再会「再会」
ずっと自分が嫌いだった。
弱く醜く、脆い。あの人を守ることさえ出来ない。惨めな自分。
でも、今は・・・
鬼市の人混みの中で、突如謝憐が姿を消した。おおよそ、どこかの店の商品に気を取られてしまったのだろう。
可愛らしい。
指先から銀の蝶を飛ばすと、程なく彼の居場所は判明した。
なにやら書物を物色している様子だ。
ふふっと口元には笑みが溢れて、その忙しなく動く背中を見つめている。
哥哥、こっちを向いて。
彼の神に願うと、奇跡のように神はその願いを聞き入れた。
「三郎!!」
走ってくる姿を受け止めようと両手を広げる。
ふわりと腕の中に収まる謝憐が可愛くて、愛おしくて、大好きだ。
「哥哥」
「ん?」
「居なくなる時は、ちゃんと教えて」
「あはは、すまない。本が気になってしまって」
その本が必要なら購入することを伝えると、謝憐は首を横に振った。大体は読んでしまったらしい。
早く帰って、本で学んだことを実践したいとの希望なので、花城は快諾して手を差し出して歩き出した。
「しかし、三郎は背が高くて羨ましい」
「そうでしょうか?」
「うん、だって君を見失わないだろ」
「そうですね。私が大きいのは貴方に見つけてもらうためだ」
戯けて返すと、謝憐は愉快そうに笑い声を立てた。
「じゃあ、君の手が大きいのは?」
「貴方の手を包み込むため」
「口が上手いのは?」
「私は真実だけを口にしてます」
嘘だとまた、謝憐は笑う。
「本当ですよ」
「そうなの?それなら、君がそんなに強いのは?」
「貴方を守るためです」
「そうだったね。君は本当に・・・」
困った子でしょうね。
「・・・私の誇りだ」
予想外の言葉に花城の足が止まる。
「三郎?」
「いえ、今・・・その・・・」
「あぁ、私の誇りだよ」
鬼市の灯りが漆黒と亜麻色の中に揺らめく。
「大きくなって、私を探してくれて、守ってくれた。君をとても大切に思うよ」
ありがとうの言葉は強く抱きしめられて、紡げなかった。
「殿下、殿下ッ・・・」
「三郎。私の可愛い子」
よしよしと背中を摩られて、腕の中の神様は優しい笑みを浮かべる。
「大好きです」
「わ、たしも、大好きだ」
漸く身体を離すと、今度は唇を重ねた。
再び会えたあなたが、好きだと言ってくれるから、私は自分をほんの少しだけ、好きになる。
貴方に会えて良かった。