九尾の日和と人の子ジュン「うわぁ〜。雰囲気のある社っすねぇ。」
某日、日和とジュンは凪砂の手紙にあった———日和が昔住んでいた社に来ていた。日和の話では村のはずれにあった社と聞いていたのだが、近くに人の住む気配はなく、社自体も苔が生えつき、鬱蒼と茂る木々が重々しい雰囲気を醸し出している。本当にここに人(正確に言えば人ではないが)が住んでいるとは考え難い。
隣に立つ日和は先程から一言も話さず、自慢の尻尾もぺたんと地面に着いてしまっている。出かける前に入念にブラッシングしてやったのだが、これは帰ってからまたブラッシングを要求されるなとジュンは小さく息をついた。
「おひいさん。大丈夫ですって。相手の方も会いたいって連絡してきたんでしょう?ほら、いきますよ。」
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