とある冬の夜の話 ヤカンからコポコポと気泡が上がる音が聞こえて来る。コンロのツマミをカチリと回した安室が台所でお茶の用意を始めた。
コナンがぼんやりとその様子を眺めていると、いつの間にかマグカップを両手に持った安室が和室に戻ってきた。
「コナン君、ココア入ったよ」
「ありがとう」
「熱いから火傷に気をつけてね」
「わーってるって」
思わずが地が出てしまいコホン、と咳払いをしてからコナンが猫を被り直す。
その様子を見て安室は何か言いたげだった。しかし特に何か口にする事はなく、そのままマグカップを二つ机にそっと並べると、コナンの左隣に腰を下ろした。
安室の淹れたココアは香りから美味しそうだ。ふわりとシナモンが鼻腔を擽る。ふうふう、と息を吹きかけ一口含むと、甘過ぎない優しい味が口の中に広がった。
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