命がけのわがまま 遊郭の外れ。古びた妓楼の貸し切った二階で密かに会うたびに、猗窩座は言う。
「お前はわがままだな、杏寿郎」
くたびれた絹の布団の中で、裸の右太腿の内側に舌を這わせながら、やはり今夜も同じことをこの鬼は言う。初対面で殺しかけても無理矢理に鬼になれ、とせがんであげくに体まで強引に開かせた輩にそんなことを言われる筋合いはない。けれど閨の中でも饒舌なこの鬼は、こちらが黙っているのを
いいことにいつもの不満を口にした。
「鬼にもならず、仲間も裏切らないし、俺と逃げることも嫌だという。そのわりにここで俺と会うことも止めない。ついでに、」
あっ、と思わず声が出た。少しざらついた鬼の舌で、魔羅をねっとりと舐め上げられたらからだ。上から下へ、まるで砂糖菓子でも味わうように。
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