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    まみや

    @mamiyahinemosu

    好きなように書いた短めの話を載せてます。
    現在は主にDQ6(ハッ主)、たまにLAL。

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    まみや

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    DQ6、ハッ主。ED後、結婚して新婚になったふたり。ハッサンの仕事を手伝っている(ようないないような)主の話。

    #ハッ主
    masterOfTheHack
    ##6(ハッ主)

    家を建てる レイドックの国には、ひとりの有名な大工が住んでいる。
     名をハッサンという。
     サンマリーノの出身で、父親も大工。かつて、レイドックの王子であった勇者と共に旅をし、世界を救った後、家を継いで自身も大工となった。
     そしてレイドックに新しい王が即位し、レイドックの城の建て替え工事を任されるにあたり、レイドックの城下町に自らの店を構えた。
     父親も評判の大工だったが、見事に建て替えられたレイドック城を見て、父親を超えるほどの腕前だと評判となった上、なんとつい先日、レイドックの王と結婚し、王配となったため、興味本位の客まで増え、注文は引きも切らず、大工仕事の依頼は予約だけで数年待ち。
     おまけに、店にはたまに、彼の伴侶であるレック王がたまに顔を出すらしいという噂が広まり、店が開いていると、冷やかしや野次馬の客がしょっちゅう出入りするようになってしまった。

    「あーもう、ここは見世物小屋じゃねえっつーの! オレに頼みたい大工仕事がねえんなら帰ってくれ!」

    というのは、店の主である、最近のハッサンの口癖である。


    *****


    「おっ、今日は店にレック王がいるじゃねえか!? 今日はお城はどうなってんだい」
    「ああ、今日は大した用事もないからさ、王の仕事を父上と母上に代わってもらったんだ。母上はともかく、父上はもう歳だからさ、たまにはボケ防止に頑張ってもらった方がいいかなって」
    「はっはっは、前の王様をつかまえてボケ防止ときたか! こりゃ傑作だな!」

    「あら、レック王! ハッサンさんと仲良くやってんのかい? 喧嘩してない?」
    「してないしてない、超ラブラブだからご心配なく。今日も王の仕事を休んで店の手伝いに来たくらいなんだからさ」
    「えらいねえ、自分も仕事があるのに相手の仕事まで手伝うなんて。無理しないでね、体には気をつけるんだよ」
    「へへ、ありがと、おばちゃん」

    「レック王、ご機嫌麗しゅう。できた伴侶をもらわれてハッサン殿は果報者ですな」
    「そいつはどうも。…何か大工仕事の依頼? 結構待ってもらわないといけないんだけど、大丈夫かな」
    「いえいえ、仲のいいおふたりの姿を見ることができたら長生きできるらしいと評判でしてな、皆それ見たさにここに来とります」
    「えっ何それ、初めて聞いた。オレたちパワースポットみたいになってんの? アモールの滝の水みたいだな」

     はあ、とオレはひとつため息をつく。
     いつも大概だが今日は一段とひどい。

    「あーもう、だからうちの店は見世物小屋じゃねえっていつも言ってんだろ!? おまけにここは城の王の間でもねえから! レックの前に列作って喋りかけようとすんな! どうせレックとちょっと喋ってみてえだけの野次馬だろ、あんたら! もう、大工仕事の用がねえなら帰れ!」

     店の入り口の方に置いてある椅子に座って、ずらっと店の外まで並ぶ野次馬相手ににこにこしながら喋り続けるレックを見て、思わず叫ぶ。
     仕事場でやっていた作業を中断し、ほら、帰れ帰れ、と列に並んでいる人間を外まで追い立てると、皆口々に、「いいじゃねえか見たって減るもんじゃねえし」「レック王は相変わらずかっこいいねえ…」「いやあ寿命が伸びた」「ケチケチすんなよハッサンさん、あんた毎日見てるんだろ」、などなど、各々好き勝手なことを言ってくる。
    「うるせえ、他の奴らに見られたら減るんだよ! たまにはふたりでゆっくりさせてくれ! オレたちは新婚なんだ!」
     と思わず叫ぶと、皆はなにやら微笑ましいものを眺めるような暖かい目でオレを見、そして、「そういうことなら解散するか」「いやあ、いいもん見たな」と言って店を後にした。
     あとに残されたオレはちょっと恥ずかしくなってぼりぼりと後ろ頭を掻きながら、うう、と唸る。
     …まあ、しかしこれで野次馬も撃退したことだし、店に戻るか、とオレが扉に手をかけた時。
    「あ、あの、ハッサン王配殿下!」
    と誰かから声をかけられ、オレは驚いて振り返った。
     レックと結婚してから、城下町ではそうでもないが、城の人間からは仰仰しい呼び方をされるようになってしまった。昔、上の世界のレイドックの城では、皆に気安く、ハッサン、と言われていたのに。
     オレが振り返ると、そこには、オレやレックとそう年の変わらなさそうな若い男が立っていた。オレのことをそう呼ぶあたり、おそらく、城の兵士だろう。体も結構鍛えていそうだし。
    「おう、…レイドックの兵士か? ごめんな、オレ、まだ城の人間の顔と名前、覚え切れてなくてよ」
    「いえ、とんでもない、お気になさらないでください」
     そう言って敬礼するその兵士に苦笑する。鎧姿でもないから、今日は非番だろうに。
    「いいよ、そんな畏まらなくったって…お前、非番だろ? オレも今日はただの大工だから、あんまり気使うなよ。それで、何か用でもあるのか?」
     オレがそう聞くと、男は、はい、と頷いた。
    「あの、実は……家を建ててほしいと思ってまして」
     ああ、…やっとまともな客が来た!


    「あれ、どうしたの? 今日は」
    「あっ、レック王! やっぱり今日はこちらにおいででしたか、お休みですもんね」
     男を伴って店の中に戻ると、レックはすぐに男のことがわかったようで、ニコニコしながら話しかけた。男もほっとした様子でレックに話しかける。
     まあ座れよ、と椅子をすすめると、男は素直に椅子に腰掛ける。
    「なんだよ、知り合いか? まあ、城の兵士ならそりゃそうか」
    「うん、…いや、実は、ハッサンに手紙送ったりするの、よく頼んでたりしたんだ。こいつもサンマリーノに恋人がいるからって、ついでに」
    「そうなんです、いやあ、初めて頼まれた時は本当に緊張しました。でも無事におふたりがご結婚までされて……俺、本当に嬉しいです」
     そう言って、男はちょっと目を潤ませる。
    「そうか、そりゃあ世話になったな、ありがとよ。……ところで、家建てたいってのは」
    「あっ、はい、ええと、実は、その、サンマリーノにいる恋人と近いうちに結婚するつもりなんですが、レイドックにふたりで住む家が欲しいと思って、それで、彼女が新しく建て替わったレイドックのお城を見て、すごく素敵だって言うので、…ハッサン王配殿下に、お頼みできないものかと…。いや、俺だって、殿下がお忙しいのも、大工仕事の予約がとんでもないことになってるのもちゃんと知ってはいますから、無理なら無理って仰ってください、諦めますから」
     依頼してきただけでもうすでに諦めた様子でしょげ返る目の前の男を見て、オレは、うーん、と腕を組んで考える。
     なんとかしてやりたい。レックが、そして間接的にオレも世話になった相手だし。
     ただ、他の客の仕事を放ったらかしにすることはできないし、かといってまともに待ってもらったら、完成にどれだけかかるかわかったもんじゃねえ。結婚したのにいつまでも住む家がないんじゃこいつ自身が、それにお相手だって困るだろう。オレの腕を買ってくれてるのはそりゃ嬉しいが。
     うーーーん、と散々悩んだ末に、オレは、最終手段に出ることにした。
    「…………おい、あんた、手紙出す用事あるか、サンマリーノに」
    「えっ? あ、はい、また恋人にそのうち出しますけど」
    「背に腹はかえられねえ、…親父に手紙書いて頼んでみるから、それで勘弁してくんねえかな」
     世界を救う旅を終えてから本格的に始まったオレの大工人生、実は城の建て替えをしていた期間がかなりの割合を占めている。通常の工期に加えて、細かくレックの希望を聞いてやっていたら、なんやかんやと長くなってしまった。
     勿論普通の大工仕事も一通りできるが、そういう仕事に関しては親父の方が経験があるし、特に普通の家の建築に関しては正直、親父の方が詳しいだろうし、腕も上だと思っている。悔しいが。
    「家の設計図だけはあんたらの希望を聞いてオレが引くよ。その後は親父に任せて、実際の工事もやってもらう。オレもたまに顔出すからさ。それならまだ待たせずに済む。…結婚してえんだろ、あんまり相手待たせるのはよくねえよ。また手紙書いたらレックに渡しとくから、レックから受け取って、サンマリーノに出しといてくれ」
     そのオレの言葉を聞いて、「わ、わかりました! ひええ、今度は王配殿下の手紙をお預かりするのか、大変だ!」と男は悲鳴を上げた。それを聞いてオレとレックは思わず笑う。
     たぶん、昔、レックがお前に託してたオレへの手紙の方がよっぽどとんでもねえ手紙だったと思うぜ。万が一変なところへ届こうもんなら、うっかりレイドックの国を巻き込んだスキャンダルに発展してたかもしれねえし。
     そういう意味ではこいつは信頼のおける奴なんだろう。ちゃんとレックのために、おそらく誰かに言うでもなく、きちんと手紙を送ってくれていたわけだし。
    「…いい家にするよ。あのさ、近いうちに、あんたとその、お相手のふたりで、仕事が休みの時にでも顔出してくれよ。できるだけ希望に沿うように設計するからよ」
    「は、…はい! ありがとうございます、嬉しいです、お忙しいのに、設計図を書いていただけるなんて……さすが王配殿下、レック王が見初められただけのことはある、なんてお優しい……」
    「ちょっと? 言っとくけどハッサンはオレのだからな、変な目で見ないでくれる?」
    「ええっ!? いや、そんなつもりは!!」
    「おいレック、こんな真面目そうな奴に変な絡み方すんじゃねえよ。…すまねえな」
    「い、いえ! ありがとうございます、本当に…また、近いうちに、ふたりで来ますので、よろしくお願いします!」
     男はそう言って、何度も何度もオレに頭を下げながら店を出て行った。
     その姿を見送ってから、レックがぽつりと呟く。
    「……いいなあ」
    「ん? 何が」
    「新居っていうの? ……オレはずっと城暮らしだし、結婚してからハッサンも城に住むようになったけど、ふたりだけの家って、なんか憧れるよな」
    「……ここは? オレとお前しかいねえぞ」
    「だってここは、……ハッサンの店だし、そりゃたまに手伝いに来るけど、オレはここに住んでるわけじゃないから」
     そう言って、レックはオレの腕に身を寄せてくる。オレはそんなレックの体を引き寄せて、肩を抱いた。
    「いつか別荘でも建てるか、ライフコッドあたりに」
    「ああ、……いいなそれ、あそこは眺めもいいし、別荘建てるにはうってつけかも」
     へへ、と笑うレックの頬にキスを落としながら、今入っている仕事の予約を思い出す。あれがこれくらいかかって、たぶんあっちはこれくらい、そんでもってあの仕事は……
    「うーん、……もしやるとしたら、最速で5年後くらいだな、完成すんの」
    「あっはっは、気の長い話だな! …いいよ、それでも」
     いつか本当に作ってよ、楽しみにしてる、とレックが笑う。
     いつか。…昔なら、少し不安に思ったかもしれないその言葉も、今はもう大丈夫だ。きっと、ずっと、これからもオレはレックと一緒にいるだろうから。
    「おうよ。…しかしその前にまずは親父に手紙か、……うーっ、嫌だな……普通の家の設計図、下手なもん引いたら絶対死ぬほどダメ出しされるに決まってるぜ……考えただけで気が重い、気合い入れてやらねえと」
    「大変だな、お父上が厳しいってのも…まあ、うちはもうちょっとしっかりしてほしいけど。……大丈夫かな、一般の人への謁見……最近気が緩んでるのか前より性格がちゃらんぽらんになってきてる気がしてさあ、心配なんだよ、失言しないかどうか。まあ隣に母上がいるから大丈夫だとは思うけど」
    「……昔からわりとちゃらんぽらんだっただろ、お前の親父さん。まあ、夢の中だけど、遊び人みてえだったし」
    「……まあ、確かにな。今に始まったことじゃないか」
     お互い苦労するな、とオレが言えば、本当だよ、と言ってレックも笑う。そんなレックを見ながら、ああ、幸せだな、としみじみ思い、オレも笑う。そしてオレは、レックの体を強く抱きしめた。
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