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    shakota_sangatu

    @shakota_sangatu

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    shakota_sangatu

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    敵に洗脳されるノスvsクラの書きたい所だけ~~~~!!!!!
    モブ吸/血/鬼/注意報
    パスみの強いウスも出したい。

    #クラノス
    kranos

    敵に洗脳されるノスをクラが助けるやーつープロローグ的なやーーつ。


     古き血たちは、月夜に群集う……。

     古よりの吸血鬼が『古き血』と表され、彼らがある不文律を持って集うようになったのは、人類と共に歩む彼らの歴史的に見ては瞬きほどに短い間の事。
     打算であったにせよ、人界において畏怖の象徴であった者達にも、群集うという概念は確かに存在した。
     言い換えれば、良好な関係性を紡げたもの達だけが、現代においては『古き血』という名を途絶えさせることなく生き残っていると言ってもいい。
     人類との共生を望む奇特な王がいて、望まずとも彼の思想に準じたが故の結果。
     ならば、望まざる者達はどうなったのか……。その一つの例が、とある国の古びた修道院の地下に存在していた。
     某月、某日……。ある田舎に存在した朽ちかけた修道院は、その歴史的価値を評価するための調査団たちによって、長く閉ざしていた扉を開かれようとしていた。
     雨水で劣化した鉄の扉を開いた先、差し込んだ光と風を厭うように舞い上がった埃のベールの向こう。蜘蛛の巣のかかった聖母の像と、折れた十字架に見守られるようにソレはあった。
     修道院の真ん中には、長い深紅の杭が打ち付けられた棺桶が一つ。まるで、中に居る何かを戒めるように奥深く間で刺し貫かれた赤い杭の存在に、調査団たちが歴史的価値を見出すのは当然のことで。……、そのうちの、無知で血気盛んな若者が、赤い杭をよく見ようと鉄の扉を大きく開け放った。
     一筋の線を描いていた日光が、その杭を照らした時……。赤い杭は細かな灰になって崩れ落ちる。芸術的な光景に、彼らが息を呑んだのはほんの僅かな間の出来事。今、日光の力によって消し去ったものが、何かを抑えるための封印であったことを彼等は知ることになる。
     異変は、すぐに起こった。
     洞ができた棺桶から、地鳴りのような声が響いた。
     その声は、古い古い言語だった……。その声は、何かに対しての深い深い憎悪を叫んでいた。
     びりびりと空気を揺らす吠え声に、彼等は皆腰を抜かして、けれどすぐに蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げ出した。
     翌日、戻って見れば、そこには木っ端みじんになった棺桶の残骸が転がっていたのだという……。
     恐らく、あれは吸血鬼だったのだろうと調査団の一人は言った。
     ちょうど昼間だったから、自分達は声の主に追いかけられず無事に済んだのだのだと。
     あの修道院は、吸血鬼を封じていたのだろうと。彼らは、口々にそう言った。
     ならば、封じられた中身は何処に行ったのだろうか……? 人間達は皆、その答えを知らない。







     新横浜の夜に、不気味な印象の男が佇んでいた。
     うっすらと目の下に刻まれた隈と、感情の分からない真紅の双眸の。インバネスコートを纏った、眉の太い気難しそうな顔の男だった。
     毛量の多そうな少し癖のある黒髪は後ろに撫でつけられ、左側の端だけはらりと顔にかかっている。口元と顎の輪郭に添って生えた黒い髭は、整えられていて不潔な印象は無い。
     さっぱりとした白いシャツと、銀の飾りがある青い石のループタイ。黒い革靴に、手にした黒い杖には、すらりとした犬の首の飾りがついている。
     貴族を彷彿とさせる男の耳は、吸血鬼の象徴である尖った形をしていた。
     明らかに高等吸血鬼の気迫を宿した人物は、己の傍に降り立った存在に胡乱な眼差しを向けた。
     吹雪いた風と共に、音もなく舞い降りる一つの気配。凍て風を纏った人物を一瞥した男は、ややあってにいっと歯を剥き出しにして笑う。
    「あの男の匂いを追って来てみれば……、なんだ、潜んでいたのは『坊や』の方だったか」
     成人男性に向ける呼び名ではない、明らかな侮蔑を含んだ呼びかけに対して、それを受けた方は警戒心と共に僅かな負の感情を露わにした。
     己の事を坊やと呼びかけて来た男への敵意と、それ以上にどうしてこの男が此処に居るのだという戸惑い。そして、斃さなければならないという使命感。
    「ドラウスに斃されたはずの貴様が……、どうして、」
     目の前の存在を思い起こすため、古い記憶を手繰りながら、氷笑卿と呼ばれる古い血の吸血鬼は、周囲の空気を凍てつかせていく……。
     瞬きの合間に、氷の棘を空中に出現させたノースディンは、その切っ先を目の前の吸血鬼に向けながら、気勢のある声で問いを放った。
    「竜子公に代わり問おう。ブラッグドッグ、貴様、何をしに此処に来た!!!」
     月光を反射する氷の刺突を従えて、高らかに言い放つノースディンの姿は実に勇猛で。だからこそ、凍てつく敵意に対し、素直にコートの裾を揺らす男の不気味さが引き立つ。
     ブラッグドッグと呼ばれた男は、ノースディンの姿に感嘆するように目を瞬かせて。ゆうるりと、小首を傾げる。
    「ずいぶんと大きくなったものだ、かつては齧り甲斐の無い貧相な少年だったのに、今ではいっぱしに騎士の真似事かね……、」
     独り言のように呟く声は、まるで時の流れに感じ入っているかのようにしみじみとしていた。まるで、ノースディンのことを古くから知っているかのように……。虚ろな声で呟いた男は、己に向けられる凍てつく敵意と、睨み据える深紅の眼差しを見返して。
    「しかし、私を覚えているのなら……、親から習わなかったかね?」
     まるで、可憐な花を手折る子どものような、残忍な笑みを浮かべた。
    「ブラッグドッグと、目を合わせるなと」
     そう───、男はブラッグドッグ。恐るべき古き血、見るものの精神を脅かす黒い狂気と呼ばれたモノ。
     または、人間を嫌い、人間を喰らう、小山ほどもある悍ましい大きな黒犬。
    「っ、」
     息を呑んだ瞬間、心に僅かな動揺が走った瞬間。黒い狂気は、もう忍び寄っている……。
    『おじさま、ごめんなさい』
     心の中に封じていた、忌まわしい記憶が蓋を開きかけた時、ノースディンは一種の防御本能か、ブラッグドッグに攻撃を仕掛けていた。
     男の居た場所に突き刺さる氷の棘、底冷えする冷気が空間を包みこみ、空気さえも凍らせる……。数でもって相手を制する、そんな怒涛の攻撃を、ブラッグドッグは揺らめくようにして避けた。風にしなる柳のように、氷の棘を避けた吸血鬼の片方の腕……。インバネスコートの内側が、質量を失ってひらりと冷気に巻き上げられた時。
     一匹の黒犬が、牙を剥き出しにノースディンに襲い掛かった。
    「くそっ、」
     犬の牙を避け、氷の棘を纏った腕で凪ぎ払う……。ノースディンの攻撃を、犬は軽々と跳躍して避ける。
    『おじさま……、やめて、やめてください』
     黒い犬の、爛々と光る赤い目を見れば、声が聞こえてきてしまう。ちっぽけで、やせっぽっちの子どもが懇願する声が。
    『私たちが清めてあげよう、……、穢れた子よ』
     汚らしい人間の腕が子どもの身体を抑えつけて、その身体を暴く痛みと恥辱の記憶が。
    『ああ、ノースディン……、なんて、なんて汚い……、』
     ひゅっ……、息を呑んだ瞬間、黒い犬はノースディンの首筋に喰らいついていた。飛びつかれた勢いに負けて倒れていきながら、耳元に聞こえるのは侮蔑の露わな誰かの声。
    『汚い、汚らわしい……、血と氷に塗れた男』
    『所詮元人間……。お前は、汚らわしく悍ましい』
    『汚らわしい、吹雪の悪魔め』
     その中に、知っているはずの、優しい声が混じった時。ノースディンは、彼らがそんなことを言う筈が無いと心を乱した。
    「っ、……、そんな、」
     綻びは、崩壊を生む……。それは、精神を壊す魔性による、支配のはじまり……。
     犬の形をしていたものが形を変えて男の腕となり、ブラッグドッグの右手に納まった時。ノースディンは、その掌爪が食い込むほど首を戒められて藻掻いていた。明らかに正気の欠いた顔で、呼吸を失い、唇を震わせる……。そんな男を見つめて、ブラッグドッグは穏やかな声で語り掛ける。
    「さて、坊や」
     かつて、古き血に名を連ねていた男は、底なし沼のような眼でノースディンを覗き込む。
    「お前の奥深くまではいらせておくれ……。私はね、憎たらしいドラウスに復讐がしたいんだよ」


     そして、悪夢が始まった。
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