リオネス城での用事を済ませ、愛しのエレインが待つ我が家に大急ぎで帰った。
いつもならば気配を察して扉から飛び出してくる妖精の姿がない。寝ているのだろうか、まさかまた気分が優れないのではと吹き上がる不安に押しつぶされそうになったバンは寝室を覗いたが誰もいない。
「エレイン……!」
家中を探し ―― もっともさして広い家ではないので探す場所も殆ど無いのだが ―― その姿を認めた時には安堵で大いに嘆息した。と、同時に嘆息したままの口が開きっぱなしになった。
エレインはすやすやと眠っていた。
…… バスタブの中で、赤子のように身体を丸めて。
「なんて所で寝てんだよ……っと ♫ 」
起こすのもはばかられるので、バンは小さな身体をそうっと抱き上げた。が。
「んんーっ。あらバン、帰ってたのね!」
「いや、今帰ったばっかりだ♪ てかお前、なんでこんなところで寝てたんだよ?」
「あらだって、ここは暑い日用の寝床でしょう」