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    まみや

    @mamiyahinemosu

    好きなように書いた短めの話を載せてます。
    現在は主にDQ6(ハッ主)、たまにLAL。

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    まみや

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    DQ6、ハッ主。ED後少し経ってから。サンマリーノのハッサンの実家にて。

    #ハッ主
    masterOfTheHack
    ##6(ハッ主)

    バカ息子 ハッサンは嘘をつく時、目線をさまよわせる。
     ……とは、かみさんの言だ。
     オレにはハッサンのそんな細かい癖はよくわからない。ついこの前までずっと家を出ていたし、いまだにまともに会話するのが仕事の時くらいしかないからだ。
     仕事の時に、ハッサンに嘘をつかれたことはない。オレが怒ると、文句を言い返されたり、悔しそうな顔をしたりしてくることはあっても、誤魔化してきたことは一度もない。
     基本的に、真面目なんだろう。短気な所はあるが、それも、家を出る前よりかなりマシになった。前なら反射的に言い返してきただろう場面でも、ぐっと我慢して一度神妙な顔で考えてから口を開くようになった。それに、早く一人前になりてえから、と言って、ずいぶん熱心に大工仕事に取り組むようになった。
     ハッサンには小さい頃からずっと、オレが一対一で大工仕事を教え込んだ。どこかよそへ修行に出すかとも思ったが、…生憎、自分以上の腕を持った大工に心当たりがなかった。
     たぶんそれがよくなかった。似てしまったのか、お互い短気な性格同士衝突して、あいつは家出して、…まあ、結局、外の世界に出て、大魔王を倒して、成長して帰ってきて、ちゃんと大工仕事に励むようになったんだから、人生何が役に立つかわかったもんじゃねえな、と今になってしみじみ思ってしまう。
     ハッサンと一緒に旅をしてくれた、勇者で、レイドックの王子様をやっているレックさんには、感謝してもしきれない。本当に世話になったことだろう、あの頃の、うちのバカ息子は。
     オレが、うちの家に遊びに来たレックさんにそう言うと、レックさんは目を丸くした。
     運悪く、ハッサンは外出中だ。「ごめんねえ、きっとすぐ帰ってくるから待ってておくれよ」とかみさんに言われ、茶を出され、それを飲んでいるレックさんに、オレがそう話しかけたのだった。
    「いや、そんなことないです! オレの方が、ハッサンには本当に世話になって、ずっと助けてもらってたんです。ハッサンがいなかったら、大魔王だって倒せなかったかも」
     そう言って、レックさんはニコニコと笑う。……ああ、この人が、こういう、人のいい、殊勝でかわいげのある性格だったから、きっとハッサンとも上手くやってくれたんだろうな。
    「それに、いつか、オレが王様になったらレイドックの城を建て替えてくれるって」
    「……は!? ハッサンが、城の普請を!?」
    「はい、自分に任せてくれって。……オレ、その日が来るの、すごく楽しみにしてるんです」
     初めて聞くその話にオレは思わず目を剥く。城の普請なんて、そんなの、普通のそこらの大工がするような仕事じゃねえ。とびっきり腕の良いベテランの親方が、沢山の、これまた腕の良い職人を束ねてやるもんで、…いくら建て替えとはいえ、ハッサンみたいな若造なんざ、門前払いもいいところだ。
     オレの仕事をずっと小さい頃から見てきたハッサンに、それがわからないはずがない。
     ハッサンは、仕事に関して嘘はつかない。
     たぶん、……本当に、やってやろうと。
     このレックさんが、レイドックの王様になったら、本当に、自分で城を建て替えてやろうと、思って、……もしかしたらそれで、こんなに今、熱心に頑張って。
     ああ、本当に、……バカ息子だよ、お前は。
     でも、大魔王を倒すほどのバカなら、……もしかしたら。
     その時、突然、バタン!とすごい勢いで扉が開いた。見れば、走ってでもきたのか、少し息を切らせているハッサンが玄関に立っている。きょろきょろと家の中を見回し、レックさんの姿を見ると、大股でそちらに近づいた。
    「レック! ああ、もう来てたのか! ごめん、待たせた! ちょっと用事で出かけてて」
    「おかえり、ハッサン。大丈夫だよ、少しお父上と話してたところ」
    「親父と!? ……何を」
    「ん? ハッサンがカッコいいって話だよ」
    「な、何!? やめろよ恥ずかしい! 親父、おふくろ、オレ、これからレックと出かけて晩飯食って帰ってくるから、夜、先寝ててくれよ!」
     じゃあな、ほら、早く行くぞ、と照れたようにレックさんの背中を押しながらハッサンは慌ただしくまた家を出ようとし、そしてレックさんは笑顔で、お邪魔しました、と礼儀正しく挨拶して、そしてふたりは家の外へと出ていった。
     ふたりの後ろ姿を見送ると、かみさんが近くの椅子に座り、深くため息をつく。
    「……レックさんは本当にいい人だねえ。ハッサンのこと、あんなに良く言ってくれて……あの子、逆にレックさんに迷惑かけてなきゃいいんだけど」
    「うーん…まあ、さっき見た感じなら大丈夫そうな気がするがな」
    「そうだといいけど、…レックさん、王子様だろ? もう、ハッサンがろくでもないこと教えたりしてないかってひやひやして…。一度ね、ハッサンに言ったことがあるんだよ、レックさんに変なこと教えたりしてないだろうね、って。そしたらあの子、してないって言うんだけど、目をきょろきょろさせてさ。あれは絶対嘘ついてるよ、嘘つくと昔っからそうなんだから」
    「ははっ、そうかい。でもよ、もう今更しょうがねえ話だろ。あいつら、長いこと一緒に旅してたっていうんだし、それはそれで楽しいんじゃないのか、王子様としちゃ、あいつみたいなのとつるんで遊ぶのも刺激があって」
    「もう、そんな気楽に笑って! あんた、下手するとレイドックの国の未来がかかってるんだよ! もしそんなことになったら、レイドックの王様と王妃様に一体なんてお詫びすればいいのか…」
     さて。
     今から、20年以上も前の話。
     オレが、かみさんに結婚してくれってプロポーズした時、かみさんに言った言葉がある。
    『結婚したら、どんなのでも、好きな家作ってやるぜ。どういうのがいい?』
     それを聞いたかみさんは、嬉しそうに笑って、……そう、さっき、ハッサンが城を建て替えてくれるのを楽しみにしているんだと言って笑っていた、レックさんみたいな、幸せそうな顔で。
     ああ、……本当に、本当にお前はバカ息子だ。
     どうしてそんなこっ恥ずかしいところまでオレに似るんだ、お前は。……でもきっと、オレが作ったこの家よりも、もっとすごいものを作っちまうんだろうな。
     なんたって、相手はレイドックの王子様と、そのお城ときたもんだ。とんでもねえよ、……本当に、とんでもねえ相手と、とんでもねえ建物を選んだもんだよ。
     超弩級のバカじゃないと、そんなどえらいこと、とてもじゃないができないだろう。
     お前はすごい。
     誇るべきバカ息子だ、ハッサン。
    「うーん、……大工仕事、明日からハッサンにはもっと難しいこと教えねえとな、もたもたやってたら何年かかるかわかったもんじゃねえ」
     城の普請を任せられるほどの腕をさっさとつけてやらないと、レックさんが王様になるのに間に合わないかもしれない。いくらバカ息子とはいえ、…そんな格好悪いことはさせられない。
    「えっ? そんな、厳しくしたらまた家出したりしないかい」
    「もうそんなことしねえよ、あいつは。……たぶんな」
    「たぶんって、あんた……」
    「大丈夫だよ、その時はレックさんに、ハッサンをどうにか家に連れて帰ってきてくれないかって、2人でレイドックに頼み込みに行こうや。レックさんの言うことならきっとハッサンも聞くだろうよ」
     たぶんお互いに惚れてるからな、とは、心配性のかみさんには、まだ言わないことにした。
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