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    zuzuko0817

    典ソハ小説

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    zuzuko0817

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    2022/07/24 無配

    #典ソハ
    formerSovietUnion

    ソハヤの霊力追い剥ぎ相談室「へえ、大典太光世がくるのは久しぶりだな」

    政府直営の演練会場には屋台も多く出店されている。たこ焼きやにりんご飴、お遊び程度の占い師の店などもあって祭りのような賑やかさがあった。昔はただ訓練のための演習場であったらしいが、面白味も褒美もなければ続かない。より多くの審神者に参加してもらうための工夫であるそうだ。

    昔、を知らない大典太光世は物珍しいとばかりに演練会場を見渡した。顕現は2年ほど前であったが演練に呼ばれることがなかったからだ。無論、審神者が悪いわけではない。大典太はさして興味がなく出陣を希望しなかったし、演練の出番が回ってこないまま錬度が上限になってしまったからだった。極の修行と言うものに行けば伸びしろはあるのだろう。他の極た刀たちを見て思うがどうも自分はまだ極める気にはななれない。それは大典太光世の刀として政府から許可が下りていないこともあるし、自身の刀剣男士としても心のせいでもあった。
    刀剣男士というものが、大典太には未だによく分かっていなかったのだ。

    大典太はのろのろと歩きながら出店の並ぶ道を抜けていく。今日、演練に希望したのは、ある噂を聞いたからだ。
    演練会場の出店の道を進んで、一本曲がった先。少し暗い小道を抜けると、どんな相談にものってくれるソハヤノツルキがいる。そんな噂であった。

    結論から言えばそれは本当であった。簡易的なパイプ椅子に一振り、座っている。彼と対面になるようにもう一脚椅子がおいてあり、彼は大典太と見ると向かいの椅子に座るように促してきた。

    「さて、迷わずここまで来れたんだ。俺に相談があるんだろ」
    「・・・・・・ここは相談がないと来れないのか?」
    「いんや?そんなわけねえけど。特に驚きもしないから相談があんのかなって。俺がそれなりに噂になってることは知ってるし」

    ソハヤは笑いながら自分の腹当ての紐の部分を触っている。どうにも緊張感のない仕草に大典太は少し拍子抜けした。

    「その・・・・・・」
    「ん?」
    「うちの初期刀の陸奥守がよく風呂で寝るんだが、どうすればいい?」
    「はぁ?なんっだよそれ!!俺の噂聞いてくるやつってだいたいもっと深刻な内容だぜ」

    素っ頓狂な声を上げたあとソハヤは大笑いしながら自分の膝を叩く。刀に恋をしてしまったとか、不正を働いている審神者がいるとかそういう内容が多いのに、と。

    大典太だってまさかそんな質問が口からでるとは思わなかった。聞きたかったことは違った。刀剣男士とは何なのか、その存在意義を、何でも相談に乗れるというソハヤノツルキに聞いて見たかったはずであった。

    爆笑が止まらないソハヤを目の前で見て、だんだん大典太は居心地悪くなる。自分だってなぜ急に質問を誤魔化すように変えたのかわからなかった。

    「まあなんだ、風呂で寝ると死ぬぞ。この体」

    ソハヤは腕を組んで考えたあと、至極真っ当な答えをする。

    「風呂で寝るって睡眠じゃなくて気絶らしいし。おまえのところの陸奥守吉行疲れているんじゃねーの」
    「初期刀として大変そうではある」
    「手伝ってやれよ」
    「・・・・・・うちは刀種にばらつきがあって、太刀が二振りしかいないものだから出ずっぱりで近侍の仕事を覚える機会がない」

    刀の数は決して少なくない本丸であるが、短刀と脇差は現在顕現出来る刀であればすべているのだが、打刀は陸奥守だけなのだ。

    「もう一振りの太刀は?」
    「ソハヤだが」
    「なあんだ!三池で揃ってんのか!じゃあ話は簡単だ。おまえのところの俺にその話してみろよ。ソハヤノツルキはそういう采配が上手い刀だよ」

    陸奥守吉行は自分の限界を誤魔化しがちな刀であるし、彼から主に近侍業務の分業化の提案は難しいだろう。だったら外堀から埋めてしまえばいい。ソハヤという刀は個刃の能力で適材適所に仕事を振るのが上手いから。そんな話であった。

    「わかるものなのか、俺の本丸のソハヤを」
    「あんただって他の本丸の大典太の話されてもだいたい想像つくだろう。本丸での差はあっても結局元は同じだし」
    「そんなもんか?」
    「そんなもんだ」

    分霊というものがあまりわからない、と大典太は思った。すれ違いざまなどで会ったことはあるが、本霊から分かれた同じものであるという意識がぴんとこないのだ。
    それを目の前のソハヤはさも当然とばかりに言ってのけた。噂ではこのソハヤは百年は此処で相談を聞いているらしいから大典太の分からないこともわかるのかもしれない。
    噂におもしろおかしく尾ひれがついただけで、百年が本当の話だとは思っていないが。

    「・・・・・・助かった」
    「おいおい此処の噂聞いてきたんだろ?タダで帰る気か?」
    「金がいるのか?すまない知らなかった」
    「ちげーよ」

    大典太が帰ろうと立ち上がるのを、ソハヤが腕を引いて引き留めた。捕まれた手首が熱い。

    「ッ!!」

    触れられた場所から霊力が奪われているのが分かった。抵抗をしようとしてもびくともしない。だんだん足にも力が入らなくなって大典太は床に倒れ込む。パイプ椅子もひどい音を立てて倒れた。

    しゃがみこんで顔をのぞき込んでくるソハヤがくすくすと笑っている。

    「ここは霊力追い剥ぎ相談室。相談にのってやる駄賃としてすこーし、霊力を貰う。貰う霊力は相談の内容によるから、本当はあんな相談霊力貰うまでもないんだけどな」

    照明の加減で逆光になり、大典太からソハヤの顔がちょうど見えなくなる。
    怒っているようだった。

    「あんたは本当に聞きたいことを聞かないで誤魔化したから仕置きだ。回復するまで床とオトモダチでいろよ」

    打って変わって冷たい声音であった。大典太が自身の心に戸惑って言い倦ねたことを分かっているようであった。
    指一本動かせない。この短時間でこれだけ霊力を搾り取られるとは、少なくとも刀剣男士として錬度以外で差があるのだと大典太は思った。動く瞳で睨みつけると上出来とばかりにソハヤの口元が緩む。

    「出直してこいよ。もっとしっかり自分の心と向き合って。俺は相談に乗れるけど、ちゃんと投げかけられなきゃ答えられない」

    ソハヤは立ち上がる。引き留めたくても大典太は声も満足に出なかった。またな、とソハヤが頭を撫でて去っていく。
    自分のふがいなさに大典太は爪が食い込むほど拳を握りしめる。
    体が動くようになったのはそれから一時間後のことであった。

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