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    96noScull

    @96noScull
    まいたけメイン武受けスキーですがかっこいいみっちも好きなのでたけまいになることもあります

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    96noScull

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    タイトルはきみがとびおりるのならばの歌詞。曲も明るいけど小説はだいぶ暗い気が(;´∀`)みっちもココ君も自分のためには頑張れないけど人に対しては献身的すぎるところが同族嫌悪なんじゃないの?って思ったので。でもみっちは過去と現在を行ったり来たりしてなんとかまいきを反社にしない世界になっても心が追いつかない気がする…その時気力がなくなるんじゃないかなって思いました。

    #ココ武

    人の人生左右しといてふざけんな覚えてろこの野郎!! こいつ、今死にたいと思ったな。
     下手糞な笑顔を浮かべた花垣にいち早く気づいてしまったのは、こいつが苦手だからこそ観察する癖がついてしまったからだろう。
     行動の予測がつかない。金になびかないし圧倒的な力に立ち向かう無謀。得にならないのにやすやすと命を張る。善性の塊。未知の生物。
      
    関卍解散後、フリーになったオレに花垣は問いかけた。
    「ココ君は何が欲しいんすか?
    オレはココ君が必要とされたくて金を集めてる気がするんです」
    虚を突かれて、次には血が沸騰した。
    力任せにぶん殴ってもマイキーと渡り合った男は踏ん張った。
    「多分ココ君は、もう何も失いたくないから。
    だから固執してるんでしょう。それを否定はしない。
    ココ君は、自分のために力を振るえない人だ」
     あぁ、あの目だ。
     人間味を感じさせない。透明度の高い青い目。生物の住めない、有毒の水にも見える。
     己の弱さを許さない、その目がどれだけの人間の心を挫いてきたのだろうか。
     この時気づかされた。オレがこいつが苦手なのは、未知の生き物だからだけではない。
     同族嫌悪だ。

     思えばあの頃からあいつは死ぬ準備をしていたんじゃないのか。
     マイキーは自首し、数年の服役。サウスに身寄りがなかったのと少年法に守られた結果だろう。二十代のうちには出所だ。
     マイキーが出所後の居場所を創ろうと東卍メンバーとこまめに連絡を取っていた。
     他のチームにも依頼し関卍の追討を命じもした。これには誰もが驚いていた。
     自ら下ったオレや損得で動くやつは見逃されたが、マイキーの帰還を望む三途たちの行方は念入りに調べていた。
     そして花垣はその間何をしていたかと言うと、オレに付きまとっていた。だからこそ花垣が何をしていたかを細かに知っているわけだが。
     オレの生み出す金が一番厄介だということに本能で気づいていたのだろうか。
     仮にもマイキーを倒したという肩書がついて回り、花垣にわざわざ手を出す半グレもいなかった。
     自己評価の低いココ君がやりたいことを見つけるまで、そう言って11代目黒龍の名を借りてイヌピーを含め三人でいることが多かった。
     一緒にいて不思議だったのは、平々凡々で知能も並よりちょっと劣るレベルなのに妙に先を見越した発言があることだった。
     あ、この歌手紅白出ますよと言ったポップス歌手がヒットしたり、あぁもうそろそろあの事件が起きる頃ですねなんて意味ありげなことを呟いたかと思えば何かしら世間を騒がす事件が起きる。情報は金になる。花垣の情報源が気になって探りを入れてみたが謎のまま。
     非科学的な話だが、こいつは未来を知っているんじゃないかと思う。何らかの予知能力。
    正確なものならひと稼ぎできる。
     だけど儲け話に全く興味を示さず、これ千冬のおすすめの少女漫画っスとかココ君カラオケで洋楽歌いそう~カラオケ行きません?なんてさらりと流しやがる。
     こいつの取り柄はしつこいことだ。オレはすっかり絆されてしまい、ドヤ顔するイヌピーの元でバイク屋のオーナーとして働くことになった。

     すると目に見えて安堵した花垣は11代目黒龍も改めて解散を宣言して、D&Dモーターズで顔を合わせるくらいしか接点がなくなった。
     見るたびに衰弱している花垣を、無理やり元気づけさせるにしても恋人である橘日向以上の適任はいないのだから仲間たちは手をこまねいていた。
     痛みと悲しみを見ないふりして、一心不乱に突っ走った者の末路。
     オレは彼女を救えなかった。だけど花垣はそうではないだろう。
     燃え尽き症候群。
     金集めでアンダーグラウンドで有名になってしまった以上、身を守るためにもますます金集めに執着してしまったオレと違い、花垣の目的は達成されてしまったんではないのか。
    何もやる気が起きず、かといってこの先何が起きるかわからない。
    つかの間の平穏がいつ崩されるかと怯えるのにも疲れてしまった。

     ふらり、と廃ボーリング場のビルへ入っていく花垣を追いかける。
     あぁ、こいつ。
     戦っている間のこいつは、まさに狂奔と言ってよかった。
     オレもマイキー達も狂っていた。誰もが狂っていたんだ。
     後から思い出して、あの頃はよかったとかもうこりごりだなんて酒の肴にするんだろう。
     こいつはそれができない。いまだに消化できないんだ。
     もやもやを抱えたまま死にたい。忘れたい。忘れられない。
     ビルの縁に立ったあいつの髪が、びゅう、と風に巻き上げられる。
    「君たちが必要とされる時は国の有事だ。日陰者扱いされている時が平和ということだから耐え忍んでくれ、だっけか。
    国防を預かるヒーローたちへの有名な言葉。
    お前はもう、必要とされたくないんだな」
    誰が最初にこいつをヒーローにしたのか。
    願いを託されヒーローになったのなら、それはもう人の範疇を越えている。神もどきじゃないか。
    後ろに下がれない崖っぷちで何度絶望したんだろうか。飛び込んでしまえば楽になるという誘惑に耐えて、耐えて。

    「止めねぇよ、その代わり一緒に飛んでやる」
     こいつはどこまで行ってもヒーローだから。
    「ココ君は…ずるいなぁ」
     オレの命一つ分、金でもなく権力でもなく。
     オレの命でこいつを縛り付ける。
     オレのために息をして、オレのために泣いてくれよ。


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    96noScull

    DONE最近こちらに投稿してなかったなぁと思って。表向きビデオ屋裏でころしややってる記憶なしみっちとそんなみっちを愛しく思うまいきの話が読みたい…とついったでぼやいて悶々考えた末に出来た産物。まちるだ、せいへきゆがむよね…
    マチルダは微笑む「花垣く~ん?
    またDVDの中身が違うと苦情が来たんですが洋画のコーナーは君担当でしたよねぇ~?」
    答えなくてもわかっていると言わんばかりに年下の店長がねっとりした口調で責め立てる。
    愛想笑いしながらすみません、と頭を下げれば「はいまた口だけぇ~」とあてこすられる。
    謝る以外に道がないが、謝らなければ謝らないで「どうしたんですかぁ~その口は飾りですかぁ~考える脳みそないんですかぁ~」と嫌味が倍増すること請け合いである。
    なんでこんなところにいるんだろ。バイトならいくらでもあるのに。
    でもなぜだかここから離れられない。若い店長は使えない年上のバイトなんかさっさとクビにしたいみたいだが。
    いつも店に最後まで残るのは武道だ。DVDの中身のチェックを終えると一番最後に見るものがある。お気に入りの洋画。腕利きの殺し屋がアパートの隣人の少女を汚職警官から庇い、共に過ごしていくうちに絆が芽生えるストーリー。端的に言えばハッピーエンドではない。殺し屋なんて生業である以上、主人公は幸せになるべきではないんだろう。少女に金を遺し、自分は少女の家族の仇を道連れに死ぬ。
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