラス一気にはキツイですね…』
嘘を堂々とついたからか、煉獄先生は得に不審がっていないようだ
「そうか!だが睡眠は大事だぞ!」
『肝に銘じときまーす』
心配してくれるだけで嬉しいのに、眠さは煉獄先生の笑顔と気遣いでどこかにぶっ飛んだ
『眠いね』
「おう」
「あァ」
眠いとしか言えないこの三人は現在屋上で仲良く(?)昼御飯を食べている
『ねーねー、宇髄せんせー、ちょっとで良いからプチシュー分けてくれません?』
「俺も思ってたとこだァ」
「おいおい、そんな野獣みたいな眼で寄ってくるなよ、ほらよ」
宇髄さんは案外太っ腹な所がある、いつもはこのオッサン何歳だよ、とか思うときもあるけどやっぱり人生経験長い人は違うね〜
『はいはほーほはいはーす』
「はんはほはぁ」
「おー俺様に感謝しろ」
「む!既に三人いたか!」
屋上の扉をドガンッと開けて入ってきたのは、両手いっぱいの四段重位のお弁当を持った煉獄先生だった
『あ、煉獄先生!』
「おいお前それほんとに食える量か?」
「む?これでも少なめだぞ?」
『もう何も言えないです』
自然な動作で三人の輪の中に入ってこれる煉獄先生、流石だ…
『あ、今思ったら私以外のこの三人ヘビースモーカー三人衆じゃないですか?』
「おい、ヘビースモーカーではねぇだろ」
「宇髄はヘビースモーカーだなァ」
「俺と不死川先生は偶にだがな!」
噂で聞いただけだけど、宇髄さん、不死川さん、煉獄先生はよく三人で屋上で煙草を吸っているのを目撃されてて、カッコよ過ぎでよく死者が出てるとか…
「まぁ校内で吸うわけにはいかんからな!」
『煙草って美味しい?じゃないですけどどういうものなんですか?』
「お前は吸わなくて良いだろ」
『酷い!二十五ですよ!?』
本当に皆私を子供扱いしてません?私教師ですよ?大人ですよ?
「そうだな…あえて言うならテスト前等の何事にも疲れてしまうような時に吸うな、それ以外では吸わんが」
『ストレスの解消的な?』
「まあそんな感じだ!細雪先生は吸わない方が良いと思うがな!」
『また子供扱いされる!』
「ん?子供扱いではないぞ!細雪先生は今の可愛らしい儘の方が良いだろう?だから俺は勧めないな!」
は…今…可愛らしいって…
『〜〜〜〜〜〜〜!可愛らしくなんかないです!煉獄先生の女たらし!そんなホイホイ褒め言葉言ったら女性はパンクするんですよ!ばーか!!!』
「むっ!?」
そのまま私は屋上を降りた、煉獄先生に可愛らしいと言われたことが嬉し過ぎて子供じみたことを言ってしまったし…でも
『好きな人に言われたらこうなるのは当たり前じゃない…』
私の呟きは昼休み終了のチャイムに掻き消される
神様、これは足掻いても良いのかな?
今世でも煉獄先生に…
杏寿郎さんに好きって言っても良いのかな?
その後細雪がいなくなった屋上にて
「?俺は何か変なことでも言ってしまったか?」
「『はぁ〜〜〜』」
「む!?」
不死川と俺は多分同じことを思ってるんだろうな
『あのな煉獄、普通に考えろ?女は可愛らしいとか綺麗とか言われたら照れるのは当たり前だろ?』
「そうなのか?よく分からんが…」
あえて俺は"好きな奴に言われたら"って言わなかったけどよ、これは女たらしって言われても仕方ないわな
細雪も苦労してんなぁ