過保護レムの世界***
僕の恋人は、とても愛らしい人だ。
彼女は朝がめっぽう弱く、起こしてもすぐにこてんと二度寝してしまうし、僕の料理を見て、食べる前から嬉しそうに笑ってくれる。僕が提案した擬知体取扱者の資格を取るために日々努力してくれているし、模擬試験で良い点が取れるとニコニコと報告してくれる。
半年前、D.Q.O.を降りるまでは、彼女はかなり気を張っていたのだと思う。ループを繰り返していることはもちろん、記憶を失っていることで、自分を保ちながら生きるのに必死だったのだと今では分かる。
彼女は船を降りてから少しずつ、肩の力が抜けていったように感じる。船にいた時よりも輪をかけて朗らかな性格になり、表情が豊かになった。
そんな彼女の変化が愛おしいと思うと同時に、どうしようもなく怖くなる僕がいた。今は資格取得のために家に篭っている彼女だが、もし資格を取得したらいずれは働きに行くようになってしまうのだろう。そうすれば、彼女を好きになる人もたくさん出てくるはずだ。沙明さんのように、遊びで近づく人もいるかもしれない。彼女は、僕と違って凄く魅力的な人だから。
今が幸せなほど、終わる時を想像して怖くなる。
以前、彼女が早朝にベッドからいなくなったことがあった。結論としては、リビングで寝落ちていただけだったのだが、それだけのことで、世界が反転して地獄へ落とされる心地だった。
彼女がどこかへ消えてしまったら、僕は耐えられない。
絶対に彼女を失わないようにしようと誓ったのは、記憶に新しい。