始まりの終わりの日ポップ〜楽園追放
あの日か、覚えてるよ。
物心ついた時っていうか、ちゃんと覚えてる一番小さい時の記憶さ。
丁度その時は、届け物をしにいった母さんの後を少し離れて追いかけてたんだ。
村の広場の真ん中位にいたんだけど、背中に氷を突っ込まるたみたいな感じ…今思うと超強力なオーラを感じて立ち止まった。
すぐ後にチカッと空の低い所が光って、その光が凄い勢いで空の端から端まで真っ白に広がった。
次の瞬間最初に光った所から見たことのない白い雲が空の天辺まで上がっていった。
雲の先っちょがキノコの笠みたいにまるまったな、と思ったら後ろに向って吹っ飛ばされたんだ。
子どもの体は軽いから何度も転がってやっと止まって、それから聞いたこともない轟音が響いて。
地震か、衝撃波なのかわからないけど地面も空気もビリビリ震えて、脈打つように揺さぶられながら土に爪を立てて堪えた。
砂混じりの風が吹きつけるから目も開けられないし口の中もジャリジャリになって。
やっと風と地面の揺れがおさまった後、静かになったのを覚えてる。実際地響きよりこの無音の方が怖かった。
さっきまで鳥の鳴き声や広場を行き交う人の足音がしていたのに、何も聞こえない。
世界に俺一人しかいないみたいに。
何かわからないけどとんでもない事が起きたって判った。
しばらく這いつくばってた俺を、母さんがみつけてくれたからやっと泣けたっけ。
その夜、一人で寝ている時に唐突に「誰もがいつか死ぬんだ」って考えが頭から離れなくなって母さんたちにしがみついてわんわん泣いたんだ。
そうしたら母さんが私達は誰でも死ぬ。だから一生懸命生きるんだ、っていってくれた。
だから、俺は迷っても苦しんでも、たとえ全力をだしても爪も引っかからない差がある相手でも喰らいついて立ち向かってやる。
あの日、母さんと父さんがいて永遠に幸せでいられると思い込んでいた幼い楽園から、天を引き裂く光が俺を追放したんだから。