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    meemeemeekodayo

    基本かくか受けで文章を書いている者です。たまに別ジャンル

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    バレンタインの彧嘉

    カップの数だけ「どなたに差し上げるのですか」
    一緒に菓子を作りたいなどと、彼から言われたのは初めてだ。驚きつつも荀彧は郭嘉からの頼みを快く受けて今夜は共にカップケーキを焼いたのだった。荀彧とて料理やお菓子作りが得意な訳ではない。しかし郭嘉の方がもっと素人だったため、ふたりで一番簡単なレシピを選び凝ったことはせず無難に仕上げた。
    急に手作りをしたいなどと言われれば誰かへの贈り物かと推測するのは当然だろう。その相手は一体誰なのか。候補は複数浮かんだが、どれも何となく腑に落ちない。
    「郭嘉殿がそんな……手作りのものをあげたいなどと……」
    不思議に思う一方で落ち着かない胸の内があるのも事実だ。何でも器用にこなす郭嘉だが面倒なことは好まない。出来るけれどやらない、といった性格である。
    今、彼は焼き上がったカップケーキへのデコレーションに励んでいた。クリームを絞ったり飾り付け用の小さなリボン型のチョコレートや市販のクマのクッキーを乗せたり、随分楽しんでいるようである。
    特別な思いがこめられているのだろう。どれほど甘いのだろうか、荀彧には想像がつかない。
    「あげないよ」
    ため息を吐きかけた瞬間、明るい声が沈んだ心を掬ってくれた。
    「あげない、のですか?」
    「うん。だってこれ、私と荀彧殿ふたりで食べるつもりだもの」
    「え、では、何故いきなり手作りなど……」
    「ブランドのチョコレートの方が良かった?」
    慌てて否定すれば嬉しそうな笑い声が返ってきた。デコレーションが済んだのか皿に並べられたケーキの正面を見せられる。
    「たまにはいいかなって思っただけ。よく見て荀彧殿、このリボンは貴方をイメージして選んだんだよ」
    「そうだったのですね……ああ、郭嘉殿……こちらはクマではなくパンダですか」
    行儀よく並ぶカップケーキの天辺にはどれもリボンかパンダが乗せられていた。ひとつを郭嘉が手に取り、まだ熱の残るそれを彼の舌がちろりと舐める。
    「はい、トッピングが終わったよ」
    完成したばかりのせっかくのデコレーションは、郭嘉の熱でゆっくりと蕩けていく。
    「どこで食べようか。ね、荀彧殿」
    ピンク色をしたチョコレートのリボンが彼の舌先で弄ばれて、荀彧は咳ばらいをひとつ零した。
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