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    元支部作品。(少し修正しました)

    煉獄兄弟の鬼ごっこ

    何故これが続きを書く度にコメディ(?)になっていってしまったのか自分でもよくわかりません。続きも徐々にポイにアップしていく予定です。途中で新しい話も作って挟めたらいいなぁと思います。

    鬼事俺が兄上の抱く感情に気付いたのは俺がまだ十一の時で兄上は十ハ、九だったと思います。兄上が鬼殺隊で次々と位を上げ、柱になる一つ手前の甲になった頃のことでした。
    俺はまだ六つの頃、鬼殺隊になる為に早朝から鍛錬に励む兄上を憧憬の気持ちを抱きながら見ていました。その頃の俺はまだ幼い内面も持ち合わせていて、まだ鬼というものがよく分かっておらず、兄上が鍛錬を終わらせた後、俺は兄上との戯れに鬼ごっこと称した遊びをせがんで、庭をゆっくり走って逃げる兄を追いかけては捕まえたりしました。兄上が「次は俺が鬼の役だ。」と今度は俺が兄上から逃げ回り、本来なら俺がどれだけ必死になって走っても兄上には簡単に追いつかれてしまう筈なのだけど、兄上はわざと俺に追いつかない様に加減して俺を追いかけて、また俺も兄上から逃げ回れていると無邪気にも本気で信じていました。地面に脚を投げ出して後ろに両手を付き「千はすばしっこくて中々捕まえられないな。」と言う兄上に、俺は少し鼻が高くなったような気がして、ふふ、と笑うと兄上と手を繋いで仲良く家の中に戻りました。

    今思っても本当に優しい兄上でありました。俺が兄上に素振りの練習を付き合って貰っている時も兄上は俺の両肩に手を添えて、眼を細めながら優しい眼差しで指導をしてくれました。兄上から稽古を受けた継子達は、あまりの厳しさに皆逃げ出してしまう程でしたが、俺は兄上の指導を受けても厳しいと感じたことはありませんでした。それは俺が煉獄家の血筋で、その鍛錬の厳しさに耐え得る心が当たり前の様に身体に染み付いているだけなのだと思っていました。でもそう感じていたのもその時だけで、後に嫌という程思い知らされる事になったのです。俺は鬼殺隊になる為の最終試練を漸くの思いで突破し日輪刀を賜りました。届けられた日輪刀を手にした時、俺は兄上と同じ赤い刀身に色変わりすることを期待していましたが、日輪刀はなんの変化も示さなかったのです。
    俺が色の変わらない日輪刀を手にしたまま暫く呆然としていると兄上が任務から帰還して隊服姿のまま部屋に入ってきました。兄上は俺の日輪刀を見ると直ぐに察して、俺の隣に片膝をつくと日輪刀を握り締める俺の手に自分の手を添えてきました。
    「千寿郎、気にするな。刀の色が変わらなくともお前は充分頑張った。鬼殺隊として生きることが全てでは無い。」
    「兄上…。しかし俺は煉獄家の人間として…。」
    手が震え、自然と涙が溢れました。
    「其れがどうした。お前はお前らしく生きればいいだけの事だ。」
    俺は刀の色を変えられなかった自分を不甲斐無く思いましたが兄上は俺の事は何一つ否定することはありませんでした。きっとこうなることをわかっていたのでしょう。兄上は俺の剣の才能の無さを疾うに見抜いていたのだと思います。それなのに俺が兄上に稽古を頼むと、嫌な顔一つせず付き合ってくれていました。才能の無い俺に合わせて、決して無理強いすることなく指導してくれていたのだと思います。
    それから俺は任務に向かう兄上を気持ち良く送り出し、疲れて帰って来たら安らげる様、家事仕事に精を出しました。刀の色を変えられなかった俺に出来ることと言ったらそのくらいしか思いつかなかったのです。
    その日も任務から帰還した兄上に食事と風呂を用意しました。兄上の布団を敷こうと部屋を訪れると、兄上にしては珍しく疲れて畳の上で横になっていました。いくら強い兄上でも人であることは変わりありません。
    「兄上、少し失礼します。」
    俺は兄上の腰に馬乗りになり、背中から腰にかけて解してあげると、気持ち良さそうにうーん、と唸りそのままうとうととし始めたので、その隣に布団を敷き、兄上に声をかけて布団で寝る様に促しました。
    「兄上、布団で寝て下さい。お身体を冷やしてしまいますよ。」
    兄上はのそのそと上半身を起こすと隣に敷かれた布団に転がる様に横になりました。俺が掛け布団を引っ張って兄上に掛けようとすると兄上の手が俺の背中に伸びてきて、ぐい、と押されたかと思うと俺は兄上の胸元にぽすん、と倒れて抱きかかえられていました。
    「わっ…!兄上、離して下さい。動けないです。」
    「こうしてると落ち着く。」
    眼を閉じながらそう呟くので、俺は兄上の為に暫くそのままでいようと思い、じっとしていました。きっと直ぐに離してくれるだろうと思っていました。
    四半刻程そうしていましたが一向に離す気配が無いので俺は兄上がそのまま眠ってしまっているのでは、と思い、顔を上げて確認するとずっと眼を閉じていらした様なので、そっと身体を起こして兄上の腕を一緒に持ち上げました。その時兄上がふっと眼を開けました。兄上の腕から抜け出ようとした俺を薄目で見てきて、俺と視線が合いました。すると更に腕でぎゅっと締め付けてきて俺は元の場所に押さえ込まれてしまいました。片手が俺の後頭部に置かれ、背中に回された腕は絶対に離さないと言わんばかりに力が込められていました。
    「うう…苦しいです、兄上。」
    そう言うと慌てて気付いたかの様に俺を離しました。
    「すまん、千寿郎!つい…。」
    俺は上半身を起こして正座をすると、上体を起こした兄上に向き直りました。
    「大丈夫か?千。痛くなかったか?」
    「ええ、この位大丈夫ですよ。だけど普段寝てる時は一切動かない兄上が珍しいですね。」
    「そ、そうなのか?」
    兄上は少し動揺している様に見えました。
    「ええ、夢で僕を誰かと間違えたのですか?兄上にも漸く良い人が出来たのでしょうか?」
    ふふ、と笑いながら言うと兄上は少しむっとした様な表情をしました。
    「俺が千寿郎を間違える訳がないだろう!」
    普段声を荒げない兄上から強く言われたので俺は驚いて次の言葉が出ませんでした。
    俺が黙っていると、感情の機微に敏感な兄上は気不味い顔をして、少し千と戯れたかっただけだ、と言い訳めいたことを言ってきましたが、俺はこの時に察してしまいました。兄上の顔がいつもより赤みが差していたのを俺は見逃すことが出来なかったのです。
    俺は顔に無理矢理笑顔を貼り付けて、それは恐縮です、と受け流すと、兄上に、おやすみなさい、と声を掛けて早々に部屋を出ました。



    次の日兄上は昨日の事を俺に謝ってきました。いつもより疲れていてつい感情的になってしまった、と言いました。俺は昨日の兄上の赤みが差した顔が忘れられず恐る恐る尋ねました。
    「あの…、兄上、本当にそれだけでしょうか?」
    「…っ、それだけだ‼︎」
    兄上は一瞬言葉に詰まりましたがはっきりと答えました。何故か胸がちくりと痛みました。俺はあの時兄上の素顔を見た様な気がしたのですがそれ以来兄上は普段と何の変わりもなく、俺は兄上を少しずつ避けて行動する様になっていました。兄上の家での行動は大体察しがつくので、先回りをしては兄上の必要なものを準備をして置文をしたりして、なるべく顔を合わせない様にしていました。
    兄上がそんな俺を気にせず放って置く訳がありません。ある日の夕方、いつものように取り込んだ洗濯物を皺を丁寧に伸ばしながら畳んでいると兄上が部屋に入ってきました。兄上は俺の隣に片膝を付いて俺の目線に自分の目線を合わせてきました。
    「千、最近俺はお前に避けられていると思うのだが間違ってはいないだろうか。」
    そう遠く無い日にそう言われるのはわかっていました。俺は兄上から視線を外すと途中になっている洗濯物に眼を向けて手を動かし続けました。
    「別に…、兄上の気の所為ではありませんか?」
    自分でも驚く程兄上に対して冷たく言い放ってしまいました。
    「お前の今の態度が気の所為とでも言うのか?千、俺は兄としてお前が気になるのだが。」
    「っ…。」
    「千寿郎!」
    兄上は俺から一切視線を逸らしませんでした。俺は兄上の自分に向けられる視線に耐えられず、洗濯物を持つ両手に力が入りました。俺は首を兄上の方に向け、自分と同じ焔色の眼を睨みました。
    「兄上は…!兄上は何故私にこんな態度を取られるのか今までに一度たりとも心当たりは無いのですか⁉︎」
    俺は生まれて初めて兄上に口答えをしてしまいました。
    「兄上は俺が幼い頃から本気で俺に向き合おうとはしなかった!いつも気を遣ってばかりで一緒に遊ぶ時も剣の稽古の時も手を抜いて俺に合わせていた!日輪刀の色が変わらなかった事も貴方は最初からわかっていたんだ‼︎だけど俺はそれが兄上の優しさから来るものだと思っていました!そう信じていました‼︎だけどこの間は…‼︎」
    「千…。」
    「兄としてですって…⁉︎…俺が気付いていないとでも…思っているんですか…。」
    声が震えて涙が出そうになりました。言ってはいけない、心の何処かでそう思いました。此れを言ってしまったら俺は兄上に捕まってしまう。捕まったら俺は鬼にされて戻れなくなってしまう。昔よく兄上とした鬼ごっこの子供役の様に。
    兄上が静かに口を開きました。
    「千、俺の行動がお前を傷付けてしまったのなら謝ろう。だけど俺は…。」
    兄上は眼を伏せて、もう一度俺の方を見ました。
    「俺はお前を失うのが怖い。」
    それは本心だったと思います。だけど俺はどうしてもその言葉の中に他の含みもある様にしか思えませんでした。
    「お前は俺が本気で向き合っていないと言うがそんな事はない。俺はいつでもお前の方を向いているし誰よりも大事に思っている。」
    「…そう言いながら貴方は…。」
    兄上はずっとあの頃から鬼の役を続けてきたのです。ずっと、俺と距離を保ちながら俺を捕らえる機会を待っているのです。俺は、俺を静かに見つめている兄上が、俺の口からその言葉が出てくるのをじっと待ち侘びている様に見えました。俺と同じ焔色の髪と眼を持った人。同じ炎の呼吸の血筋。俺より一足先にこの世に生まれ出たその人が、ずっと俺の方から近づいてくるのを待っているのです。
    俺は言葉を飲み込みました。
    「…洗濯物を畳み終えたら食事の支度をしますから、待っていて下さい。」
    視線を洗濯物に戻すとまた手を動かしました。
    「今日は兄上の好きな薩摩芋の味噌汁を作りますから。」
    「千寿郎…。」
    「そうだ、鯛の塩焼きも作りましょう。昼間の買い物で活きの良い物があったんです。ついでに兄上が持っていくお弁当にも詰めて差し上げましょう。」
    俺は兄上に笑顔を向けました。兄上は驚いた様な顔をしましたが直ぐに笑顔になりました。
    「薩摩芋に鯛の塩焼きか!それは楽しみだな!千寿郎のお陰で今夜の任務も頑張れそうだ!」
    俺は兄上の喜ぶ顔を見てふふ、と笑いました。兄上はまだ雑用が残っているので夕餉迄に片付けてくる、と部屋を出て行きました。
    兄上の足音が離れていったことを確認するとふぅ、と溜息をつきました。
    俺の心に澱の様な物が残った感じがしましたが、敢えて気付かない様に努めました。
    畳み終えた洗濯物を抱えて縁側に出ると心地良い風が吹いていました。俺は兄上の様に口元に笑みを湛えると、さぁ、早く食事の支度をしなくては、と踵を返し部屋を出て厨へと急ぎました。
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