見習いに乗っ取られた本丸で大典太の犠牲のもと 主を守るために逃げるソハヤの話刀の折れる音がした。
良い刃生とは言い難かっただろう。
分霊として降りて幸せだったのはひとときだけであった。
ある日強欲な人間がやってきて、主に呪いをかけた。その人間に逆らうと主の魂を壊すというものだった。主を人質に取られて、刀も少なく、練度も低い弱小な本丸はあっという間に人間に乗っ取られてしまった。
質に取られた主の魂。抜け殻の体を必死に守って、人間の横暴に耐え抜いた。人間の望みはわからなかった。審神者になりたかったと譫言のように言っていたのは本当に最初だけで、すぐに瘴気にまみれて意味のある言葉は吐けなくなっていた。それでも鬼にも怪異にもならず人のカテゴリーから外れない人間を刀が切れるはずもなく。日々出陣をしては傷を負い、最悪の場合は折れて帰ってきたのだった。
1923