クラゲ🎈×ハミバ🌟海の世界にも退屈してきた🎈、たまに小島に顔を出して空の世界や陸の世界へと思いを馳せていた。
そんなある日、ぼんやりと眺めていた遠くの空からフラフラと力なく鳥がこちらへ飛んでくる。
小島へと降り立ったその鳥は着陸するなりパタリと倒れ込んでしまった。
いきなりのことで困惑していた🎈だったが、恐る恐るその鳥を見ると、純白の羽に赤い血がべったりと付いていた。鳥は右の羽を負傷していた。
意識はなく苦しそうに呼吸をしている姿を見てしまっては、放っておくわけにはいかない。🎈は1度海の中に戻り、薬などを調合し、鳥を応急処置してあげた。
少し様子を見守っていると、鳥が意識を取り戻した。
🌟「ここは…?」
🎈「とある海の小さな孤島さ。翼を怪我していたようだけれど何かあったのかい?」
🌟はハッとして自身の翼を確認した。血だらけだった右翼は綺麗に洗い流され、処置が施されていた。
🌟「これは…お前がやってくれたのか?」
🎈「怪我をしているのに放っておくことなんて出来ないだろう?僕達海の生き物と体の構造が違うから少し効き目は薄いかもしれないけど、安静にしていれば治るはず─」
と言い終わる前に🌟は🎈の手を握り、満面の笑みで
🌟「本当に感謝する!!!!お前は命の恩人だ!!!!!!」
と言った。(というか叫んだ。)随分と声の通る鳥なんだなと🎈は思った。
🌟「俺達はほかの鳥たちよりも歌を歌うのが得意でな。人間たちの中で俺達はかなり珍しい存在らしい。だからタチの悪い人間に見つかると捕まえられてしまうんだ。…俺も海賊に目をつけられて、怪我をしたところを捕えられる所だったんだが、命からがら逃げてきたという訳だ。」
彼はそんなことをなんでもない事のように話した。何故?なぜ君はそんなに傷つけられて笑っていられるのだろう。
🎈が少し黙っていると、🌟が続けた。
🌟「俺はこの傷が治るまでここから動けない。だが1人でずっと待ち続けては先に俺の心が退屈で死んでしまう。お前さえ良ければ、しばらく俺の暇つぶしに付き合ってはくれないか?」
🎈「なるほど……」
確かに空の世界で生きている彼の話にはとても興味がある。それに、処置をしているとはいえ怪我をしている彼を1人でここに置いていくのは外敵から狙われるリスクも高いだろう。
🎈「分かったよ。住んでいる世界が違うもの同士、お互いに面白い話が聞けそうだしね。」
🌟「…!!!ありがとう!えーと…」
🎈「ルイで良いよ」
🌟「俺はツカサだ!しばらくの間よろしくな、ルイ!」
🌟は🎈に色々な歌を聴かせてくれた。雲の上の世界のこと、人間の街のこと、彼の兄弟のこと、色んな話をしてくれた。🎈はそれに1つずつ返すように、彼が発明したものをお披露目したり、海の世界で開かれるショーについての話をした。
そしてあっという間に時は流れていき、🌟の翼は綺麗に治ってしまった。
治っているのを見て🌟はとても喜んでいたが、どこか悲しそうな、寂しそうな顔をしていた。それは🎈も同じだった。
🎈「本当に、行ってしまうんだね…ツカサくん」
🌟「ああ、俺は渡り鳥だからな。…そろそろ行かねばならん」
二人の間に沈黙が流れる。「行きたくない」「行かないでほしい」なんて、お互いに言うことは出来なかった。住んでいる世界が違うのだから。
🌟はグッと何かを心に決め、🎈の方を振り返り、彼の手を握った。
🌟「来年、俺はまたここに降り立とう。来年も、再来年も、その次もずっと!…だからルイも、新しい発明を沢山用意して、ずっとここで待っていて欲しい。……ダメか…?」
もう二度と会えないだろうと覚悟を決めていた🎈は🌟の言葉を聞いて目に涙をうかべた。海の世界で周りに受け入れられなかった🎈にとって、🌟の言葉は救いだった。彼は僕を必要としてくれるのだと、また君と会えるのだと思うだけで涙が溢れてきた。
🎈「うん…うんっ…!もちろんだとも!君が想像もしないような素晴らしいショーで君をお出迎えするよ…!だから、毎年必ず無事にここに帰ってきてね…約束しておくれ。」
🌟「あぁ!もちろんだ!約束する!」
2人は名残惜しそうに互いの手を離し、🌟は空へと飛び立って行った。🎈は🌟の姿が見えなくなるまで、ずっと空を眺めていた。その瞳はかつてのような空虚ではなく、白い翼を写していた。