みい子が編んだものをみんなが協力して編み直したマフラー。それを吉田くんの首に巻き付けられているのを見かけたとき、ほんの少しばかり手伝ったことまで記憶が引き出されて、面映ゆさに声をかけるのも躊躇った。
それと踏みとどまったうちの一つに、彼の眼差しはちいさな歩幅で隣を歩むみい子に向けられていたからでもあったが。
みい子の手も加わっているそのマフラーのことをみい子に触れてほしかったのか、しきりに触っている吉田くんは可愛らしい。みい子がいくら鈍感でもさすがにしきりに触っていたら気がつくのか、マフラーについて指摘したらしく吉田くんの顔が明るくなる。
分かりやすいなあ、いま話かけたらじゃまになっちゃうよねと自分の首に巻き付けたマフラーを口許に引き上げてできるだけ歩道の端を歩こうとして、
「ハルナー!いま帰り?」
「あ」
みい子の視界に入ってしまった。つい吉田くんをみると嫌な顔はせず、坂本さんこんにちは、と挨拶される。
「うん、…みい子たちは?デート?」
「デ、デート?!違うよーっ!ね、吉田くん」
「う…うん、そうだね…」
ここで逃げ帰るのも失礼だ。隠れようとしたのを隠すようにマフラーを下げて、じゃまではないかと二人を交互に目線を送る。
みい子の力の入った否定にあからさまに消沈している吉田くんは目に入っても理由まで察していないらしい。
「そっかー……ドンマイ、吉田くん」
「いや、うん、いいんだ……」
「?
あ、これからノート買いにいくんだけどハルナも一緒にくる?」
「えーっと、わたしこれから妹を迎えにいかなくちゃならないから…せっかく誘ってくれたのにごめんね」
「そっか、じゃあ急いでたんだよね、ごめんね引き留めて~!じゃあまた学校でねー」
「坂本さんさようなら」
「またね」
二人に手を振って、首に巻いたマフラーを結び直す吉田くんをみて、前を向いた。
あのマフラーの色合いはやっぱり吉田くんによく似合っていて素敵にみえる。