ジバゴおじさんに頼まれて沢に水を汲みに来たバンは、そこに女の子がいたので思わず目を擦った。
が、夢ではない。金色の髪に白いワンピースを纏った女の子が確かにいる。バンより少し歳上に見えるその子は、まるで水面の上を滑るようにしてバンに近づいてきた。
「バン…」
「なんで俺の名前知ってるんだ?ジバゴおじさんの知り合い?」
バンは更に驚いた。女の子は首を横にふる。金色の髪がキラキラ揺れた。
「昔ね、会ったことがあるのよ、私達」
バンは一生懸命考えたが思い出せない。俺はこんなにきれいな人を忘れてしまったのだろうか。
「悪いィ…。おねえさん、名前は?」
女の子は嬉しそうに、けれども少し寂しそうに笑い、透き通った美しい声で答えた。
「エレインよ」
何故かその響きは、とても切なく懐かしいものに感じられた。