揺れるどんなに優しく触れられ、甘く囁かれようと、十五歳の僕がこの人をまだ許していない。
柔らかな淡い色の髪の毛を指でとかし、まろい体温が僕の指の腹に溶けるように伝わる。
あなたは生きていて、僕もまだ生きている。全身に血が通い、心臓の拍動は規則的で安心する。
ア・バオア・クーで剣を交えたあの日から、同志になれと言われたあの日から、随分と時は経ち、あなたは前を向いている。まるでもう終わった事だとでも言うように。
今だって、この瞬間にあなたが憎くて堪らない。なのに、その憎しみと同じくらいに愛しく思う。
バラバラにひび割れた内側が酷く痛む。どうしたらいいのか誰か教えて欲しい。
宇宙へ上がれとあなたは言った。
そう出来たならと、僕だって思う。
ただ、今あなたと宇宙へ上がれば、もうどうやっても離れられなくなる。あの数ヶ月で散った無数の命は一体なんだったのだろうと、また十五歳の僕が叫ぶ。
何故、どうして、と。
ララァが死ぬことはなかったんじゃないかって。
あなたと宇宙へ上がったら、僕はきっと戻れない。あなたがいない日々にはもう二度と。
宇宙の空気、自由に駆けるあの躍動感、無重力帯の記憶。
胸の内が複雑に混ざって、痛いんだ。