素直になること放課後、目的のものがもらえなかったことに落胆しつつも彼女の元へと向かいそして手を差し出した。
「?何…?間宮くん…」
「何って今日の日付を知っておいて知らないは通らないけど?」
「ああ!…これ、リッちゃんに渡しておいてくれる?」
そう言ってユウキは可愛くラッピングされた小さな袋を僕の手の中に置いた。
「……まだあるだろ」
「え?ないよ?」
そう言われた途端時間が永遠かと思えるほど長く感じられた。
「………………僕のは?」
長い沈黙のあとようやくその言葉を発したがきょとんとただただユウキは首を傾げるだけだった。
「え?ほしいの?」
「…恋人からのバレンタインのプレゼントを欲しくない男なんていないと思うけど?」
「だって前に手作りのもの捨ててたでしょ?だからいらないだろうと思って」
「そっっ…それは……」
過去の自分を内心罰した。あの時の自分は信頼する人以外が作ったものはすべて毒のように思えていた。だからこそあんなことをしたし言った。自分がこんな風に人を好きになる時が来るなんて思っていなかったから。
「……ほしいの?」
「えっ…」
「どうなの?間宮くん」
真っ直ぐ見つめられて問われ僕は言葉をなくす。
「…………ほしいよ」
「何が?」
「~~っ……君が、ユウキが作った、本命のチョコレートが、ほしい……」
顔が真っ赤になっていたと思う。そんな僕を見てにんまりと満足気に笑った彼女は「じゃあ、今度作ってくるよ」と言った。
「……君ってそんな性格悪かったか?」
「間宮くんがそう思うのなら、間宮くんのせいじゃないかな」
「ああ言えばこう言う…」
「ふふ」
ため息を吐きながら、こうなるのなら彼女の前では見栄を張るのは少しだけやめておこうと決意したバレンタインの日のことだった。
-Fin-