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    まみや

    @mamiyahinemosu

    好きなように書いた短めの話を載せてます。
    現在は主にDQ6(ハッ主)、たまにLAL。

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    まみや

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    ハッ主。淫魔に襲われそうになるハの話(未遂)(淫魔パロとかではない)(???)。

    #ハッ主
    masterOfTheHack
    ##6(ハッ主)

    淫魔 宿屋の部屋の扉を開けたら、先客がいた。
     ベッドに座っていたそいつは、オレが部屋の扉を開けると驚いたようにこちらを振り向き、そして勢いよく立ち上がる。
    「あ、やっと帰ってきた! 遅いぜ、ハッサン」
     そいつはそう言うと、にっこりとこちらに笑いかけてきた。
     青い髪の男だ。オレより歳は若そうに見える。屈託のない、人のよさそうな笑顔にうっかりつられて笑いそうになる、が。
     いやちょっと待て、その、そもそも、この。
    「だっ、誰だよ!? っていうか魔物だよな!?」
     男の、頭から伸びた二本の角と、おそらくケツから生えている黒い悪魔のような尻尾が、目の前の男が人間ではないことを示している。
     そもそも、目の前の魔物がもし人間だったとしても普通におかしい。オレは旅の武闘家だが、一人旅で連れはいないし、知り合いにもこんな奴はいない。
     オレが迷わずとびひざげりの構えをとると、目の前の魔物は慌てたように「ちょっと待ってくれよ!」と言い募ってきた。
    「うるせえ、やっと宿屋で休めると思ったのに勝手に人の部屋に入り込みやがって! とっとと出てけ! でねえとどうなるか」
    「いや、ちょっと待っ……オレだよ、オレ! 何で知らないんだ!? オレのこと知ってるだろ!? それでお前、オレのこと好きなんだろ!?」
     心の底から驚いたという風にそう言ってくる魔物に、オレは思わず怪訝な顔をしてしまう。
     いやいや、何言ってんだこいつ!?
    「知らねえよ! なんなんだよ、変な魔物だな!? 新手の詐欺か何かか!?」
    「ええっ!? ……想定外だ、まさかそんなことになるだなんて」
     そう言ってなぜか落ち込む目の前の魔物の姿を、オレは改めてまじまじと見た。
     なんとなく、見た覚えが、あるような、ないような。……いや、会ったことはないと思う、が、本当にそうだったか? よくよく知ってるんじゃないのか、という不思議な感覚が、ちり、と頭の端の方をよぎる。
    「オレは淫魔なんだ」
     悲しそうな声で突然そう言った魔物の言葉に、オレは、「は?」と声を上げた。
    「何? 淫…魔?」
    「そう、淫魔。食事に人間の男の精を吸うんだけど、いつも、精を吸う相手の好きな奴の姿に変身するんだ。そうしたら魔物相手でも興奮する人間が多いからな」
     だからあんた相手にも、あんたが好きな相手の姿に変身したはずなんだけどな、と困ったような顔で言うその説明にオレは面食らう。
     この青い髪の男が、オレの好きな相手?
     こいつが一体誰なのかもわかんねえのに?
    「いや、そう言われても知らねえし、いや、でも、なんか、知ってるような……?」
    「なんだそれ、煮え切らないな。まあいいや、ぶっちゃけ別に知らなくてもいいんだ。オレは精を吸えればそれでいいんだし、というわけで、やろうぜ」
     そう言って、そいつは素早い動きでオレの側までやってきて、こちらの胸元に飛び込んできたので、オレは慌て、目を白黒させた。
    「うおっ!? な、な!?」
    「どうして知らないのかわからないけど、好みなんじゃないのか? オレのこと」
     そう言って、そいつはオレに顔をずいと近づけてきた。
     逆立てている青い髪。焦茶色の透き通った瞳。整った顔立ちと、そこそこ鍛えられている細い体。目を少し細めて楽しそうに笑うその顔はあどけなく、幼いようにも見えて。
    『ハッサン』
     いつだったか、こんな顔で、こいつに、名を呼ばれたことが、あったような。
     そして、オレも、『おう、どうした?   』と、言って。
     そんなことが。
     あっただろうか。わからない。あったような気がする。なかったような気もする。思い出せない。思い出せなくて、でも、やっぱり頭の端の方が、なんだか。
     突然、下半身を手で撫で上げられ、そして何かで背筋をつうと触られて、オレは背筋をぶるりと震わせた。
     目の前を見ると、少し顔を赤くして、オレのものを握りながら色っぽい顔で舌なめずりをする男の顔があって、それを見ただけで、自分のブツがなぜか脈打ち、オレは目を剥く。
     いやいやいやいや、え、なんで!?
    「ふふっ、悪くなかった? なかなか元気そうじゃん。……な、やろうぜ」
     そう言って体を擦り寄せてくるそいつを、オレは思わず抱き寄せてしまいそうになった、のをなんとか堪えて、手に力を込めて体から引き離した。
    「馬鹿野郎! 誰がやるか、魔物なんかと!」
    「ええ〜? そんなこと言うなよ、あんなプレイやこんなプレイも色々サービスしてやるから」
    「うっ………………るせえ!!! やらねえ!!! オレは明日兵士になる試練を受けるんだよ! さっさと宿屋で寝て体力回復してえんだ、魔物に精を搾り取られてる場合じゃねえんだよ!」
     そう、オレは明日、レイドックの国の兵士になる試練を受けるつもりなのだ。旅の最中に、どうもレイドックの国で兵士を募集しているらしいという噂を聞いて、妙に心惹かれるものがあって、ここまではるばるやってきた。城下町の宿屋で一泊して、万全の体制で試練に臨もうと思ってるのに、こいつと今からそんなことしてたら受かるもんも受からなくなっちまうだろ!
    「くそ、なんなんだよもう! あーもう、命は取らねえでやるからさっさと帰れ! 頼むから別の男んとこ行ってくれよ!」
     オレがそう言って魔物の体をぐいぐいと押して扉に向かわせると、魔物はどうやら諦めたのか、「ちぇっ、ケチ」と悪態をつき、あっかんべーをしてから、扉の向こうへと消えていった。
     バタンと閉じられた扉を呆然としながらしばらく見つめた後、オレはハアア、とひとつ大きなため息をつく。
    「なんだったんだ、一体……」
     謎の疲労感がすごい。戦闘こそしなかったが、これならいっそ普通に魔物と戦っていた方がマシだった気すらしてくる。
     明日の試練、もし落ちたら絶対あいつのせいだ。もしそんなことになったら恨むぜ、ちくしょう。
     しかし、……あの魔物が化けてたあの髪の青い男、あいつは一体誰なんだろうな。知ってるような知らないような、好きな相手のようなそうでもないような、謎の男。
     綺麗だったり可愛かったりする姉ちゃんでもなく、まあ男前の部類ではあるだろうし、見た目は結構いけてる気もするが、オレの好みのタイプかと言われるとさすがに首を傾げてしまう、……でも、何故か、迫られるとうっかり勃っちまって……
     そこまで考えて、あーっ、とオレは叫んだ。
     ダメだ。考えれば考えるほど泥沼に足を取られていく気がする。大体考えたところであの男の正体や所在がわかるわけじゃねえんだし、いくらウダウダ考えたって無駄だ。
     それよりもう早く寝よう。明日は大事な試練の日なんだ、万全の体調で挑みたい。そうだ、試練の前には教会に行かねえとな。間違ってもまた淫魔なんかが来ないようにちゃんとお祈りしとかねえと。オレはそう思って、ベッドに寝転がった。
     さっきのは悪い夢か何かだったんだと思いたい。そうでありますように、と祈りつつ、オレは目を閉じた。
     まさか翌朝教会で、今日やって来た淫魔が化けていた男の本物に遭遇することになるだなんて、夢にも思わないまま。
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