ふしぎなのかかん5「せっかく《ばんぐみ》がいいところだったのに」
いつものように盗賊をやっつけたエレインは、動く絵が映る不思議な箱を観る作業に戻る。動く絵のそれぞれのテーマは《ばんぐみ》と呼ばれていると毎日見ている不思議な箱でエレインは知った。数少ないエレインの人間に関する知識だ。
「いい人間もいるようだけど、ここにはろくな人間が来ないわ」
今、《ばんぐみ》ではブリタニアのいろんな地方のお菓子を紹介している。食と無縁の生活をしているエレインだが、まるでお花のように色とりどりのきれいでかわいい食べ物には興味をひかれた。
「こんな素敵なものを作れる人間はきっといい人間ね……」
「ひとくち飲めば〜♪」
ばんぐみを見ながらつぶやいたエレインの言葉に被さるように、妙な歌声が聞こえてくる。エレインは瞬時に仕事モードになり、さっと立ち上がった。信じがたいがさっきの盗賊が戻ってきたらしい。
「よっこら……」
「森の一部になりなさい!」
盗賊がよじ登ってきたと同時に、再びエレインは情け容赦なく侵入者を吹っ飛ばし、不思議な箱のもとに戻った。
……だが、エレインがばんぐみを堪能する間もなく、盗賊はまたやってきたのだ。