「匡貴、本当に一人で大丈夫?」
「大丈夫だから、さっさと行って来いよ」
母親に訊ねられ、二宮は不機嫌そうな声を出して。
「ちょっと前に、酔って鍵を落としたって勘違いして、べそかきながら電話してきたのに?」
「……それは忘れろ」
唇を強く噛み、彼女を睨む。だが、その頬はほんのり赤く染まっていて。
「はいはい。火の元には気をつけるのよ」
「わかってる」
「あっ。こんばんは。これから、おでかけですか?」
二宮母が玄関を出ると同時に、影浦が現れて。
彼女は、彼を見てから影浦を見て。
「ちょっと匡貴。雅人くんがくるなんて聞いてないわよ」
「言ってねえからだよ。さっさとしねえと父さんが拗ねるぞ」
「それもそうね。雅人くん、匡貴のことお願いしますね」
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