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    konohako*

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    konohako*

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    2025.4.25 『抱擁』のミカサ視点です。
    ラストは北海道にあるとあるビール園をイメージして(まだ行ったことはない)。
    なぜならこれを書いている時、目の前にコラボのビール缶があったから☺

    この話の「匂い」について、いまだに分からないんですが、実際にあったことなんです。若いとき好きな人といると(仕事終わりの汗かいてるとき)。あのいい匂いはなんだったんだろう(今はない)

    #リヴァミカ
    rivamika
    #ミカサ
    #リヴァイ
    levi.

    抱擁と匂い残業4日目、さすがに疲れてきた。
    疲れた脳では効率が悪い。これは帰った方がいい。でも、そうもしていられないのはこの残務量・・・これはいけない。私では出来ることは限られているけど、係長も課長も昨日倒れた。そしてアルミンもわけの分からないことを言い始めたので、アニに連絡して強制的に連れ帰ってもらった。

    朝は4時に起きて5時半には出社、残務に取りかかる。昼休憩はなぜか定時のはずの午後5時。きっちり1時間休憩を取って、そこから22時の強制シャットダウンまでが勝負。
    私は強い、けど、疲れた。

    リヴァイ部長が一緒にいるはずだが、視界もぼやけてきているのか、あのチビの顔をちゃんと認識できない。

    「俺が見る。お前はもう帰れ」
    何を言っているんだろう、ここにいるのは本当にリヴァイ課、部長か。


    ここに配属されたとき、彼は鬼だと聞いていた。顔も口調も言い方も悪く、付いて来れない者は容赦なく転属させられる。どんな奴かと内心緊張しながら挨拶に向かうと、そこにいたのは人相の悪いチビ。思っていた「顔が悪い」とはちょっと違った。そして、コミュニケーション能力が低いのか(人のこと言えない)、最初は言っていることがよく伝わらなかった。
    『・・・結局私は何をすればよろしいのですか』
    『・・・・・』
    イラつき、眉間に皺を寄せてそう尋ねれば、エルドさんが困った顔をしながら通訳に来てくれる。そしてオルオさんとペトラさんには睨まれる、そんな日々だった。



    「なら、そこは貴方に任せて、私は次の書類に手を付ける」
    「帰り仕度しろ」
    ああ、もう、どっちの意味でも帰れるわけなんてない。迫りくる書類の山に、削られ切った体力。
    休めというなら、このままこの床で明日の朝まで倒れさせてほしい。ストレスも限界。

    ・・・ストレス?

    「リヴァイさん」
    「ああ?」

    アルミンが言っていた、ハグの効力。聞いたときアルミンに抱き着こうとしたら、真っ青な顔をして拒絶された。「アニに殺される」とか言っていたけど、相手が私なら納得してくれる、のに、あれはちょっと傷ついた。
    だから、まだ検証していないストレス解消法。
    カラオケに行く体力はないし、目が疲れていて動画なんて観られないし、睡眠が一番取りたいストレス解消法。
    だけど、それが出来ない今、早急に出来ることは・・・


    あぁ、温かい。それに適度な弾力。私より小さいから、肩に顔をこてんと乗せられてちょうどいい。

    それに・・・いい匂い。


    胸いっぱいにその匂いを吸いこみ、ゆっくりと吐き出す。
    とても癒される。
    もう少し強くと力を入れ、深呼吸を繰り返す。

    このまま眠れたらどれだけいいだろう。
    でもここは会社だ、それは分かっている。もう少しだけこうして、落ち着いたら帰ろう。












    「・・・ねえ、ミカサ?それはなに、かな?」
    「枕」
    安定の定時過ぎ、私が机に座って枕を抱きかかえていると、コーヒーカップを持ったアルミンが現れた。
    「どうしてそんな物がここに、って聞いても?」
    「リヴァイ部長に渡された」
    「なぜ!?」

    ハグの効力は意外とあった。疲れは取れないけど、どこか少しホッとしている部分がある。
    ベッドに入ったとき、もう一度と思う程に。

    翌日、金曜20時過ぎ、再び部長を抱きしめようと近寄ったが、何度トライしても邪魔が入った。私が席を立つと課長を呼び、次は内線をかけ(恐らくエルヴィン戦略部長だ)、その次はお手洗いに。意図的に邪魔をしている。
    ぶすっとしたまま区切りのいいところまで終わらせると、その日はコニーとしぶしぶ帰った。

    そして週明け、部長から突然渡された物が、これだ。
    『なんですか、これ』
    『クッションを探したんだか、小さくてな』
    『いや、そうじゃなくて、何に使うんですか』
    『ハグ用だ。ストレス溜まったらそれに抱きついてろ』
    要は、「俺に近寄るな」。その意を察して睨みつければ、ハラスメントで減給されたいか、と。
    『私が?』
    『お前も俺もだ』
    『部長は嫌なんですか?』
    『…っ、そういう、問題じゃねえだろ』
    歯切れの悪い言い方、どっちなんだ。
    でも仕方なく、ありがたく受け取れば、これは安い割にお値段以上の品。この大きさの抱き心地、弾力、枕としては高さがありすぎて私は使えないが、ハグ用としては最高なのでは?
    悔しい。これではリヴァイ部長に抱きつけない。なんてもの贈りやがったのか。





    「ミカサ?」
    「リヴァイ部長に抱きついたら、抱きつくなとこれを渡された」
    「はあ!?抱き着いた!?なぜ!」
    「アルミンが言った。ストレスが軽減されるって」
    「言っ........た、けど、でも、なんでそれで部長!?それも寄りにもよってリヴァイ部長だなんて!」

    なぜってそこにいたのが彼だったから。
    何をしても許してくれる感じだった。あの時は無意識だったけど、たぶんタメ口きいていた。それでも部長は咎めることなく、「帰れ」とだけ。このまま抱きついてもたぶん彼は突き放さない、なんとなくそう思った。
    まさかハラスメントとか考えてたなんて。

    「あ~このまま寝たい」
    「ならさっさと帰れ」
    枕を抱きしめながら机に突っ伏せば、そこに鬼と謳われる部長の声が。

    「週明け早々倒れられても困る。帰って寝ろ」
    「リヴァイ部長はもう帰るのですか?」
    突っ伏した姿勢のまま顔だけ部長を見上げれば、「帰れるわけねえだろ」と言った表情かお
    「なら私も残るべき」
    「べきじゃねえよ」
    そんなやり取りをしていると、いつの間にかアルミンはいなくなっていた。席に戻ったのかと室内を見渡しても、いなさそう。コーヒーを持っていたし、休憩室にでも行ったのか。

    「リヴァイ部長、香水、何つけてます?」
    「は?香水なんて付けてねぇが」
    「? なら柔軟剤は?」
    「いつもパッケージで買っているからな…どこの何かは忘れたが、石鹸の匂いのだ」

    石鹸、確かに近い香りだったかもしれない。でも、あの匂いはそれだけじゃない。

    「この枕、とてもいいのですが、足りないんです。あなたに抱き着いたとき、とてもいい匂いがした。それと同じものをこれに付けたいんですが」

    そう言った瞬間、ガンっ、と頭を机に押さえられた。

    「いっっっっったっ!」
    「バカな事言ってねえでさっさと帰れ!」
    「香水を聞いただけじゃないですか!」
    「人の匂いに興味持ってんじゃねえよ!」
    「いいじゃないですか!いい匂いだったんだから!」
    「…っ、まだ言うか!」

    何が気に入らないのか全く分からないけど、珍しく真っ赤な顔をして対抗してくるリヴァイ部長。

    あれはリヴァイ部長からは想像できない匂いだった。
    上のボタンを外し、ネクタイを緩めた首筋から香った、甘い匂い。花のような、でも甘ったるくはない、確かに石鹸に近い清楚な香り。
    でも普段の彼からは柔軟剤の匂いさえしない。

    「なら、なんだったっていうの」
    「知るか。よし、分かった。今週末飲みに連れて行ってやる。それでこの話は終わりだ」
    「飲みより癒し、」
    「カラネスビール園。少し遠いからな、1時間前上がりで行くか。ワンランク上の肉も付けるぞ」
    「ビールは苦手」
    「良さを教えてやる」
    「味覚と好みは人それぞれ。教えてもらうものではない」

    とは言いつつ、わくわくしている自分がいる。
    リヴァイ部長と二人で出かけるのは初めて。最初は絶対に二人きりになりたくないと、残業も何もかも、すべて避けていたのに、今はそれどころか、二人で食事に行くことが楽しみで仕方ない。

    きっとこの心はバレている。だって頬が勝手に緩んでいるし、早く仕事に取りかかろうと枕を机下のロッカーに収めている。
    耳に届いたのは「ふっ」と息を吐くような笑い声。顔を上げた時には、部長は自分の席に戻ろうと歩いて行っていた。





    当日、汗をかいたリヴァイがミカサのいう匂いを発し、ミカサの抱きつき癖が悪化することを、この時はまだ知らない。
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