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    【包帯無駄使い装置の生誕祭記念】
    文ストのダザイ オサムの誕生日を祝う為の連載企画4日目です!

    【Who are you?】
    1人ひっそりと墓参りに来たダザイは、そこで思わぬ人物と遭遇して……
    ※※注意※※公式では公開されていない勝手なビースト設定が出て来ます。

    #文スト(腐)
    literature
    #太国
    taikoku
    #包帯無駄使い装置の生誕祭

    【4日目】【四日目】※オリジナル設定あります

     感情の全てを泣く事でしか表現出来ないような泣き方で、自分が泣くなんて、夢想した事すらなかった。
     ねぇ。織田作───。
     君は私を、頭の良い子供だと思っていたようだけど。でも、あんな風に私が泣くとは、君にだって想像してなかっただろう?

     それが出来てしまった事。
     それを出来るようにしてくれた事。

     国木田君という人は、そういう人なんだ。

    「だからこそ、あちらの世界では『太宰 治』として会いたくなかったんだ」
     固めた決心が、砂の城の如く崩れていってしまうから。
     吐き出して、縋って、「助けて」と叫んでしまうかもしない。
     国木田君はきっと、私一人の犠牲で成り立つ世界を許すような人ではないから。
     私と世界を救おうと、地べたに這いつくばってでも足掻き、自分をもボロボロにしていくんだ。
    「そんな君だから、私は……」
     声に出しかけた言葉を、胸の奥に吸い込ませた。
     此方の世界の私ですら伝えていない台詞を、口にする事が憚られたのだ。
     長い事寄りかかっていた墓石から頭を上げると、視界の先に面白いものを発見してしまった。
    「あれあれ〜。こーんな所に帽子置きがあるなぁ」
    「ゲゲッ。太宰! 何でこんなトコに……」
     中也は、露骨にしかめっ面をした。そして、私の左目を指さした。
    「って、何だよ何だよ、その左目! 昔の中二病でも復活したのか?」
     腹を抱えてゲラゲラと、中也は実に可笑しそうに笑っている。
     思えば、あちらの世界の中也は、常に不機嫌だった。不満を顔いっぱいに撒き散らし、体中で苛立ちのオーラを解き放っていた。
     そうでなければ、いつ爆発するかもわからない怒りを抱えているか。そのどちらかだったと思う。
     敦君同様に、中也もまた、こんな風に笑う事が出来たのか。
    「ほんっと、二十歳過ぎてまで十代の真似事なんて、クソさみぃんだよ。左目が疼く〜、とでも、やるつもり……、おい。どうしたんだよ?」
     涙を流して笑っていた中也は、私が顔を覆って蹲り出した為に、泡を食っている。
    「まさか、マジで左目どうかしたんじゃねぇだろうな」
     私の肩に手を置き、顔を覗き込もうとした瞬間。
    「ううっ、左目が疼くぅ」
     芝居がかった大仰な素振りで、左目を押さえてのたうち回ってみせた。
     本気で心配していた中也は、呆気に取られて、口をポカンと開けている。間抜けな顔だ。
    「なんだい、中也。その顔は。こんな単純な手に引っ掛かるだなんて」
    「う、うっせーな!」
    「これは単に、ものもらいが出来てしまっただけさ。私にとっては眼帯よりも包帯の方が馴染むからねぇ」
    「ハッ。包帯無駄使い装置にゃお似合いだろうよ」
     中也はこれ以上の関わりを避ける為か、くるりと私に背を向けた。
    「おや。もう帰るのかい?」
    「これ以上、手前といるとムカついてしょうがねぇからな」
    「それで、旧友との語らいは済んだんだろうね。今日は旗会の誰かの誕生日でもあったのかい? 命日は別だったよね?」
    「別に、手前ぇには関係ねぇだろ」
     ぷいと、そっぽを向いた所を見ると、図星だったのだろう。
    「此方の世界の君には、沢山の仲間がいるからね」
    「はぁ?」
     私の言葉の意味がわからず、中也は怪訝そうに顔を歪ませる。
     もし、別の世界線の君は、旗会とは出会っていないと言ったら、どんな顔をするだろう。
     羊から抜けた中也をポートマフィアに引き入れてから、私は中也に関わる人間全てを制限し、親密な関係を築ける人間を排除した。
     全ては、私の計画に必要だったからだ。故に中也は、ポートマフィアでは完全に孤立した。ただ、私への増悪をだけを募らせていった。
     ひとつだけ良かった事と言えば、出会わない代わりに、旗会の人間は死ななかったという事だけだ。
    「……なぁ、クソ青鯖。左目に気ぃ取られてたけど、いつもと雰囲気違わねぇか?」
    「左目の包帯以外は、いつも通りじゃないか」
    「いや、まぁ、そうなんだけどよ。なーんか、違うんだよなぁ」
     まさか、国木田君と乱歩さん以外にも気付く人間が───、しかも、それが中也だとは。
     これが信頼の差というのか。相棒を組んでいたのも伊達じゃなかったようだ。

     けれど、───。

    「私は私だよ。何、馬鹿な事を言ってるのさ。頭の中身まで帽子が詰まっているのかい?」
    「はぁ? あー、やっぱ手前はムカつくぜ。俺の気の所為だ。気の所為! 手前みてぇなムカつく人間が二人と居てたまるかっての」
     中也は今度こそ、完全に私に背を向けて歩き出した。
     不機嫌な背中は、それこそあちらの世界の中也を思い出させるけれど、殺気のないそれは、あちらの世界とは決定的に違っていた。
     私は、中也へ向ける眼差しとは思えぬ穏やかさで、暫し見送っていた。
     それと入れ替わるようにして、見送っていた私の視界に、今度は長身の影が揺らいだ。
    「太宰! こんな所にいたのか! 朝、起きたら居ないんでビックリしたぞ」
    「国木田君こそ、就業前だっていうのに、こんな所に何してるんだい?」
    「緊急の呼び出しがあって、近くで仕事をしてたんだ。異能者同士のよくある小競り合いだ。それは片付いたんだが。お前に似てる奴がいると思って来てみれば……」
    「本人だった、というわけだね」
     私は両手を広げて、戯けた仕草をした。
    「昨日、みっともないトコを見せてしまって、気恥ずかしくてね。ちょっと気持ちを落ち着けがてら、墓参りに」
     親指を立てて、私は背後にある墓石を指さした。
    「……この墓の主が、お前が昨日言っていた親友か?」
    「そうだよ。ポートマフィアでも異質な、殺さずの下級構成員」
     国木田君は、墓石の前に座ると手を合わせた。
    「俺には、どちらが良かったか判断はつかん。ただ、お前も右目の太宰も、その時代の、その世界で、懸命に生きた」
    「……国木田君ってば、また泣かせてどうするのさ」
     冗談めかして、私は笑った。
    「お前、朝飯はどうした? 食ってないなら、近くでモーニングでも食べるか?」
     国木田君が立ち上がりながら尋ねた。
     私は小さく首を振り、「国木田君さえ、手間じゃなかったら、国木田君が作った朝ご飯が食べたい」と答えた。
     国木田君は驚き、逡巡させると、携帯で何処か連絡を入れた。
    「はい。事件は解決済みです。それで、出社なんですが、一時間遅れます。はい、はい。ありがとうございます」
     携帯を切ると、国木田君は私に向き直った。
    「就業前に仕事したからな。その分、遅れてもいいそうだ。今から家に帰って、飯にするぞ」
    「やった! ねぇねぇ、今日のメニューは何? パン? ご飯?」
    「ここのトコ、洋食続きだしな。和食にでもするか?」
    「いいねぇ。卵焼きつけてよ」

     君に話していない、あちらの世界の話。
     あちらの世界で、佐々城女史も六蔵少年も死んではいない。
     織田作とのコンビで、どちらも死なずに済んだ。
     ただ、佐々城女史には逃げられて、女史は相変わらず事件を起こし続けている。よって、此方の世界よりも、蒼の使徒の犠牲者は多いのだ。
     どちらが良かったのだろうね。
     最愛の人達を失う代わりに民草は生きている世界と、最愛の人達を得る代わりに民草は死んでいく世界。
     聞いてみるのは、怖かった。

     それでも、国木田君は言ってくれる気がしている。
     その時代の、その世界で、懸命に生きるだけだ、と───。


    「よし。朝食は白米と味噌汁、卵焼きに鮭でも焼くか。冷凍しといたほうれん草をお浸しにして、いや……胡麻和えもいいな」
    「あー、すっごくお腹空いて来た」
     久しぶりに感じる空腹感に、楽しささえ感じながら、私はひっそりと思う。

     そんな君だから、私は好きになったんだ。
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