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    きたはら/しま

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    きたはら/しま

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    別垢であげてた第三回アロルク版深夜の創作60分一本勝負「手当」
    ポイピクにまとめることにしました!

    お父さんが居た時代と居なくなった後とクリア後のルク家の救急箱に関するあれこれ。クリア後推奨

    #アロルク版深夜の創作60分一本勝負

    自分以外の誰の匂いも音もしない、静かな家で過ごすことに慣れたのはいつの頃だろう。真っ暗な玄関をくぐりながら、ルークは手探りで明かりのスイッチを押した。

    右肘に出来たばかりの擦過傷を水道水で洗い流しながら、ルークは流れていく水をぼんやりと眺めていた。この傷は、おそらくひったくり犯を捕まえるときに出来たのだろう。ルークはリカルド共和国の国家警察だ。それも、正義感が恐ろしく強いタイプの。上司や同僚はくだらない案件には関わるな、と言うが、目の前で起きた犯罪を見逃すような真似は出来ない。

    濡れた傷からは、じくじくと、掻きむしられるような痛みが広がる。業務に集中していた昼間は気づかなかったし、うっすらと血が滲んだシャツを指摘してくれるような同僚もいない。家に帰って、沈んだ空気を吸いこみながら着替えたときに、ようやく気づいたというわけだ。

    昔は。

    この広い家には、もう一人住人がいた。ルークの義父で、正義感が強い警察だったエドワードだ。仕事上、エドワードは怪我をして帰ってくることがあった。父さんは大丈夫だ、ヒーローだからなと、皺を作りながら笑うエドワードに、小さなルークに出来たのは心配とつたない手当だった。

    つんと鼻にくる匂いがする消毒液を浸した脱脂綿で、父の傷跡を消毒し、傷薬をつけ、絆創膏や包帯を巻く。最初はどうやったって緩んだ包帯も、本を読んだり何回も練習する内にエドワードが感心するくらいきちんと巻くことが出来るようになった。得意げに胸をそらすルークの頭を、大きな掌で撫でながら、お前がやってくれると早く治る気がする、と笑った父の皺の形をよく覚えている。

    昔は。
    家に置いてある救急箱から消毒液や傷薬、包帯を切らしたことはなかった。少なくなってきたら、なくなる前にと小まめに買い足していたのは、心配する人が居たからだと思う。怪我して帰ってくるのはエドワードだけではなかった。ルークだって、活発な少年らしく、それなりにいろんな怪我をした。

    遊んでて転んだときにできた膝小僧の擦り傷だったり、帰りが遅いエドワードのために料理を作ろうとして切り傷や火傷。バスケの試合で突き指だってした。
    エドワードは、元気なのは良いことなんだがなぁと困ったように眉を寄せて、ルークの手当てをしてくれた。エドワードの手当は手際がよくて、保健室の先生がするより痛くなくて、小さなルークには魔法のように見えた。そうして最後には、ルークの頭を撫でてくれるのだ。「気をつけろよ」と、自分が怪我したときより痛そうな顔をして。

    幼いルークが一抱えするような救急箱は、ちょっとの痛みと、優しい家族の象徴のようなものだった。

    今は。
    大人になったルークが片手で持ててしまう救急箱は、開けてみれば消毒薬を切らしたままになっていた。買い足す暇がないからだと思いかけて、ルークは口を固く結んだ。救急箱が軽くなったままなのは。
    「……心配する人も心配してくれる人もいないもんなぁ……」

    浮かんだ言葉は、広い家に独り立つルークの胸に、あまりにも寂しく響いた。





    自分を根底から揺るがすような大事件も解決し、ミカグラ島から戻ったルークは国家警察に復帰した。どんな過去があろうと、今の自分はルーク・ウィリアムズで、どうしたって助けを求めている人がいるなら助けずにはいられない。だから、どれだけヘトヘトになっていたとしても、目の前で起きた事件を見過ごすことは出来なかった。

    ひったくり犯を捕まえて、家に帰る頃には日付が変わる直前だった。疲れていても、玄関にともる明かりを見ればどうしたって頬は緩む。アラナさんが退院するまでの間世話になる。そう言ってルークの家に住み着いたアーロンが、つけてくれたのだろう。

    「ただいま!」
    「……どんくせぇ奴だなドギー」

    アーロンは、のそのそとリビングから現われるとルークを上から下まで眺めた後、舌打ちもあらわにそう言い捨てた。機嫌が悪そうに寄せられた眉の間にはくっきりと皺が出来ている。アーロンは一般人が見れば回れ右をして逃げ出しそうな凶悪な顔をしていたが、ルークにとっては相棒の見慣れた表情だ。ただ、そんな顔をされる理由が分からずきょとんと首を傾げた。

    「アーロン、おかえりの代わりにしては斬新すぎやしないかい」
    「どんくせぇだけじゃなくて間抜けでもあったわけか」

    いつの間にか伸びてきた手が、ルークの腕を掴む。アーロンは、大型の肉食獣のように音もなく早く動く。慌てるルークを一瞥すると、そのままリビングまで引きずられ、そのままソファにぬいぐるみのように放り投げられた。ルークだって平均以上の体躯の持ち主だが、ビーストにとってはなんの意味もないらしい。

    「いてて……ほんとなんだよ、アーロン」
    「くっせーんだよ、血のにおいさせやがって」
    「えっ……血?」
    「……気づいてなかったのかよ」

    呆れたように口をゆがめながらルークを見下ろすアーロンは、その腕に救急箱を持っていた。体も腕も掌も大きなアーロンが持つと、どこかおもちゃのように見えた。ぼんやりと救急箱を見つめたまま動かなくなったルークに、もう一度聞こえるような舌打ちをすると、アーロンはルークの右肘を掴んだ。アーロンの指の温度と、ひりついた痛みを感じてルークは思わず声を上げた。

    「いてっ」
    「ほれみろ、怪我してんじゃねーか」
    「えぇ……あ、ほんとだ」

    シャツをめくると、うっすらと血が滲む擦過傷が出来ていた。おそらく、ひったくり犯を捕まえるときに出来たのだろう。つけた本人が気づかないのに、こんな小さな傷でも匂いで分かるなんてアーロンの嗅覚はどうなっているのだろう。思わず感心してしまったルークの前に、掌が差し出された。

    「おら、さっさと腕出せ、ドギー」

    救急箱には、買った覚えのない傷薬や消毒薬、いろんな種類の包帯がぎっしりと詰め込まれていた。

    「それ……どうしたの?」
    「あぁ?それってどれだよ」
    「その、救急箱の、なかみ」

    救急箱を刺すルークの指先は、震えていなかっただろうか。アーロンは思いっきりこれ見よがしにため息をはくと、ルークの腕に濡れた脱脂綿を押しつけた。傷口に橋走るしゅわっとはじけるような痛みに、ルークは思わず呻いた。恨めしげにアーロンを見上げると、へっ、と鼻で笑われた。

    「買ったに決まってんだろ、こんなもん盗むかよ」
    「いや、心配したのはそこじゃないんだけど……うん」

    言葉は荒いが丁寧に傷口を消毒するアーロンの、形の良い額を眺めながらルークはにやけそうになる口を固く結ぶ。ルークの胸が、むず痒いような、痛いような音をたてた。
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    Replies from the creator

    きたはら/しま

    DONEはみ通をよんで我慢できなくて書いた
    部屋ではなく屋上で寝ているアーロンと、なにかものを買ってあげたいルークの話
    アーロンにとって、世の中には嫌いなものばかりだ。餓え、争い、怪我、略奪、銃撃、腐ったパン、泥水。

    いつだったか。「アーロンはどうしていつもそんなに怒っているんだ?」と聞かれたことがある。決まっている、アーロンの世界には許せないことばかり目に入ってきたからだ。怒らなければ、立ち上がらなければとっくの昔に死んでいただろう。

    いつだったか。潜入した国で情報をあさるために図書館で情報収集していたとき。迷子になった子供になぜか懐かれて、絵本を読んでやったことがある。古ぼけた図書館の、これまた古ぼけた木枠ががたついている窓ガラスは、表面があめ玉みたいに波打っていた。そこから入り込む午後の光は揺らめいていて、机にぼんやりとした影を落とす。それがあんまりにも砂漠の日差しと違いすぎて、アーロンの気が迷ったのだ。その子供が、死んでしまった仲間と同じ髪の色をしていたのもいけない。
    アーロンはそのとき読んだ話も大嫌いになった。三兄弟がそれぞれ家を建て、狼が襲いに来るというおとぎ話。わらの家と木の家は吹き飛び、煉瓦の家だけが安全だったという、くだらない夢物語。

    コンクリートとガラスで出来ていた砂漠の家は、 2522

    きたはら/しま

    DONEアーロンのプロフィールにテンション上がって書いた
    ED後、エリントンで二人がご飯食べてる話
    家に帰れば明かりがついているなんていつぶりだろう。

    ミカグラ島のオフィスナデシコでは誰かしら居て、おかえりただいまは当たり前のように降ってきた。チェズレイとモクマは今は居ないけど、アーロンが無愛想に出迎えてくれるだけで一日の疲れが飛んでいくようだ。
    リビングに向かう途中、おいしそうな匂いがルークの鼻をくすぐる。どうやら、アーロンはデリバリーを頼んでいてくれたらしい。テーブルにはLサイズのミートパイにペペロニ、香ばしい匂いのフライドチキンと濃厚なマカロニ&チーズ。そこにちょこんと置いてある一個だけのチョコレートドーナッツにルークの頬は緩みっぱなしだ。

    「へへ、ありがとうアーロン。おいしそうだ」
    「ん」

    ネクタイだけを外すと、急いで椅子に腰を下ろした。ピザにはコーラだよな、と少し悪い顔をしたアーロンがペットボトルを放り投げてきた。もしかして振ってないだろうなこのボトル、とアーロンの方に向けて蓋を開けたが、シュワシュワと小さな音をたてるだけであった。へへ、とごまかすように笑うルークにアーロンは呆れたような顔をすると、ミートパイを口に放り込んだ。
    今日あったこと、アラナの見舞いのこと。昨 1863

    きたはら/しま

    DONE第8回アロルクワンドロ
    お題【童話】

    赤ずきんパロを演じることになった四人が配役決める話。アロルクはほんのり成分
    「BOND諸君。これが新しい台本だ」

    表紙に犬ずきんと書かれた冊子を受け取りながら、ルークは首を傾げた。
    確かにルーク達は一応は一度はバックダンサーとして舞台に立ったし、現在の身分も駆け出しのショーマンではある。だが、あれはあくまで潜入調査のためではなかっただろうか。

    (……そういえば、特訓大変だったよなぁ)

    正真正銘ショーマンであるモクマはともかく、素人のはずのアーロンとチェズレイの動きも美しさの種類こそ違えど夢のようにきれいだった。そもそも、あの二人は立っているだけで魅力的であるし、視線一つで人を引きつけることができる。いつだったか、そんな事を言ったら「あんな詐欺師と一緒にすんじゃねぇよ」と凶悪な舌打ちをいただいたことがあった。

    でも、アーロンの動きってすごいんだよな。こう、歩き方一つ野生動物染みているっていうか、獰猛さがのぞくっていうか……嘘みたいに長い足が、嘘みたいに速く振り抜かれて、ぴたりと静止する。無造作な動作一つ一つがかっこよくて……、うん、僕、よく一緒のステージに立てたな……。

    そんなことをつらつらと思い出していたルークを、不機嫌そうなアーロンの声が現実に引き 2983

    きたはら/しま

    DONE第七回アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    お題:【噛み付く】

    ED後、恋人関係にある二人でビースト特番を見ながらいちゃいちゃしているお話になります
    カツンカツン、と音をたてて煉瓦道を駆け抜ける。夜のエリントンは外灯やビルの明かりで煌めいていて、眩しいくらいだ。遠くから聞こえるクラクションを背に、ルークは腕時計をそっとのぞき込む。どうやら目的の時間までには家に帰れそうだ。ふふ、と自然に頬が緩まる。

    警察の仕事はある意味体力勝負だ。
    いつ事件が起きるか予想は出来ないし、犯行は待ってくれない。エリントン中を走り回ることもあれば、逮捕のために立ち回ることもある。それでいて書類仕事も大事だ。メールや報告書を作成していると腰や目が痛くなる。それでもこの仕事はルークの夢でもあるので、ちっとも辛くない……いや、それは嘘だ。辛いときだってやるせない思いをすることだってあるが、それでも前に進むと決めた男の足を止める理由にはならない。

    ある意味仕事中毒ともいえるルークが、ほとんど定時で家に急ぐ理由。今日は、テレビで怪盗ビースト特集なる番組が放映されるのだ。



    ぜえぜえと息を切らしながら玄関にたどり着いたルークを迎えたアーロンは、理由を聞いた後空をあおいでぼそりと呟いた。

    「……頭沸いてんじゃねぇか?」
    「何てことを言うんだアーロンっ……げほっ 2923

    きたはら/しま

    DONE第6回アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    お題:【〇〇しないと出られない部屋】

    ED後、酔っ払いルクに捕まったアロで
    アロ(自覚あり)→←ルク(自覚なし)です
    どうしてこうなった。

    アーロンは、横でキャンキャン騒いでいる金髪をなるべく見ないように目をそらしながらグラスを傾けた。ストレートの蒸留酒。胃を焼くような強いアルコールも、芳醇な樽の芳香も、今のアーロンには何の意味もない。隣から伝わるいつもより高めの体温や、少し薄くなった整髪料の匂い、そんなものに五感を支配されようとしている。

    何の反応も返さないアーロンにじれたのか、ルークの手がアーロンの肩を揺さぶる。好きなようにさせてやりながら、アルコールの所為では頭痛がアーロンを襲う。どうしてこうなった。

    「アーロン、ねぇ君聞いてるのか」
    「聞いてねぇ。酔っ払いの戯言なんざ誰が聞くか」
    「僕は酔ってないぞ!いいか、君が好きだと言ってくれるまで絶対この手を離さないからな!」
    「勘弁してくれ……」

    フィジカルお化けというあだ名をつけられるぐらい人間離れした身体能力を誇るアーロンにとって、酔っ払いの拘束なぞ目を閉じていても抜けられる。肩を少し傾けて、指が浮いたところでさっさと立ち上がれば良い。ついでに腕を引っ張って相手の重心も崩してしまえば、ソファに倒れ込むだろう。これだけ酔っているのだ、そうした 2989

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    NEIA_AINE

    DONE #アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    【アロルク】28分遅刻しました!すみませんでして!借りたお題は「お酒」の方で、単にアルコール代わりにお酒を吹くアーロンが書きたかっただけ。なお医療行為としては効果はあるけど、正しくはない、みたいな感じらしいし、私自身は医者じゃないので、あくまでファンタジー的に読んでください。あと運営様、お疲れ様でした!最後までよろしくお願いします!
     失敗した。その一言に尽きる。
     「クソッタレ!おいルーク、大丈夫か!」
     「だ、大丈夫だ」
     あまりの激痛に顔が引き攣る。この状態では銃を握ることすらできない。どう考えても戦力外状態だ。痛みが思考の邪魔をする。ただ僕が負傷した現状が、非常にマズイことだけは明白だった。

     時は数日前に遡る。
     「「Discardに関する資料が持ち去られたぁ!?」」
     僕と相棒のアーロンはナデシコさんの一声でミカグラ島の警察本部、警視総監室にいた。
     「正確に言うと、ハスマリー研究の資料が持ち去られた、だ」
     ナデシコさんはいつもの落ち着いた雰囲気からガラリと表情を変え、かなりピリついた態度だった。それだけにこの話の緊急性がうかがえる。
     「今我々が組織の抜本的な改革をしていることは君たちも知っての通りだが、その過程で出てきた資料はすべて紙ベースにした上で資料課が管理をしている。しかし、そこの新人がうっかり鍵を閉め忘れたらしくな。何者かの侵入を許した上に、最重要機密扱いの資料たちを盗んだようなのだ」
     眉間に手を当て、困り果てた顔のナデシコさん。かの研究の悲しくも恐ろしい部分の一端を垣間見てきた彼女だ 3134

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