あるところに、少し変わった男の子がいました。
4才になる渚カヲルくんは、子供なのに頭が良く大人びていて、周りから少し浮いていました。
お友達は一人もいませんでしたが、カヲルくんは気になりませんでした。
パパとママがお仕事で家を開ける事が多いので、いつもおじいちゃんとおるすばんをしているからです。
ある日の事、保育園の帰り道でカヲルくんは不思議な色をした小さな種を拾いました。
真っ黒なのに、お日様の光に当てるとところどころがキラキラと輝いて、まるでお星さまがたくさん浮かんだお空のようでした。
カヲルくんはそのままおうちに持ち帰り、おじいちゃんに頼んで用意してもらった鉢に早速種を植えました。
おじいちゃんに聞いたり、自分で本を読んで調べたりして、毎日一生懸命お世話をしました。
やがて小さな芽が出てきて、カヲルくんはとても嬉しくなりました。おじいちゃんも嬉しそうです。
それからより一層お世話を頑張りました。保育園であった事を話したり、お歌を聞かせたりもしました。
芽はすくすく育ち、やがて蕾を一つつけました。
日に日に大きくなっていく蕾に、カヲルくんはどんなお花が咲くのか楽しみにしていました。
そうして一週間が経ったある夜、ふと目を覚ましたカヲルくんは、窓辺に置いていた鉢植えを見てみました。
するとどうでしょう。月の光を浴びて、ついにお花が咲いていたのです!
カヲルくんは嬉しくなって、急いで鉢の傍まで駆け寄ります。
そのまま鉢を覗き込んで、カヲルくんは驚きました。
まるで空のように綺麗な青いお花の中に、小さな小さな男の子が眠っていたのですから。