影の重なり (かわいい…僕の雅が、こんなに、こんなに、こんなにもかわいいッッッ……‼︎)
なんて悶え、にやけ、幸せに満ち溢れた表情を晋作が浮かべていることは隣の雅子以外、全員気づいていた。雅子はエリアごとに交わす祭り会場の様子に瞳をきらきらと輝かせ、そんな雅子に見惚れてばかりいる晋作。そして雅子に声をかけられた時は平然と装う。なんとも男とは見栄っ張りな生き物だと多くの女性サーヴァントたちは晋作の分かりやすさに大きくため息を吐いた。そして牽制するようにきつく、固く、手を握り合っていた。
「あら?」
と、空に大輪の花々が咲き乱れる。
「花火…」
「そろそろ祭りも終わりってことだな、残念なことだけど」
「ええ、本当…」
それでも綺麗だと言って雅子の視線は今度は花火へと移る。そんな雅子の手を取ると人気の少ない林の方へと連れてくる晋作。
「と、突然どうしたので……んっ!?」
突然塞がれた唇に、晋作ごしに見える花火。それに驚き雅子は目を丸くして、顔を赤くさせた。
「突然じゃない。雅子は今日はすごく、すごく、すごく!!かわいい!し!」
「あ、ありがとうございます…?」
「僕は気が気じゃなかったんだ!君を誰かに取られたらどうしようとか、誰か君に邪な目を向けていないだろうかとか…」
「あなた以外、いないのでは?」
「うっ、そ、そりゃあ!僕は君の夫だからな?その権利があるだろう!?それに…君が嫌ならいい」
さっきまでの気の強さはどこへいったのやら急に萎れる新作がおかしく思えて思わず雅子は笑った。
「あなたはどっちなんですか」
「どっちって…雅の嫌なことはしたくないし…」
ごにょごにょと男らしくないことを口にする晋作に雅子は大きくため息を吐く。そしてそのまま爪先を浮かせると晋作の唇に自身の唇を重ね合わせた。
「っ??!!」
驚き、顔を真っ赤にさせる晋作と同じように頬を赤く染めた雅子は唇を離した後照れ笑う。
「あなたがしたいことを私が嫌がるとお思いですか?」
言葉裏に『私は嫌ではない』と言っていて衝動に駆られるまま晋作は雅子を抱きしめた。
「本当に、君ってやつは最高だな!」
「ありがとうございます」
祭りが静けさを増していく中、一組の夫婦の影はずっと重なりあった――。
-Fin-