あいをこめてあなたにキスを「チェズレイ、三日後にキスしていい?」
モクマさんからの言葉は唐突だった。そのとき、私はどんな顔をしていたのだろう。次第に困ったような顔をし始めたモクマさんは私を傷つけまいと言葉を選んで話しているようだった。
「……」
「嫌なら嫌と言っていいし、その……事前にいった方がいいと思って」
「嫌とは言っていませんよ」
平静を装ってモクマさんに言葉を返す。だが手は言葉よりも雄弁で、己でもかたかたと震えていることに気付いた。その手をモクマさんに悟られてはいけない。彼は優しい下衆だから、きっと止めてしまうだろう。
「うん、じゃあ三日後に」
そう言ってモクマさんは病室から外へ出ていった。ヴィンウェイの事件からまだ一週間程しか経過していない。その間に息のかかったこの病院に押し込まれた。
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