お別れなんてしないよ。「皆様にご案内致します、この飛行機は間もなく離陸致します」
私たちを乗せる頑丈な翼は速度をつけて、ふわっと浮かび上がる。
それは高く、高く、自身の力だけでは到底行けない場所へと連れて行ってくれる頼もしさ。
どんな出会いが、どんな冒険が待っているのだろう?
ドキドキとワクワクが仲良く隣り合わせで出発した。
陽が海の向こう側へ帰る頃、四角い小窓から見える西の景色は、暖色から寒色へと変わる夕焼け空のグラデーション。その寒色はずっと前に片恋が実ったお相手の髪色みたいで、出発前日の別れ際に交わしたとある約束を思い出す。うっとりと眺めていると、次第に頬はカァァと、乙女色のグラデーション。
「帰ってきたら渡したいものがあるんだ。だから気をつけて、楽しんで。それと、絶対に僕の元へ帰ってくること。余所見しないで。いいね?」
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