Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    まみや

    @mamiyahinemosu

    好きなように書いた短めの話を載せてます。
    現在は主にDQ6(ハッ主)、たまにLAL。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💜 💙 😘 👍
    POIPOI 62

    まみや

    ☆quiet follow

    DQ6、ハッ主前提、ED後少ししてから。レイドックのモブ兵士が見たレックの話。ハッサンは直接は出てこない。

    #ハッ主
    masterOfTheHack
    ##6(ハッ主)

    恋文『久しぶり、元気にしてるか?
     仕事はどう? 変な奴に絡まれたりしてない? お前、可愛いから心配だよ。気をつけてな。
     俺はレイドックの兵士生活、だいぶ慣れてきたよ。最初は緊張したけど、先輩たちは皆いい人だし、城の人たちや、王さまや王妃さまも、いつも優しく接してくださって、毎日楽しくやってるよ。
     そうだ、王子さまの話はもうしたっけ? たまにお話しするって言ったっけな? 最近、訓練所でちょくちょく稽古をつけてもらうんだけど、本当に強くて、フランコ兵士長でも敵わないくらいなんだ。さすが、世界を救った勇者さまだ。俺もいつか王子さまくらい強くなりたいな。
     近いうちに休みがもらえそうだから、そうなったら定期船に乗ってそちらに行くよ。早く会いた』

    「おっ、何書いてるの? 手紙?」

     頭上から降ってきたその声に、俺は驚いて顔を上げる。見上げればそこには、青い髪の。
    「れ、レック王子様!」
     申し訳ありません、気がつきませんでした、と俺は慌てて椅子から降り、敬礼する。
     ここはレイドック城の兵士控室。次の見張りの交代要員として働くためにやってきたけれど、気合を入れて早く着きすぎて、暇を持て余し、他に誰もいないので、手紙を書いていたのだ。
     何を隠そう、恋人に送る手紙だ。サンマリーノの港で働いている、とっても可愛くて優しい、自慢の彼女だ。
     ちなみに俺はこの前レイドックで兵士になった、一番の新人兵士。
     ……そして、俺の目の前にいるのは。
    「いいよ、気にしないで。散歩してるだけだし」
    「いっ、いえ、そういうわけには!」
     この国で知らぬ者などいない、誰あろう、レック王子様。レイドックの王様と王妃様を魔王ムドーの呪いから解放し、さらに大魔王デスタムーアを倒し、世界に平和をもたらした勇者様。なかなかの美男子で、剣と魔法の腕は超一流。これまでの世界を救う旅を経て、他諸国や民族からの覚えもめでたく、次期国王に即位されるのはいつのことかと、国民から大いに期待を寄せられている、レイドックの希望の星。
     …なのだが、当の本人はずいぶん気さくな方らしく、よく城の中や町の中をウロウロしては誰かに話しかけたり、兵士の訓練に混ざってみたりして、皆を驚かせておられる。
     ちなみに、レック王子様は、公務の時以外は軽装で、ぱっと見王子様だとはわからないいでたちをされている。なので、知らない人がたまにレック王子様を王子様だと思わずに話してしまって後で驚く、ということがよく起こっている。
     俺も最初、兵士になりたてのころ、廊下で話しかけられて騙された。誰なんだかよく分からないが、「なんか緊張してるみたいだけど、大丈夫? でも兵士になったばっかりの頃って大変だしそうなるよな、わかるよ」と慣れない兵士生活を労ってくれて、嬉しくなってそのまま楽しく話をしていたら、先輩に後から小突かれた覚えがある。バカ、あの方は兵士じゃない、れっきとしたこの国の王子様だ、そんなに気安く喋るんじゃない!
     びっくりした俺は、次にレック王子様に話しかけられた時、俺なんかと話していただくなんて恐れ多い、他の人と話した方が、と言ったけど、でもレック王子様は、「ああ、別にそんなの気にしなくていいよ、オレが話したいだけだから」と、あまり気にした様子もなく、それからも変わらず気さくに俺に話しかけてくれた。
     レック王子様は俺と歳も近いし、なんとなく、同年代の気の置けない友達みたいな感じで、俺も話すのは楽しかった。だから、俺は先輩にバレないように、レック王子様がお暇そうで、俺もそんなに仕事がない時に、たまに雑談をするようになった。今のところ見つかってはいない。
    「で、それ、誰への手紙なの?」
     と、レック王子様が俺の書いていた手紙を指差しながら聞いてくる。恥ずかしさで少し顔が熱い。しまった、こんなところで書くんじゃなかった、よりによってレック王子様に見られるだなんて…。
    「あ、あの、…恋人への手紙です」
     俺がそう言うと、レック王子様は、えっ、と驚いたような声を出した。
    「恋人いるの? どこに住んでるんだ? 手紙送るってことは、遠い所?」
    「あ、ええっと、そうなんです、サンマリーノに住んでて、港で働いてるんですけど」
    「………へえ」
     そっか、と、言って、レック王子様は考え込むそぶりを見せ、そして、少し経ってから再び口を開いた。
    「……あの、ひとつ聞きたいんだけど、手紙って、どうやって送るんだ?」
     レック王子様のその質問に、俺は驚いた。手紙を送りたいんですか、と聞くと、うん、と頷かれる。
    「手紙はですね、商人に頼むんですよ。商人は、あちこちへ旅をしながら商売をしてますから。俺はいつも、サンマリーノによく仕入れに行ってる馴染みの商人を捕まえて、お金を払って、手紙を届けてもらってます」
     レック王子様は、その俺の説明を聞いて、へえ、と感心した様子で相槌を打った。
    「普通はそうやって送るのか。……オレたち王族の書状はいつも、内容に問題がないかどうかチェックされるから、ちょっと、個人的な内容の手紙を送りにくくて」
    「ははあ、そりゃあ気を使いますね」
     王子様ってのは大変なんだな、と俺は心の内で少し同情した。
    「……あのさ、オレもサンマリーノに手紙を送りたいんだけど、もし迷惑じゃなかったら、その手紙のついでに頼んでもらえないかな?」
     レック王子様がそう言うので俺は驚いた。
     王子様が手紙を、俺に託される? そいつは責任重大だ…!
    「ええっ、俺でいいんですか!? いや、そりゃ、サンマリーノへの手紙ならこれから出しますから、勿論一緒に送りますけど」
    「本当? ありがとう! サンマリーノに、……仲間が、いて、一緒に旅してたんだけど、そいつに手紙を送りたいんだ」
     レック王子様の、サンマリーノの仲間。…ああ、いつだったか、彼女が言ってた気がする。大魔王を倒す旅に出た時に一緒に戦った勇者様の仲間たち。その中の一人が今、サンマリーノで大工さんをやっているのよ。一度見たことがあるけど、すごく強そうな人だったわ、確かに大魔王も軽く倒しちゃいそう、と。
    「わかりました、じゃあ、書けたら俺に渡してください。また、商人に頼んでおきますから」
    「わかった、ありがとう。じゃあ、書けたら渡すよ。よろしく頼む」
     レック王子様はそう言うと、じゃ、と手を振って、足早に去っていった。早速手紙を書くつもりなのかもしれない。
     俺は、へへっ、とひとりで笑った。あのレック王子様に頼りにされるだなんて、なんだか嬉しいな。そうだ、俺も早く手紙を書こう。レック王子様に先を越されたら大変だ。
     
     数日後、レック王子様は、「これを頼みたい」と言って、俺に一通の手紙を渡してきた。
     綺麗な青い封筒に、流暢な字で、『サンマリーノのハッサンへ レイドックのレックより』と宛名が書かれたその手紙を受け取って、俺は馴染みの商人のところへ走った。自分の恋人への手紙と、レック王子様の大事な手紙を、絶対に、くれぐれもなくしたりしないようにと念押しして託し、それから2週間ほど経ったころ。
     その商人から、「ほら、お待ちかねの恋人からの手紙だよ。あ、そうそう、レックさん宛のやつも渡しとくからよろしくな」と言われて、俺は手紙を2通受け取った。
     恋人からのものと、そして、豪快な字で、『レイドックのレックへ サンマリーノのハッサンより』と宛名に書かれた、明るい紫色の封筒のもの。

     俺は走った。
     返事が来た、とにかくレック王子様に早くこれを渡さないと!
     城の中を一生懸命走り回って探したら、レック王子様はちょうど訓練所でひとり、剣の素振りをしているところだった。
    「レック王子様!」
     俺が名を呼ぶと、レック王子様は、振り返って俺を見、ああ、と言って、剣を背中の鞘におさめ、俺の方へと近づいた。
    「そんなに慌ててどうしたんだ、何かあった?」
     そう言って不思議そうな顔でこちらを見てくるレック王子様に、来たんです、と告げる。
    「あのっ、返事が来たんです、これ!」
     俺がそう言って、商人から受け取った手紙をずいと差し出すと、レック王子様は、俺の手からその手紙を受け取った。
     そして、レック王子様は、その手紙に書かれている宛名を見て、本当に嬉しそうに、愛おしいものを見るような目をして、微笑んだ。
     そのレック王子様の顔を見て、俺は、ああ、と思わず声を漏らす。
     この顔を、俺は知っている。サンマリーノの港で、彼女に会った時、いつも彼女はこんな顔で俺のことを見て、会えて嬉しい、と言ってくれる。
     ああ、レック王子様は、きっと。
     ……この、手紙の主のことを。
    「あ、あの、レック王子様」
    「……ん? 何?」
     ずっと手紙を愛おしげに見つめていたレック王子様が、俺の顔を見る。
    「俺、王子様のためなら、いくらでも手紙送りますから、遠慮なく言ってくださいね、本当に、いつでもいいですから。商人をしばき上げてでもサンマリーノに運んでもらいますから、絶対」
    「え? あ、いや、そこまでしなくてもいいけど、……でも、ありがとう」
     これ、読んだらまた手紙書くから、その時にまた頼むよ、と言うレック王子様の頬は少し赤らんでいて、微笑むその顔は幸せそうで。
     ああ、どうかどうか、レック王子様の想いが通じますように。幸せになられますように。なぜだか泣きそうになりながら俺は神にそう祈って、天を見上げた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏😭🙏💕💕💕💕💘☺🙏🙏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works