不思議な男の子 桜が散る。ひらひらと、踊るように、舞うように散っていく。
桜が見頃だからと友達と一緒にお弁当を作って、精一杯のおしゃれをして桜の名所である公園へと行って、そして見事な桜にスマホを掲げ写真を撮っていた。パシャリパシャリと音を立てて。けれど何枚目だっただろうか、桜だけではない見知らぬ男の子が写った。そう、知らない…知らない人の…はずなのだ。
「上手く撮れた?」
「え、」
いつの間にか近づいていた男の子はそうやって私に笑いかける。…怒った様子はどこにもなかった。
「あ、はい…それはもうくっきりと…」
「僕にも見せてほしいな」
名乗ることもせず私のスマホを覗き込んでくる男の子。けれど不思議と嫌な気持ちはせず、むしろどこかで会ったことがあるような…不思議な感覚に襲われていた。
「あ、あの…!」
「なにかな?」
「私、私たちって…前にどこかで会ったことってありますか!?」
彼は一瞬驚いたような顔をした後嬉しそうに柔らかく笑みを浮かべた。
「そうか、君は……」
「え?」
「いや、なんでもない。ないよ、この時代では…この世界では会ったことは今が初めてだ。でも、君さえ良ければ…僕と、友達になってくれないかな」
そう言って手を差し出す男の子。何故だか懐かしい気持ちに苛まれながらもその手を握り返す。
「私、ユウキ。小鳥遊ユウキ」
「僕は…ーー、伊吹だよ」
にこりと笑う彼。
(やっぱり知っている気がする…)
そんな不思議なことを思いながらも電子機器に疎い彼に教えつつ私たちは連絡先を交換したのだった。
-Fin-