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    sasa

    @19th_zatsuon

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    sasa

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    【カイアサ】
    現パロ。
    一人暮らしのカインと(オズと二人暮らしの)アーサー。カインの片思い!

    The Narrator 低い振動音に気付きスマホに目をやれば、表示されたのは珍しい名前。
     電話なんて掛けてきたことあったっけ?
     瞬間湧き上がった喜びと、もしかして何かあったのではという不安。それか、ポケットの中で誤作動しているだけなのかもしれない。
     少し緊張しながら電話のマークを上にスワイプした。

    「……アーサー?」
    「あ、カイン? 突然すまない」
    「全然、全然大丈夫だ」
    「良かった」

     電話の声って本人の声じゃないらしい。
     合成された声だとかなんとか、この前テレビで見た豆知識を思い出したけど、ボイスチェンジャーを使われたってきっと話し方でわかる自信があった。この電話の向こう側にアーサーがいることは、確かなことだ。

    「電話なんて珍しいな。どうした?」

     もし、もしもだけど、『声が聞きたかっただけ』なんて言われたらどうしよう。

    「あ、それが……」

     つまりこういうこと。
     部屋が水没したんだったか、爆発したんだったか。とにかく今夜は家にいられなくて、こんなときに限って一緒に暮らしてるオズは出張中で、実家は飛行機の距離。

    「それで、もしよかったら、今から会えないか」

     アーサーは困ってるのに、アーサーは本当に困っているのに、その一言が嬉しくて、つい舞い上がってしまった。
     だからつまり、そういうこと。俺が勝手に浮かれていただけだ。

    「今日はありがとう。話を聞いてもらえてよかった」

     とりあえず食事でも、と入ったレストランで今日は大変だったと珍しく疲れを隠さずに話すアーサーを労いながら、でも頼られてるんだと内心喜んだのも束の間。
     レストランを出るなりアーサーはそんなことを言って、じゃあまたねと解散しようとするものだから、驚いて引き止めた。

    「えっ、アーサー、どこに行くんだ?」
    「駅前にいくつかビジネスホテルがあるだろう。今夜はそこに泊まろうと思う」

     ──ビジネスホテル!
     だってまさか、家にはいられないと連絡してきたのに。友人が、意中の子が、そんな連絡をしてきたら、誰だって泊めてほしいというお願いだと思うだろう。

    「ホテル?ホテルに行くのか?」
    「ああ」
    「なんで!?」
    「なん……、部屋には帰れないだろう」
    「じゃあどうして俺を呼んだんだよ!」

     アーサーは心底驚いて、まるで夕日は東へ沈むのだと言い張っている人間を見るような目で俺を見た。本当に理解できませんという顔だ。驚いているのはこっちなのに。

    「えっ、話を聞いてもらおうと……」
    「ま、まさか、本当にそれだけなのか?」
    「他に何が……」

     よくよく思い返すと確かに「会いたい」とは言われたが、「泊めて」とは言われていない。だけど納得いかなかった。

    「頼めよ、俺に!」
    「何を?」

     電話をもらってから大急ぎで部屋を片付けて、箱に入ったままだった貰い物のタオルをおろして、そのタオルを見ながら、アーサーが今夜俺の部屋でシャワー浴びるのかと緊張したりして、それはちょっと余計だったけれど、でも、だからって。

    「だから!……っ、ああ!本当に俺だけだったわけだ」

     このまま朝まで一緒にいれると思っていたのも、それが嬉しいのも、俺だけ。それはそうだ。アーサーは帰りたくても帰れないだけなのだから。

    「怒っ……てるのか?」
    「怒ってない!あんたは悪くない。俺が、俺が勝手に……」

     どうして俺に電話をかけてきたのだろう。どんな気持ちで俺を選んだのだろう。
     スマホを取り出して、電話帳を開いて、それから? アルファベット順の上のほうにいたからたまたま目についただけ?
     俺じゃなくても良かったのだろうか。きっと候補に挙がったであろうフィガロにはたぶん遠慮して、ヒースクリフの家は少し遠くて、それで、俺はアーサーにとっていったい何番目の候補だったんだろう。

    「一番じゃなきゃ嫌だ……」
    「カイン……?」

     アーサーが不安そうに俺を見る。そんな顔をさせてしまった自分が情けなかった。

    「なんでもない。……でも、」
    「……うん」
    「もっと、頼ってほしかったな」

     例えば、アーサーと会う前は服を新調したくなることとか、一番気に入っている靴を履きたくなることとか。
     そうやって、少しでも自分を良く見せたいのに、何も取り繕わずに、部屋着のままでもいいから会いたいと思うことがある。
     格好付けて、大人の男のように振る舞いたいのに、反面、飾らない、そのままの自分も知ってほしいなんてわがままだ。
     だけど、情けなくても、わがままでも、頼られたい。頼って良いのだとわかってほしい。
     そして、一緒にいたいと、そばにいたいのだと、知っていてほしかった。

    「カイン」

     知っていてほしいだけなのに。
     ──本当にそうだろうか?打算があったはずだ。その優しさに付け込もうとしているはずだ。この気持ちは俺だけじゃないと思いたかったはずだ。

    「カイン、本当は、……もう少し一緒にいたい」

     言ってほしかったのだ。
     一緒にいたいのはおまえだけじゃない、と。

    「……カインの部屋に行っても、良いかな」

     


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