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    mikeda_shiro

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    mikeda_shiro

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    2月出す予定のニノ→カゲ
    ※かっこいい二宮さんはいません。迅さんは巻き込まれ

    ##ニノカゲ

    二宮さん、恋愛経験値0!「おまえが知っている影浦のことを教えろ」
     攻撃手一位並びに個人総合一位の狂犬のような男からようやく開放された迅を襲ったのは、射手一位、個人総合二位の男のそんな言葉だった。
    「えっ。ヤダ」
     取り繕うことも、悩むこともせず一蹴され二宮の眉間にシワが寄る。
    「なんで」
    「知りたいからに決まってるだろ」
    「別に仲良くないんでしょ?」
    「それは犬飼とだ」
    「知りたきゃ他の人をあたりなよ。これから、帰ってお子様のご飯用意するんだから」
     手を振ってその場から去ろうとするも、そんな彼の腕を二宮は逃がさないというように掴む。
    「離せよ」
    「報酬なら弾む」
    「別に、あんたからもらいたいものはないし、話すつもりもないって」
     と、勢いよく手を振り払って。
    「そもそも、あんたの恋人になりたい人っていっぱいいるだろ。それなのに、わざわざカゲを選ぶ理由って何?」
     怪訝そうな表情でもう一度手を伸ばそうとしてきた二宮を見て。
    「ああ、そのことか。おまえよりは顔がいいからな。それなりにモテると言えばモテるな」
    「喧嘩なら買うけど?」
     怒った声色を出し、迅は二宮を見上げる。
    「おまえだって、顔のいい人間は好きだろうが」
    「おれは、あんたの顔より嵐山の顔のが好みだよ」
    「好きなのか?」
     誰もが己の顔を好いていると思っていたのか、少し意外そうな声で問い返す。
    「一般論も含めた上でのただの好みの話だよ。あんたと一緒にするな」
     不機嫌なのを隠しもせず、バリバリとあげせんをむさぼり食う。
     そして、食えというようにあげせんの袋を彼に向ける。
    「ああ、もらおうか」
     声色も表情も全く変わっていない二宮。
     迅は少し冷めた視線で彼を見て。
    「俺は影浦で抜ける」
     そして、突然そんなことを言い出した二宮に、引いた顔になる。
    「顔がいい男の、そんなどうでもいい下事情なんか聞きたくなかった!」
     迅が耳を塞ぐも。
    「なんなら、顔にかけたりしたいし、セックスもしたい」
    「しーりーまーせーんー! なんで、友人でもない人間の性欲事情を聞かされなくちゃいけないんだよ!!」
     二宮の性癖のようなものを聞かされ、耳から手を離すと、むきゃー! と、新しいあげせんの袋を開けながら小さく叫ぶ。
    「というか、そういう感情を向けたりしてないよね? カゲ、人一倍敏感なんだからそんな歪んだ性癖向けられたら可哀想でしょ」
    「……好きだというのは、無意識に向けている可能性はある」
     迅の問いかけに悩む素振りを見せたあと、そうポツリと漏らす。
    「ふうん」
    「だが、あの小ぶりな尻を見たら鷲掴みたくならないか」
    「あんただけだよ」
    「あの尻にねじ込んでアンアン言わせたい」
    「やめろやめろ」
    「蕩けた声で名前を呼ばれたい」
    「妄想は、己の中だけでにしてくれ」
     あげせんの袋を抱きしめながら、一歩二歩と距離を取り。
    「待て。逃げるな」
     逃走しようとした瞬間、また腕を掴まれる。
    「あんた、そういうこと言ってて恥ずかしくないの?」
    「羞恥心は捨てた。そんなもの、あいつの前では意味がない」
    「一番大事なもの捨てるなよ!」
     ギャーギャー叫びながら二宮の腕を振り払おうとするも、先程よりもその掴む力が強くなっており。
    「なにやってんだよおめー」
     だが、急に現れた第三の人物の声に、二宮の動きが止まる。
    「それじゃあ!」
     腕の力が弱まった瞬間。迅は素早く腕を振り払い、その場から逃走する。
     掴んでいたものがなくなった二宮の手は、虚空を掴む。
    「だから何やってんだよ。迅さんにちょっかい出してんじゃねえよ」
     ガシガシと頭をかきながら、二宮を睨み上げる。
     影浦に睨まれるとは思っていなかったのか、手を引っ込めて急に挙動不審になる。
    「あ?」
     己を見ながらせわしなく動く茶色の瞳を、影浦は不審そうに見ている。
    「何か、飲むか?」
    「は?」
     脈絡もなく飲み物を飲むかと問われ、威嚇するような声を出して。
    「さっさと帰らないとって言ったから、個人ランク戦断られたってのに」
     十数分前の事を思い出し、拗ねたような声色で吐き捨てる影浦。
     目の前に己がいるのに、他人のことを話題にする影浦を、二宮は拗ねたように見つめる。
    「んだよ」
     刺さる感情が変わったのか、不機嫌そうに二宮を見上げる。
     今度は、己だけを見つめていてくれる。そのことに二宮は歓喜を覚えて。
     そんな彼を、不審そうに見上げる。
    「何が嬉しいのか全く分かんね」
    「わからないなら、それでいい。で、何がいい」
     薄く笑みを浮かべ、影浦の手を引くと自販機の前まで来る。
     いきなりのことに、影浦はされるがままで。自販機の前にやってきて、初めて二宮の手を振り払う。
    「な、んっでも、いいのかよ」
    「ああ」
     長い指が小銭を投入する。と、影浦は少しためらいながら一番高いものを選んで。
     そんな姿を愛しいと思うのか、二宮は彼へ優しい視線を向ける。
    「なんだよ」
     ストローをかじりながら、優しい視線を向ける二宮を上目遣いに見て。
    「影浦、今は誰かと付き合っているか?」
    「は?」
     脈略もなくそんなことを問われ、怪訝そうな顔になる。
     だが、真剣な瞳で見つめられ、気まずさを覚えたのか視線を逸らす。
    「影浦」
     名前を呼ばれながらそっと飲み物を奪われ、影浦はうろたえる。
    「なあ」
    「別に、いねえよ」
     気まずそうに視線をそらし、飲み物を奪い返すとまたストローをかじりだして。
    「そうか」
     嬉しそうな声を出し、ストローを口にする。
     わけわかんねえ。と、二宮から少し距離を取るのだった。

    ***

    「最近、二宮が優しいっつーかなんつーか」
    「嫌なの?」
    「嫌ってわけじゃねーよ? 飯奢ってくれるから。けど、いきなりされると怖くね?」
    「うーん……ゾエさんは嬉しいと思うな。でも、何か裏があると思っちゃう」
    「だよなあ」
     と、机に項垂れて。そんな姿に北添は苦笑する。
     恋人がいるかと問われた日から数日。影浦は、その日以来やたらと絡んでくる上に、己にのみ優しくしてくる二宮のことを北添に相談していた。
     もちろん、彼を嫌っている絵馬がいない間に。
    「個人戦断られた迅さんを、長々と引き止めていたことはもういいの?」
    「あの人が気にしてねえなら。まあ、文句言ってもあんま響かなそうだし」
     唇を曲げ、ぐりぐりと額を机に押し付ける。
     と、来訪者が現れたため、彼らの後ろの扉が開く。
    「あん?」
    「噂をすれば……」
    「影浦、回覧はきちんと読んだか。なんだ」
     ズカズカと入ってきた二宮は、二人の視線が己に注がれていることに気づき、かすかに眉を寄せる。
    「かいらん?」
     なんのことかと、影浦は気の抜けた声を出して。
    「印刷したものを持ってきて正解だな。きちんと目を通しておけ。北添、おまえもだ」
     どうせ読んでも忘れるだろう。と、少し馬鹿にしたように告げられ、普段ならば噛みつくように反論する影浦であるが、何故か机に顔を伏せたまま二宮を見上げるだけで。
    「なんだ」
    「カゲ?」
     視線に気づいた二宮と同時に、反論がない彼を不思議そうに見る北添。
    「二宮ってよく見ると、顔がいいんだな」
     感心したように言われ、二宮は固まる。北添は、彼が誰と二宮を比べたのかわかってしまい、冷や汗をかく。
    を変えぬまま目を通す。
    「……北添」
    「カゲ、ちょっとだけ出てくるね」
    「おー」
     一段低くなった声が冷たくなっているのに気づき、北添は身震いしながら二宮と共に部屋を出る。
    「影浦兄の写真を見せろ」
    「あったかなぁ……」
     北添を壁まで追い詰め、二宮は不機嫌そうに言い放つ。
    「あ、ありました」
    「見せろ」
     カメラロールを指で流しながら、小さき声を上げると、二宮はすかさずそう告げて。
    「お店の服着てる人がそうです」
    「俺の方が、顔がいいだろうが」
    「この顔見ながら育ってきましたからねぇ。ブラコン気味だから余計ですよ」
     影浦兄の写真を見ると、眉間にシワを寄せ、舌打ちする。
    「あいつが俺の顔に興味がないのはわかった」
    「興味がなくてもいいんですか」
    「だったら、それ以外で俺に興味を持つように仕向ければいい」
     顔面を前面に押し出しても、他の人間相手と違って手応えがないとわかり、二宮はどうやって攻略しようか思案する。
     そんな彼の姿を見ながら(初恋を拗らせるとこうなるんだなぁ。カゲ、御愁傷様)と、ひっそり手を合わせる北添であった。
    「ん」
    「なんだ」
    「読んだ」
    「それは、おまえのために印刷したものだ。保管しておけ」
    「ゾエ」
    「はいはい」
     二人が作戦室へ戻ると、影浦はプリントを突き出して。だが、己のものだとわかると北添に渡す。
     なくさない内にと、彼はそれをファイルに閉じる。
    「内容は理解したか」
    「まあまあ」
     曖昧な返事に、小馬鹿にしたようなため息。
    「んだよ」
    「今回はいいが、きちんと理解しないとまずいやつの時は、理解できるまで帰さねえからな」
    「んー」
     飽きたのか、それとも眠いのか。影浦の反応は芳しく無く。
    「影浦」
    「んっ?!」
    「ひゃー」
     二宮は、影浦に覆いかぶさるように後ろからテーブルに両手をつく。
     突然の行動に、流石に驚いたのか金色の目を大きくさせ、逃げようと身構える。
     北添は、まさか二宮がそんな大胆な行動に出るとは思っておらず、両手で口を隠して。
     名前を呼んだきり、動かない二宮。二宮が動かなければどうすることもできない状態の影浦。そんな二人を、ドキドキしながら見つめる北添。
    「おーっす。ヒカリさんが来てやったぞ〜! 何だ、二宮もいるんかよ」
     闖入者の声にハッと我に返り、影浦は勢いよく二宮を突き飛ばして。
     完全に己が悪いのだが、二宮は壁に打ちつけた背中をさすりながら二礼を睨みつけて。
    「おっ。なんだ? 喧嘩なら買うぞ、カゲが」
    「買わねーよ。さっさと帰れ」
     シッシッと、手を振って追い払う仕草をする。
     二宮は仁礼を睨みつけると、影浦の頭をポンポンと撫でて出ていく。
    「カゲ?」
    「んだよ」
    「二宮に頭撫でられてたけど、よかったのか?」
    「別に。頭を撫でられるくれえじゃ何も減らねえよ」
     ガシガシと髪を乱し、また書類へと視線を向ける。
    「ユズルはどうした?」
    「まだ来てないよ」
    「学校で何かあったんか?」
    「かもしれないね」
    「なあ、それアタシも読んだ方がいいか?」
    「ううん。隊長に回ってきものだから、大丈夫だよ」
    「ふーん。ゾエ、ミカン剥いて~」
    「はいはい。カゲは?」
    「いる」
     と、三人そろって炬燵に入る。

    ***

    「ということがあった」
    「ふうん」
    「俺は、自分で思っているより、心が狭い」
     影浦隊の三人が炬燵でくつろいでいる頃。
     影浦がブラコン気味で、己の顔より兄の顔がいいと言われ。写真でしか見たことのない影浦の兄に嫉妬し、そんな自分に嫌気が差して。二宮はたまたま本部に来ていた迅を捕まえて愚痴っていた。
    「面倒な人だなあ」
    「声に出てるぞ」
    「出してるんだよ。分かれよ」
     扱いがぞんざいになりつつあることに微かに不満を持つものの、こうやって愚痴を聞いてくれるのは迅のみであることを理解しているので、それに関しては何も言わない。
    「影浦は、俺の顔に興味がないらしい」
    「へえ」
    「どうアプローチしていけばいい」
    「知らないよ。顔の良さに自信があるのはわかるけど、それが通用しないんなら御愁傷さまとしか言いようがないし」
     いつものようにバリバリとあげせんを食べて。
    「そもそも、なんでカゲなん」
    「俺自身もよくわかってねえ。ただ、影浦を見ているうちにそういう気分になった」
    「気分?」
    「いや、気持ちだな」
    「めんどうくさっ」
     組んだ脚に肘をつき、呆れたような顔をして。
    「おまえはそういうことはないのか」
    「わざわざ教えるとでも?」
    「そうだな。おまえが俺に教えるわけねえか」
     どこか納得したようにうなずき、差し出された袋に手を入れる。
    「で?」
    「ブラコン気味らしい」
    「ああ……それじゃあ、顔に興味はないかもね」
     肩をすくめるが、迅は少しだけ哀れんだ視線を二宮へと向ける。
    「影浦のことは教えねえつもりか」
    「もっと自分で仲良くなって知ればいいじゃん」
     憐れんでいる表情を向けられていることに気づいて、半ば脅すように告げる。しかし、迅は突き放すように告げるのみで。
    「それが出来れば苦労はしねえ」
     二枚ほど口に入れ、吐き捨てるように告げる。
    「だろうねぇ」
     ケラケラ笑って、ポンッと二宮の肩を叩く。
    「まあ頑張れ」
    「慰める気もねえだろ。クソッ」
     肩に置かれた手を振り払い、舌打ちする。迅は変わらず笑っているだけだった。

    ***

    「影浦」
    「おー。なにかあったか?」
     二宮に呼ばれ、影浦はゆらゆらと体を揺らしながら、彼に近寄る。
    「明日の会議の時間が変更になった。その連絡だ」
    「おう。任務の時間にはかぶらねえよな?」
    「遅れてもいいように、人員は確保しておくようだ」
    「へえ」
     なら、心配ないかというよいうな声を出して。
    「ん!?」
    「影浦っ」
     影浦は、二宮の胸に倒れこんで。彼は少し焦った声を出し、倒れてきた体を抱きしめる。
    「あ、悪い」
    「太刀川、気をつけろ」
    「軽くぶつかっただけじゃねえか~」
     ぶー。と、ぶつかった太刀川は唇を曲げて。謝らない太刀川に、二宮は彼を睨みつける。
    「二宮、別に怪我してねえから」
     影浦は二宮の腕から逃れようとするが、彼は逆に抱きしめる力を強めて。
    「あ~? 二宮、もしかしておまえ」
    「余計なことを言ったらぶっ飛ばす」
     何かを悟った太刀川が口を開こうとすると、グッとブーツを踏む。
    「ぶっ飛ばすの前に踏んでんじゃねえかよ。いてえって」
    「にのみや」
    「トリオン体なんだからたくねえだろ」
    「なあ」
    「だとしても、踏まれた痛いじゃんか」
    「おいって」
     太刀川と睨みあう二宮。間に挟まれている影浦が声を上げる。
    「二宮、影浦がなんか言ってるぜ」
    「あ?」
     そう言われ、二宮は影浦を見る。己の胸に両手を置き見上げてくる影浦の姿に、二宮は思わず強く彼を抱きしめて。
    「お、おいっ」
     まさか抱きしめられるとは思っておらず、影浦は慌てて。太刀川は止めるどころかニヤニヤ笑っている。
    「やっぱりな。まあ、頑張れよ影浦」
    「はあ!? 二宮を引きはがせよ!!」
     ギャーギャーわめく影浦をものともせず、太刀川はそのまま去っていく。
    「二宮、離せ!!」
    「うぐっ」
     頭突きをされ、二宮は思わず手を離す。その隙に影浦は二宮の腕から逃れる。慌てて逃れる影浦の耳は、赤く染まていた。
     二宮はもちろんのこと、影浦自身もそれには気づいていなかった。
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