とある本丸のへし切長谷部の話「何故、主にお会いできないのだ」
へし切長谷部は広間に入るなり不満を口にした。眉間に深い皺を寄せ、ドカりと音を立てて座り長谷部らしくない所作を見せる。広間にはおやつを楽しむもの、折り紙やカルタを楽しむもの、うたた寝するもの…と長閑な雰囲気から一変、独り言にも問い掛けにも取れる言葉に広間に居合わせた刀たちは、顔を見合わせた。
へし切長谷部は顕現してから一ヶ月経つが、未だにこの本丸の審神者と対面した事がなかったから当然の不満と言えるだろう。
「へし切、短刀たちを困らせるものじゃ無いですよ。いつか一期一振が顕現した暁には真っ先に斬られますよ。」
続いて広間へとやってきた宗三左文字が長谷部を諌めた。
座る長谷部を見下ろす宗三は、内番着を纏ってはいるが、たすき掛けをしておらず、女性と見間違うような出で立ちであった。
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