スイート鈍器透明のプラスチックバックに入った茶色い欠片たちは紛れもなくチョコレートだった。包みも何もなく直接入れられて、丁寧な扱いをされてこなかったのかもはや形を成していない。本当に欠片という言葉がぴったりで、それを食べる満寵は特に気にした様子も見せずに袋の中へ手を突っ込んでいる。
「あ、違うんです!別に誰かに貰ったものではなく」
「それは……うん」
郭嘉の姿を目にするや否や弁明が始まった。どう見たって贈り物には見えないが真っ先に否定される。
「師走って忙しいじゃないですか。だから忘れてしまっていて」
「クリスマスのお菓子の残り、ということかな」
「厳密にはアドベントカレンダーの残り、ですね!」
朗らかに笑う彼はそのまま口の中へと欠片を放り込んだ。
クリスマスを楽しく待つために本来ならカウントダウンとして食べるチョコレートを、今日の今日までそのままにしていたらしい。残っている量からしてほとんど手付かずだったのだろう。だからと言ってそれを、何もポリ袋にひとまとめにせずとも良いのに。そう思いながら郭嘉は苦笑いを浮かべた。
「バレンタインだから思い出したの?」
「ええ。今日のことを想像したら甘い物が欲しくなってしまって……いやぁ、ちゃんと12月のうちに食べておけば良かったなぁ!結構美味しいんですよ!勿論、期限は問題ないのでご心配なく!郭嘉殿もおひとついかがです?」
甘い香りからして確かに傷んだ様子はないけれども、そそられない。遠慮してから郭嘉は持ってきた小さな紙袋を満寵の目の前へ差し出す。
「そんなに美味しいのならこれはいらないかな」
「そんな、意地悪おっしゃらないでくださいよ」
チョコの油分で湿った唇を満寵は指先で拭った。
「郭嘉殿からのは特別ですよ」
「本当?数か月放置するくらいなら私が食べてしまうけれど」
「今すぐ食べるので!私にくださると、嬉しいのですが」
両手を突き出してきたものの段々と覇気がなくなってきた。本当に貰えないかもしれないと思ってしまったのだろうか。素直な反応を可愛く思いながら郭嘉は大きな手のひらの上にそっとチョコレートの入った紙袋を置いた。