Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    yuno

    @inblue_info

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 39

    yuno

    ☆quiet follow

    #曦澄ワンドロワンライ の『失せ物』にて。曦澄と叔父甥。失くしたと落ち込むじうじうを兄上が慰めていたら、幼児が颯爽と解決する話です。現パロ設定。二人はスケーターで、あーりんは5歳設定でじうじうと二人暮らし。(スケーター要素はこの話にはありません)

    #曦澄

    【曦澄】大事なものだから「……ない……!」

    何度見てもない。慌てて周りに落ちていないか探してみたが、見つからない。
    江澄は青ざめた。

    「ど、どこに行ったんだ……っ」

    おかしい。昨夜、明日はこれをつけるからと出しておいたはず。それから今まで、手に取ったりはしていなかったはずだ。
    ベッドサイドチェストの上の、空っぽになっているジュエリー用のトレーを、江澄は信じられない思いで見つめた。

    失くしてしまったのは藍渙からもらったアメジストのピアスとリングだ。誕生日祝いにと揃いで贈られたそれらは、控えめなサイズながらも美しく光る石のカットが気に入っていた。

    とても精巧な技術で、石や台座の留具が滑らかな手触りに仕上げられており、阿凌が触っても怪我をしないのも良い。藍渙が自分たちのことを考えて選んでくれたのだとよくわかる。
    その気遣いが嬉しくて、だから、彼と出かける時はいつも身に着けるようにしていた。気に入ってくれているんだねと、嬉しそうにはにかむ笑顔が見たくて。
    それなのに。

    着け忘れるどころか、失くしてしまうだなんて。

    とにかくもう一度探そう。
    諦め悪く探し回るも、見つからない。苛立ちと焦りが募り、思わず枕に八つ当たりしたところで、玄関の呼び鈴が鳴った。


    「藍渙、すまない……」
    「うん? どうしたの?」

    出迎えの開口一番に沈んだ面持ちで謝られ、いったいどうしたのかと藍渙は困惑した。
    もしや出かける約束が難しくなってしまったのかと問えば、違う、そうじゃないと首を振られる。

    「何があったんだい?」

    とても落ち込んでいる恋人に、とにかく事情を聞こうと、藍渙はリビングの椅子を引いた。江澄を座らせる。

    「……貴方からもらったピアスが見つからないんだ。揃いの指輪も」

    どこかにやってしまったみたいで。昨夜までは確かにあったのに、探しても見つからない。
    すっかり気落ちして項垂れる江澄に、とりあえず何か健康面での問題ではなかったと藍渙はほっと安堵の息をついた。

    「昨日の夜まではあったの?」
    「ああ。今日、着けていこうと思って出しておいたんだ。朝起きた時もあったように思う。着替えて、着けようとしたら、出しておいたはずの場所から失くなっていたんだ」
    「そうなんだね。じゃあきっと家の中のどこかにあるよ」

    落ち着いて探したら出てくるんじゃないかな。
    宥めるように肩を撫でる。だが、江澄は力なく首を横に振った。

    「かなり探したんだ。でも、出て来ない。ベッドの下も見たんだが……」
    「大丈夫だよ、きっと見つかる。こういうものって、どんなに探しても見つからなかったのに、後からふっと出てきたりするでしょう?」

    だから大丈夫だよ。あまり気に病まないでと、慰めてくれる藍渙に、ようやく江澄は苦く笑みを浮かべた。

    「だと良いんだがな」
    「家の中にあるのは確かなんでしょう? 大丈夫だよ」
    「ああ」

    気持ちが落ち着いたのか、抱きしめた腕に甘えるように江澄が寄りかかってくる。
    ホッとして、その滑らかな髪に顔を埋めていると、あー、らんほぁん来たー! と奥の部屋から出てきた金凌がはしゃいだ声を上げた。

    「こんにちは、阿凌。偉いね、お着替えはもう済んだのかい?」
    「うん! じうじうもおきがえ、おわった?」
    「あ、ああ」
    「じゃあ、はい! これ!」

    つけるでしょ?
    そう言って金凌が得意げに出してきたのは、先程まで江澄が必死に探していたピアスとリングだった。

    「あ、阿凌! お前が持っていたのか?!」

    江澄が驚きに声を張り上げる。大きく目を見開き、金凌の手の中にある箱を取り上げた。箱の中を凝視する。

    「うん!」

    驚愕する江澄をよそに、金凌はにこにこと笑っていた。

    「それ、じうじうのだいじなものでしょ? だからあーりんの宝ばこの中にしまっておいてあげたの」

    なくしたらたいへんだもんね!
    得意げに胸を張る幼子に、江澄は安堵と脱力が同時に来て、膝から崩れ落ちた。

    「阿凌……」

    元はお菓子の入っていた箱だ。きれいな飾りのついた箱を金凌がいたく気に入って、宝物入れにすると取っておいたもの。その中に、アメジストのピアスとリングが大事そうに入れられていた。

    子どもの純然たる好意に怒ることもできず、江澄はがっくりと項垂れる。
    良かった。とにかく見つかって良かった。

    金凌はとても良いことをしたと誇らしげな顔をしている。藍渙はすぐには立ち直れないでいる江澄に代わって、偉いねと幼子の頭を撫でてやった。

    「すまない。騒がせた……」

    揃ってアパートから出つつ、江澄が決まり悪げに顔を俯かせる。その耳にはアメジストのピアスが光っていた。
    江澄の瞳に合わせたそれはやはりとても似合っている。無事に見つかってよかったじゃないかと藍渙は少し丸まった背中を撫でた。

    「貴方がとても必死に探してくれたのが嬉しかったよ。気に入ってくれてありがとう」

    照れたように笑う藍渙に、貴方がくれたものだし、それに、これを着けている俺を見るのが貴方は好きだろうとは流石に口にはできず、江澄は赤くなった顔をごまかすように、お出かけにはしゃぐ金凌の手をそっと握りしめた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺💕💕❤💘❤💖💜💜❤❤❤💖💙💜💙💜💛☺☺💒💕💕💜💜☺💞👏💜💙💛💜💙💛💞☺❤❤💖🍑☺💖💖💖💖💖💖☺☺☺👏👏♓🅰🅾💘😍💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    takami180

    PROGRESS恋綴3-5(旧続々長編曦澄)
    月はまだ出ない夜
     一度、二度、三度と、触れ合うたびに口付けは深くなった。
     江澄は藍曦臣の衣の背を握りしめた。
     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
     江澄は「待ってくれ」の一言が言えずに歯を食いしばった。
     止めれば止まってくれるだろう。しかし、二度目だ。落胆させるに決まっている。しかし、止めなければ胸を開かれる。そうしたら傷が明らかになる。
     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
     ところが、藍曦臣は喉元に顔をうめたまま、そこで止まった。
    1437

    takami180

    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
     江澄は目を剥いた。
     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
    「よかった、あなたをお守りできて」
     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
     江澄は眉間にしわを寄せた。
    「おかげさまで、俺は無事だったが。しかし、あなたがそ 1337

    takami180

    PROGRESS恋綴3-2(旧続々長編曦澄)
    転んでもただでは起きない兄上
     その日は各々の牀榻で休んだ。
     締め切った帳子の向こう、衝立のさらに向こう側で藍曦臣は眠っている。
     暗闇の中で江澄は何度も寝返りを打った。
     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
     牀榻を抜け出して、衝立を越え、藍曦臣の休んでいる牀榻の前に立つ。さすがに帳子を開けることはできずに、その場に座り込む。
     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
     江澄は己の肩を両手で抱きしめた。
     夏の夜だ。寒いわけではない。
     藍渙、と声を出さずに呼ぶ。抱きしめられた感触を思い出す。 3050