雨の逢瀬「すごい雨だなぁ…」
打ち付ける雨の中、傘を差しながら市香は歩く。ストッキングもパンプスの中も雨のせいでぐっしょりと濡れていて早くシャワーを浴びたくて仕方がなかった。
「おい、入れろ」
「さ、笹塚さん!?」
突然かけられた声。その声が恋人のものだから驚き瞬きを繰り返す間にひょいと傘を奪われてしまった
「か、帰れたんですか」
「まあな。ま、缶詰になってたから傘なんて持ってなかったんだが…お前が通りかかったからいいか。褒めてやるぞ、ポチ」
「……」
じ、と市香は尊を睨みそれに尊は首を傾げた。
「なんだよ、言いたいことがあるなら言え」
「…ちゃんと寝てくださいね」
「何、お前このまま帰んの?」
「帰り道なんですからそうに決まって…」
「そうじゃなくて…」
そう言ってぐっと顔を近づけると濡れた唇で尊は市香の体温を奪った。
「俺んち来ねえのって誘ってんだけど、わかんねぇ?」
「〜〜〜っっ、」
「どうする?」
顔を真っ赤にさせた市香。久しぶりに会えた恋人、尊の姿に行かない選択肢はもうなくなってしまった。
「い、行きます!」
「よし、なら覚悟しとけよ」
「覚悟って…」
「穴埋めするに決まってんだろ、ばか」
はっと愛おしげに尊は笑いそれが嬉しく、市香は尊の腕にしがみついた。濡れても構わないといったような愛情表現に尊は更に笑みを深めた。
-Fin-