幼いころの記憶1コーカサスオオカブト城にてギラ様がいないとメイドが言っていた。
今日はカメリアが来ていたと聞いていたラクレスはいそうである場所へと向かう。いなくなって一時間ほどらしい。
「居た」
クローゼットを開ければ、目を開けて横になっているカメリアと引っ付いて眠っているギラがいた。
「ラクレス様」
「ギラを探していた」
「すみません」
カメリアが謝っている。ラクレスはその理由を知っていた。
「家が大変なのだろう。カメリアがここに来たということは避難だ」
「お城を避難所にするのはどうかとなりますが」
「家にいるのは嫌じゃないのか」
「嫌です」
シュゴッダム王家に代々仕えている貴族の家、それがカメリアの実家だ。
初代から仕えているが、度重なる近親婚により、健康的に生まれたのはカメリアだけだった。
家の方は荒れている。
「ギラがここに居ればいいと言ったか」
カメリアが頷く。返事を聞かなくても分かる。
ギラの”遊び相手”がカメリアだ。ラクレスの遊び相手とも取れるが。
クローゼットの中は安全な場所だ。
誰もカメリアを傷つけない。ギラもそうだ。
「……ギラ様は優しいです」
「暫くは休んでいればいい」
「ギラ様が起きないのですが」
「すまないがこのままにしておいてくれないか」
家のことについては聞かない。聞かなくても噂話好きの使用人の話を聞けば察する。王家に仕え続けた一族は滅びに向かっている。
けれども、そんなことは幼いカメリアには関係ない。
ハスティー家ならまだしもだが。
場合によっては父はカメリアをラクレスかギラの嫁にするべきかとは言っていた。とはいえ、
(妹としか思えない)
王族としての結婚は、貴族としての結婚は家通しの結婚のようなものだが、
ラクレスからするとカメリアは妹のようにしか見えないし、カメリアも兄が元気ならこんな感じでしょうかと話していたことがある。
カメリアの実兄がいるが病弱だし、まともに話せない。
「……ラクレス様?」
「ギラが起きたら、庭にでも行こう」
「庭の花。前はつぼみだったのですが」
「咲いているだろうな」
ギラ様、とメイドの声がする。待っていろとラクレスは部屋を出る。
弟妹の安全を守っておくことにした。
【Fin】