嫌いが好きへと変わった日(前編)朝、まだ上手く開かない目をこすりながらベッドサイドテーブルの上に置かれているスマホに手を伸ばす。ロックを解除し中を確認すれば、日付が変わったタイミングで彼女の希佐からメッセージが2つ入っていることに気づき急いでそれを開いた。
「美ツ騎さん、お誕生日おめでとうございます」
「大好きです」
予想もしていなかった祝いの言葉に驚き、すぐに今日の日付を確認すれば確かに自分の誕生日である7月14日だった。
今までの美ツ騎にとって誕生日とはすごく嫌いな行事で、いらないとすら感じていたものだった。
お祝いの言葉を言いたいだけの特に親しくもなく、名前すら知らない人達にプライベートな時間までも奪われ、無遠慮に話しかけられて毎年うんざりしていたし、何よりこの世で1番嫌いな母親の影が何度もチラつくからだ。
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