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    しんどうゆか

    8月1日にチェリまほに再燃してしまった、しがない文字書き。本垢TLに流れてきた、バズった原作第1話(でんせつのはじまり)から追っていました(途中ブランクあり)。豊田先生のファンをしつつ、自分でもこそこそと文字を書いています。自給自足が楽しい。気に入る作品があれば嬉しいです。

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    しんどうゆか

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    チェリまほ94話の予告で、久々に安達の弟・和也くんの登場か……? にワクワクし過ぎて待ちきれなくて、気が付いたら、こんなド鬱な話書いていたんですけど、何ででしょうね……(聞くな)
    ええ……死ネタです。作中で安達が死んじゃいます。苦手な方、本当にごめんなさい。あと世界の理不尽さについて私的解釈で書きました。(長くなったので本文に続く)
    黒沢視点の話です。

    #チェリまほ
    #くろあだ
    blackFats
    #死ネタ
    newsOfADeath

    思い出のあとさき(キャプション続き)
    第1話から追っていたとはいえ、ブランクがあり、チェリまほ新規に近い人間なのと、こんな話、世の中にn番煎じにあると思ったんですが、私がくろあだで読みたかったから書きました。既に似た話があったら申し訳ないです。黒沢の心情を考えると、とても辛かったけど、書きがいはありました。
    くろあだ、前世でも今世でも来世でも幸せになってほしい(どの口が言う)。ちなみに私、伊藤左千夫の野菊の墓がめちゃくちゃ好きです(突然の性癖暴露)。あと直近でミスチルのHANABI聴いてました。


    ――――――――――――





    俺たちの穏やかな日常が、あんな形で終わりを迎えるとは想像もしていなかった。







    口下手で、分かりやすい言葉では、あまり表さないけれど。だけど、何気ない一言、さり気ない行動で、溢れる愛を示してくれて。
    その心に触れる度、この人を好きになって良かったと、愛して良かったと、俺は心から思ったんだ。

    それなのに。世界はなんて、残酷なのだろう。






    ある年の休日、安達と一緒に街に買い物に出かけた先で、暴走した車との不幸な遭遇を果たしてしまった。
    白昼の街中は騒然となった。怪我人が複数発生しているようで、悲鳴もあちこちで聞こえ、それが輪をかけて、その場の混乱の渦を助長していた。

    暴走する車が迫る中、近くの横断歩道の真ん中で、震えて立ちすくむ母娘がいた。認識して次の瞬間、俺の隣にいたはずの安達が、その母娘の元へと駆け出していた。
    「大丈夫ですか! 早く逃げて!」
    無理やりに母娘を歩道のほうへ押し出すと、一瞬安達は安堵の表情を見せた。だが、時間は止まってなどくれない。
    「安達……!」
    俺が叫んだのと同時だった。
    「あ……」
    暴走した車は非情にも、安達の身体を軽々と跳ね上げ、その後20メートルほど先の電柱にぶつかり、ようやくその動きを停止した。
    現場は更に騒然となった。目の前で人が跳ねられたのだ。当然だろう。
    俺も決して認めたくなどなかった。だけどーー
    唇を噛み締め、脇目も振らず、俺は安達の元へと駆け寄った。

    ついさっき、あんなに凛々しく人助けをしたばかりなのに。その身体から生気がみるみる失われていく。ぐったりと倒れ込んだままの姿を目の当たりにして、俺はサアっと血の気が引いていった。見れば、顔や頭に擦り傷はあったけれど、素人目には、他に目立った外傷は見受けられない。ただ、あの猛スピードで走っていた車に跳ね飛ばされたのだ。全身をあれだけの力で激しく打ちつけたのだから、動かさないほうがいい。
    そんなことが頭に過ぎるが、気が動転すると、学校や会社で受けてきたはずの救命講習の内容が、一切出てこなくなる。
    それでも、周りの人たちが警察や消防に通報してくれた。救急車が到着する寸前、俺の呼びかけに、ほんの少しだけ、目を開けてくれた。そして掠れた声で、ある一言を俺に向かってつぶやいた。
    到着した救急車に乗せられ、近くの救急病院に搬送されたが、命を繋ぎ止めるには……間に合わなかった。
    あれだけ直接的な愛を伝えてこなかった安達が、最期に俺に残した言葉が「黒沢、愛してる」だった。






    葬儀は家族葬で執り行い、火葬が済んだ後、迷った末、遺骨はご両親へお渡しした。生きていた頃は、安達の全てを独占したかったけど、流石に、歳若くして逝った人間の、この世に存在した証を、俺一人が独占する気にはなれなかった。

    それからの俺は一層、仕事にのめり込んだ。豊川の社屋で過ごした時間も、空間にも、安達との思い出が詰まっているから。最初のうちは、安達の声の幻聴が聞こえたり、幻覚が見えてしまって辛かったけれど、この会社を離れるという選択肢は俺にはなかった。

    安達を喪って傷が癒えるはずもないのに、周りは放っておいてなどくれない。一人身になった俺に、上司がこぞって縁談を持ちかけてくる。結婚指輪のアピールにより鳴りを潜めていた会社の女の子たちも、何故か再びアタックしてくるようになった。
    だけど俺は、それに一切取り付かず、断り続けている。
    俺が愛した安達の代わりなんて、他の誰もなれやしないのに。


    相も変わらず、同性同士で結婚することが叶わないこの国で、俺と安達の関係は、あくまで提出した書類の区市町村に認められたパートナー同士だった。この国において、俺たちの関係を正式に証明出来る、確固たるものなんて何も存在しない。
    かつて、パートナーシップ宣誓書を役所に出しに行った帰りのこと。
    「前に調べてた時から思ってたんだけど。同性カップルだから駄目とか、異性同士だからOKとかじゃなくてさ。シンプルに好き同士で結婚出来ないのって、そもそも不合理だし、おかしいよな」

    そこでつぶやいた安達の言葉が、今でも耳に残っている。
    婚姻の問題だけじゃない。
    俺は、自分で言うのも何だが、見栄えのいい顔でこの世に生まれてきた。
    だけど、時折、顔だけが取り柄などと揶揄されてしまうこともあった。
    一方、安達は、真面目で義理堅い、とてもいい奴だったのに、その心持ちが重いと言われたり、鈍臭い、影が薄いと陰口を叩かれたりしたそうだ。
    人より足りないともっと努力しろだの、落第の烙印を押され、多く持っていると妬まれ、揶揄される。
    「この世界、理不尽が多いと思わないか、安達」
    在りし日の笑顔の遺影に向かって話しかけながら、俺はため息を吐く。
    (纏わりつく、この生きづらさの正体って、何なんだろうな)
    しばらくの間、遺影と見つめ合った後、俺はぼんやりと、立ち上がる。冷蔵庫から、安達が好きだった銘柄のビールの缶を取り出し、ふらふらとベランダの側に行く。座り込むと、そのビールを飲みながら、かつて安達と一緒に見上げた、月や星空を眺めるんだ。



    安達とたくさんの愛を交わし合ったベッドの上で一人、俺は浅い眠りにつく。すると決まって、安達は俺の前に現れてくれる。
    夢の中で安達は「何がなんでも生きろ」と語りかけてくる。
    俺は止めどなく流れる涙と共に、あの時俺が代わりにならなくてごめん、守れなくてごめん、と繰り返す。
    泣きじゃくりながら「いつか、必ず会いに行くから。それまで待っていてほしい」と言う。すると安達は、どこか困ったような、呆れたような顔をして「わかったから、もう泣くなよ。枯れちまうぞ」と返すんだ。そして最後には「ったく、しょうがねー奴だな」と言いながらも、服の袖で俺の涙を拭いながら微笑んでくれる。
    「黒沢がうんと年取るまで待っててやるから、約束な」と付け加えて。

    安達と一緒に過ごした思い出と共に、俺は今日も生き長らえている。
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    しんどうゆか

    DONEどスランプ中のしんどうです。こんばんは。
    昨年12月に判明した首のヘルニアの症状も出てて絶賛ヤバみです。季節の変わり目め……ぐぬぬ。でも生きてます。浮上できてなくてすみません。
    映画や単行本の感想を書きたいのに書けない……そしてドルパロ書きたいと迷走している時に、別のアプローチでアウトプットしようとして出来た作品です。別名・ポエマー黒沢三部作。
    あなた様のお好みに合いましたら幸いです。
    アンコールの音(ね)が聞こえる。⚠️ATTENTION⚠️
    私が入浴中に思い付いた「アンコールの音(ね)が聞こえる。」をキーワードにして書いた小説3作品です。ドルパロ・原作本編・学パロの順になってます。話は繋がっていません。フィーリングなので許してください。






    @アイドルパロ

     俺達を呼ぶ、アンコールの音が聞こえる。
     ここは東京ドーム。5万人という超満員のオーディエンスがひしめき合う、国内屈指のコンサート会場。
     本編のセットリストを歌いきり、一度楽屋に戻った俺達は、モニターでその様子を目の当たりにし、込み上げて来るものがあった。

     有名漫画家のシナリオが原案の「アイドル×BL」ドラマプロジェクトが発足してから約5年(ドラマ放映と同時に、原案者本人によるコミカライズも行われた)。
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    しんどうゆか

    DONEチェリまほ95話を読んで、夏歌ベストみたいなのを聴いてたら、子供の頃に横須賀の海で、くろあだ出会ってないかなって妄想が走り出したので書いてみました。しんどう(作者)の妄想多分なことを留意の上お読みください。黒沢視点のお話です。イメソンは「secret base〜君がくれたもの〜」とか「LIFE」といったザ・夏歌です。海はいいですね(豊田先生の受け売りですみません)。
    運命という名の魔法 子供の頃、俺は家族と一緒に、地元・横須賀の海へよく出かけて行った。
     ある年の夏に、その海で出会った、黒髪で色白の、憂いを含んだ表情がやけに印象的な男の子のことを、今でもよく覚えている。

     横須賀の港は軍港として有名だから、観光客もたくさん来ていた。その中で、その子は周りの様子を気にすることもなく、食い入るように、ただ海の方を見つめていた。
     邪魔をしてはいけないと思ったけれど、俺はどうしても、彼と話をしてみたいと思った。それで俺は、意を決して彼に話しかけた。
    「軍艦、好きなの?」
    「えっ……? あ……うん。好きだよ。カッコいいからな。……お前も好きなの?」
     突然話しかけられたことに、戸惑いを隠せないようだったけれど、彼は俺の質問に答えてくれた。おまけに彼は、俺に質問をしてくれた。だから俺は「うん、好きだよ」と返事をした。彼は何処となく照れ臭そうにして「そうなんだ」と返した。
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