I want to say, I love you※tr視点
ついに迎えた結婚式当日。当初から予定していた通り式は二人だけで行うささやかなもの。
私たちを祝福するかのように晴れた空は見ていてとても幸福な気持ちになれる。
こんなにも私は幸せでいいのかと思うぐらいには幸福な気持ちでいっぱいでまだバージンロードすら歩いていないというのにも関わらず胸から熱い何かが込み上げてくる。
隣に並ぶのは私が愛してやまない存在であるナリタブライアン。純白のドレスを身に纏った彼女はこの世の何よりも綺麗で正直直視ができないぐらいだ。いよいよ彼女と共にバージンロードを歩こうとするその瞬間彼女は口を開いた。
「……トレーナー、私はアンタのことを――――――。」
狡い、こんな時に言うのは本当に狡い。まだ泣いてはいけない場面なのに瞼が熱くて仕方がない。きっと口を開いたら涙も溢れてしまうだろうから私は黙ってその言葉に頷いた。私だって同じ気持ちなのだ。
ゆっくりと互いの一歩一歩を合わせて、自然光が照らす神秘的なバージンロードを歩いていく。一つ歩を重ねて行く度に脳裏に浮かぶのはブライアンのこと。彼女との出会いから今までのかけがえのない思い出が鮮明に浮かぶ。絶対に叶わない想いだと思っていた時期もあった、彼女と沢山すれ違うことだってあった。それでも今こうしてブライアンの隣にいることができるのは私も彼女も同じ気持ちを持っているから。
ブライアンと出会えて本当に良かったと心から思いながら最後の一歩を踏み出した。光が降り注ぐステンドグラスの煌めきとブライアンの姿は綺麗だとか言う言葉じゃ片付けきれないぐらいのものだった。
祭壇を前にして向き合う私たち。周りには誰もいない、誰もいらない。たった二人だけの空間で私たちは今から永遠を誓い合う。
貴女を生涯をかけて幸せになると目の前の彼女に誓う。
「ナリタブライアンさん。私は貴女と出会えたことに感謝し、貴女を生涯をかけて愛し続けることを誓います。」
「"――"さん。私は貴女とこれからも喜びも苦しみも分かち合い、一生をかけて愛し続けることを誓います。」
滅多に聞かない彼女のその口調は本当に新鮮そのものだったが今はそんなことを気にしてはいられない。なんと言っても大事なものをやっと彼女に渡すことができるのだ。手袋を外し最初に私がブライアンに向かって左手を差し出す。彼女も左手で私のその手を支えるようにして持つと右手で指輪を薬指にそっと通してくれた。この指輪はブライアンと一緒に選んだ指輪だ。シンプルだけれどもそれがいいのである。指輪が私の指にしっかりと通り次は私の番。何度もイメージしてきたはずなのに、緊張で心臓がうるさい。さっき彼女がしてくれたようにブライアンの左手を取り薬指にゆっくりと指輪を通す。指輪は冷たい感触がするが触れ合う手は対照的にとても熱かった。
指輪を通し終えどちらからともなく近づく顔。唇と唇が合わさった時間こそ短いものだったのにとてつもなく長い時間に感じられた。唇を離し彼女と目を合わせ小さく笑い合う。
「ブライアン」
彼女の名を口に出せば穏やかに微笑む彼女。ただひたすらにその表情は愛おしいものだ。
「トレーナー、いや…"――"。」
こちらも名前を呼ばれ微笑み返す。上手く笑えているかはわからないがそれでもいい。次に同時に出た言葉は、
――――――愛してる。