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    prsk_Oo

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    オンリーの無配用で書いたけど間に合わなかった前日譚。
    あほえろ本編とはかけ離れています 全年齢

    無配僕の家系は昔から魔力が存在していた。
     原因は分からないけれど、ご先祖さまが魔族だったのかもしれない、らしい。
     父さんも母さんも魔力があること以外は普通の人間で、とても研究熱心だった。かがく、の力と、魔力を合わせて、よく色々な道具を生み出していた。
     
    「いい?類。この森の外には出たらダメだからね。魔族に襲われてしまうかもしれないから」
     
     これが、母さんの口癖だった。
     でも、その時まだ幼かった僕でも、町の人達に嫌われていて、森に追いやられていることは察していた。
     魔力を持つから。普通では無いから。
     ただそれだけの理由で、僕たち家族は孤立していた。
     
     本音をいうなら、僕も町で堂々と住み、堂々と研究に没頭したり、三人で不自由なく暮らしたかった。
     しかし、何も出来ない自分が町に行っても、もっと家族に迷惑をかけてしまうことも、理解していた。
     悔しかったけど、3人でいられるだけでも幸せだった。
     
     
     そんなある日、いつも通り一人で森の中の花畑で魔法を練習していると、何やら町が騒がしくなっていた。
     ……きし、きゅうそく、にんむ。
     騒ぎ立てる低劣な町民たちの声は、途切れ途切れではあるが聞こえるほどに大きかった。
    「…………国のきしだん…って、ところ、かな」
     媚びへつらうような町民の声色にへどが出そうになって、魔法の練習に意識をそそぐ。
     それでもひとたび考えたことは中々頭から抜けてくれなくて。
     この町はくさってる。どうしてきしだんに入ってまでそれが分からないんだ?
     早く僕らのような不当な扱いを受けている人たちを助けてよ。
     溢れそうな感情は、無意識のうちに形となって紡いでいく。
    「……なんの為の騎士団だ」
    「なぁきみ、なにしてるんだ?」
    「っだれ、」
     ぽろりと心の内が零れた瞬間、聞きなれない少年の声が花畑に響いた。
     はっと声のした方へ顔を向ければ、見慣れぬ金色の髪を靡かせた少年が木の影から顔を覗かせていた。
    「……誰?はこっちの台詞だよ。おかあさんにいわれなかったのかい?『森には魔物と契約した裏切り者がいるから森へは立ち入るな』って」
    「うーん、とくに言われてはいないな!」
    「……はあ…?」
     彼は警戒心むき出しな僕にたじろぐことも無く、あっけらかんと答えた。
     呆気に取られていたが、よく格好を見れば町の子供とは違うそまるで武装したような格好で、もしかして、町に来た騎士団はこの子も含んでいるのか、と何処か他人事のように考えた。
    「……そうかい。なら町の方へ戻ってこの町のルールでもちゃんと聞いておきなよ。森には入ってはいけないと、みんなに言われ​─────」
    「そんなことより!今、魔法を使ってなかったかオレ、魔法覚えるの苦手で……!なぁ、君さえ良ければ教えてくれないか」
    「うわ、いつの間に……!」
     その金髪の少年は臆するどころかいつの間にやら目の前まで近づき、僕の手を握りしめた。
     久しぶりの同年代の手は、ぽかぽかと陽だまりのようだった。

    ​───────​───────​

     そうして、約一週間。最初は何かまた町民が企んでいるのかと突き放したのだが、それでも一切めげずに説得にこられていた。
     魔法で迷路を作っても、花畑を見えないように隠しても、彼は現れた。
     彼曰く、「感覚で辿り着いてる」、だそうだ。
     そんなに根気強く来られれば折れざるをえず、渋々と教えれば彼はとても喜んだ後、とても真剣に教えたことを細かくメモしていた。
    「…………なんで、ここまで来てくれるの?つかさくんのところだって、優秀な魔導師はいると思うんだけれど」
    「何を言う!るい、こんな上手に魔法を使うのはるいだけだぞ!本来は攻撃手段にすらならないのだからな」
     だから、オレたちのような騎士団がいるんだ、と彼——つかさくんはそう誇らしげに言った。
    「まぁ、今は見習いだがな……。そうだ!るいも王国の中枢部へ来るといい!魔法と剣、組めば無敵になれる!」
     そんな夢物語、僕はずっと諦めがちに笑っていたけど。
     つかさくんが国に帰る頃には、すっかり彼の熱気に充てられてしまっていた。
     
     僕たちが森に追いやられていることも、つかさくんも騎士の先輩のような人達にこき使われていたこと、それに逃げていたらるいと出会ったこと、全てを花畑で話していた。
    「……もう、行ってしまうのかい」
     孤独が怖かった。つかさくんが人と話す楽しさを思い出させてしまっていた。
    「……っ!オレが!オレが誰にも負けないくらい強くなったら、るいを迎えに来る[#「」は縦中横]それで、国で一緒に暮らして、魔術と剣両方を持ち合わせる素晴らしい国にしよう!」
    「っ、つかさ、くん……!」
     たかが一週間とちょっとの関係。しかし、とっくの昔に、僕にとっては何よりかけがえのないものになっていた。
     
     そうして、月日が流れ、司くんは若くして騎士団長になった。
     それは、使い魔の鴉を飛ばせば森の奥深くでもすぐに得られる情報だった。
     ああ、覚えてくれているかな。数年前の、小さな約束。
     ……正直、覚えていなくても、司くんが団長になっただけで喜ばしかった。
     でも、もし、覚えていてくれたら。
     スッキリしていて、でもどこかモヤモヤした気持ちで、いつもの花畑の手入れを終え、帰路に着く。
     でも、やっぱり嬉しい気持ちの方が何倍も多かった。
     
     
     ——家の前で倒れている、父さんと母さんを見るまでは。
     
     町の人達が、魔族を倒さねばと僕の不在中に家を襲ったらしい。使い魔の黒猫が、怯えながらも伝えてくれた。
     二人はどれだけ蹂躙されようと、町の人達に手を出さなかったらしい。
     その話を聞きながら、僕の心はドス黒い何かに包まれていくのを感じていた。
     幸い生きてはいるが、それでも二人は昏睡状態にある。
     
    「…………僕たちが、何を、したっていうんだ」
     
     ぶわり、と暗雲が空を包む。母さんと父さんを家へ寝かせると、今にも暴れ出しそうな感情を必死に塞き止めながら、森の離れに大きな塔を立てる。
     天候が大きく荒れる。もう限界だな、と何処か他人事のように、僕はそう思った。
     
     僕が塔に入った途端、町には大きな雷が落ちた。
     川は荒れ、作物は泥にまみれて流れていく。
     町の阿鼻叫喚すら聞こえない塔の最上階で、僕は黒い感情に身を委ねてしまった。
     
     許さない。町の愚図共め。
     許さない。何もかも。
     この世界も。助けてくれない人達も。
     
    「————約束を覚えてくれてなかった、司くんも」
     
     
     
     もう、我慢するのはやめた。
     魔術ちからで、僕は欲しいものを手に入れる。
     約束を覚えていない司くんを許さない気持ちと、昔話していた気分の高揚感が頭の中でかき混ぜられる。
     
     
     
     抱えきれない情報により情緒が乱れる中で、そうして僕の中に最終的に生まれ落ちたのは、歪な恋心なのだった。
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