ネタ帳振り返ってたら出てきた。一緒に暮らそうの蛇足。
本丸で実福に遭遇してぇと思って書き始めたのに弟のガードが固かったので供養。
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とある審神者には少し気掛かりがあった。
長船派の祖、福島光忠と実休光忠に本丸の外れにある空き部屋を与えていることだ。希望があったとはいえ、前線に立つ男士たちを粗末な場所で過ごさせるのは申し訳ないと常に考えていた。
そんな本丸の主人に朗報が届いたのは八月末のこと。
「大阪城がキター!!」
時の政府からの通知を手に審神者は叫んだ。増築資金を獲得するチャンスである。すぐさま二振りに知らせよう。
本丸の端にある福島と実休の部屋まで駆けて行く――つもりだったが途中で燭台切に止められた。
「こら。廊下を走ったら危ないよ」
「光忠! 来月、大阪城に行けるよ!」
「嬉しそうだね。僕はあんまりだけど……」
「だってふたりに知らせないと!」
「誰に?」
「光忠のお兄さんズに! これで新しい部屋を増やせる!」
意気揚々とする審神者に対して燭台切は苦笑いである。
「ああ……あのふたりは今のままで良いんじゃないかな」
「え? 不便だと思うんだけど……」
「大丈夫。それより僕、新しい鍋が欲しいんだよね」
「ええ?! こないだ買ったじゃん!!」
「こないだのは中華鍋。今度、圧力鍋で良いのが出るんだって」
燭台切がカタログを差し出すと審神者は唸りながら手に取った。
上手く話が逸れたみたいだと、燭台切は密かに安堵した。
(主くんにダメって言われたらふたりに買ってもらおうっと)
二振りの仲を知る燭台切はにこりと笑いながら審神者を厨へと誘った。