ウワサの二人〜女優アイの場合〜**
「アイさんお疲れ様でしたー!」
「はーい、お疲れ様でした」
にっこりと笑顔を浮かべて手を振ると、若いスタッフは嬉しそうに手を振り返してくれる。その笑顔のまま軽やかにワンピースを揺らし、通路を歩いて、すれ違うスタッフたちに微笑み挨拶をしてから、私は楽屋の中に入った。
「…最悪」
スッと笑顔をやめて椅子に腰掛けると、テーブルに置いてあるミネラルウォーターのペットボトルを乱暴に手に取る。イライラを落ち着かせるように水を一口飲んだけど、一向に収まる気はしない。
今日は予定通りファッション誌の撮影が入っていた。一週間のコーデ特集で私一人の撮影。撮影は順調でそれなりに乗ってきたところで、気の利かないスタッフが誰かさんを連れてやってきた。隣のスタジオで撮影中だったという、リヴァイ・アッカーマンを。
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