喧嘩にならない居場所。やめてほしい。
やめてほしくない。
本当はどっちなんだ。
事の発端はほんの些細なこと。
夜狩の宿泊先で部屋が一緒になった。
秘め事の恋仲だけど藍曦臣が手配してくれた。
それまではいい。問題はそこから先だ。
「曦臣、寝台が一つだけってどういうことだ?」
寝台一つと二人が一緒に入るのには少し狭さを感じる風呂桶。
「曦臣と一夜を共にするとか考えてもないし実行したくないからな」
「まだ恋仲を内緒にするおつもりですか?」
内緒にしてほしいと頼んだのは江晩吟の方だ。
「…せめて寝台は二つにしてくれないか?」
共寝をする勇気もないから少しぶっきらぼうにひねくれてみた。
「嫌です。恋仲だから共寝してもいいでしょう?」
「嫌だ。曦臣のばかっ…やめてほしい。共寝したらどうなるかわかっているんだろ?」
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