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    zuzuko0817

    典ソハ小説

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    zuzuko0817

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    大典太死ネタ
    見習いに乗っ取られた本丸で大典太の犠牲のもと
    主を守るために逃げるソハヤの話
    救いはない
    クソ人間のせいで大典太の試し斬りに使われるソハヤがいます
    みんなぼろぼろ
    折れる

    #典ソハ
    formerSovietUnion

    見習いに乗っ取られた本丸で大典太の犠牲のもと 主を守るために逃げるソハヤの話刀の折れる音がした。

    良い刃生とは言い難かっただろう。
    分霊として降りて幸せだったのはひとときだけであった。

    ある日強欲な人間がやってきて、主に呪いをかけた。その人間に逆らうと主の魂を壊すというものだった。主を人質に取られて、刀も少なく、練度も低い弱小な本丸はあっという間に人間に乗っ取られてしまった。

    質に取られた主の魂。抜け殻の体を必死に守って、人間の横暴に耐え抜いた。人間の望みはわからなかった。審神者になりたかったと譫言のように言っていたのは本当に最初だけで、すぐに瘴気にまみれて意味のある言葉は吐けなくなっていた。それでも鬼にも怪異にもならず人のカテゴリーから外れない人間を刀が切れるはずもなく。日々出陣をしては傷を負い、最悪の場合は折れて帰ってきたのだった。

    審神者になりたかったと言っていた人間に手入れは出来なかった。審神者の真似事で刀を出陣させるだけ。小さいながらも綺麗な本丸は血と瘴気で汚れていく。霊力に自信のある刀がなんとか周りを浄化しても追いつかない。刀が折れ、人を恨み、気を濁らせる繰り返しだ。

    ソハヤノツルキは腕の中の主の体を抱えて座る。血の気のない顔であったが肉体は綺麗だった。一番最後に鍛刀されたソハヤはこの本丸で一番練度が低く、出陣回数も少なかったため、主の肉体を守るよう他の者から頼まれていた。

    「主、俺たちどうすればいいんだろうな」

    出陣回数が少ないがソハヤは中傷手前まで負傷していた。主の前髪が目にかかりそうだったので払ったが、帰って血で汚してしまっていた。

    ソハヤに主を押しつけて出陣した大倶利伽羅はきっと折れて帰ってくる。そういう怪我だった。大倶利伽羅は出陣前、ソハヤにもう何も話さなかった。彼の話を聞いていた太鼓鐘は数日前に折れてしまったからだ。

    どうにか機会を伺いつつも折れてしまった者、親しい者が折れて祟る前にと自ら炉に飛び込んだ者。少し前まで主と一緒に炬燵で鍋を突きながら、来年も良い年にしようと語ったのが夢のようであった。

    「兄弟」
    「……!っ……!」

    大きな影がソハヤと主にかかる。ソハヤは咄嗟に片腕を上げて庇ってしまった。

    「……すまん、大丈夫だ。今日は何も言われてない」
    「はっ、……あはは。わりぃな兄弟。……わるい」

    最近覚えてしまった咄嗟の行動にソハヤは心の中で舌打ちをした。声はまだ震えていた。あんなに仲の良かった兄弟に対する本能的な恐怖であった。

    あの人間は随分と悪趣味で、ある日天下五剣で試し斬りがしたいと宣ったのだ。ここの本丸の天下五剣はただ一振。そして選ばれたのはソハヤだった。人間が丈に見合わぬ大典太光世を振るうのをソハヤは抵抗もせずに肉体で受けるしかない。ソハヤが太刀を受ける間、大典太は歯を食いしばりながら主の体を守ることしかできなかった。

    主の魂をちらつかせてくる人間は実にしたたかであった。

    すっかり体が大典太の切れ味を覚えてしまったのが憎い。こんなのなんてことないと笑い飛ばしてやりたいのに、体は震えて、余計大典太を悲しませている。

    大典太がソハヤを怯えさせないように目線を合わせてしゃがんだ。顔の傷に触れてきて、また体を硬らせてしまった。兄弟同士霊力を手合わせのようにばちばちと合わせるのが楽しかったはずなのに。兄弟の霊力があまり感じられない。もうどちらも霊力なんて殆ど無いのだ。

    大典太が目を閉じて、開く。
    何かを決意した顔だった。

    「兄弟?」
    「……所詮分霊だ。俺一振なら問題ないだろう」
    「……兄弟?」

    嫌な予感がした。大典太がソハヤにもう一度だけ触れて、名残惜しそうに離れていく。

    「まて、兄弟!待てよ!何考えてやがる!!」
    「……外と連絡がとれるようになったら主を連れて逃げろ」
    「やめろ!お前あいつを殺す気かよ!あいつはまだ人間だ!

    そんなことしたら、兄弟が堕ちちまう!!」

    大典太が振り向いて、笑った。この兄弟は頑固だ。もう俺の声は届かない。

    悟って、ソハヤは伸ばした手を下ろした。
    先の試し斬りで足の腱を斬られたソハヤに大典太を満足に追うことは出来ない。

    「……っ、う、……クソっ……なんでっ……」

    もっと練度があればよかったのだろうか、もっと強ければ、ソハヤはあまりに無力だった。拭いもしない涙がぼろぼろと腕の中の主に落ちていく。

    「ああ、」

    主の魂が肉体に戻ってくるのが感じられた。三池の刀が堕ちたことも。きっと今なら外に助けを呼べる。残されたソハヤにできることは主の守り刀として働くことだけだ。

    「待っててくれよ、兄弟。全部終わったら俺も追いかけて逝くからさ」








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