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    @eh_myh

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    🐴と1️⃣と弟
    直接的な描写はないですが、三人で付き合ってるという謎世界線
    1️⃣も弟も鈍いという意味では似た者同士という話です

    「左馬刻さん! 聞いてください!」
    「おい、左馬刻。この前……」

    二人から別のタイミングで同じ話をされた。内容は単なるお互いの愚痴で、弟からは一郎が過保護だと言われ、一郎からは弟に危機感がなさすぎると聞かされた。別々に二人から話を聞いたがおそらく一郎が弟に注意をしたら、弟がそれに口答えして軽いケンカ状態になっているのだろう。それをわざわざ俺に愚痴ってきたと思われる。正直、お前らで解決しろと言いたいところだが、あいつら兄弟似たもの同士で頑固なところがあり、特に弟のほうは反抗したらなかなか引かない。お互いそれが分かっていて、でも何とかしたいと言う気持ちが俺に相談するということにつながったのだと簡単に想像がつく。ガキ二人が意地張り合っているのを見るのもいい加減飽きてきたころだ。二人の仲を取り持ってやることにした。
    二人に話し合わせるために、今日の予定を弟から聞き出し、萬屋ヤマダに二人がいることを確認して訪れる。弟に案内されて中に入ると、一郎以外の姿はなく、その一郎も無言で仕事をしていて、いつもの騒がしさはなかった。
    「左馬刻さん、何か飲みますか?って言ってもお茶ぐらいしかないんですけど……」
    「茶でいい」
    俺を事務所内まで案内すると何か飲み物を探しに行く後ろ姿に返事をする。そして一郎のデスクの前に立つ。
    「仕事いつ終わんだよ。あいつと話すぞ」
    「あと10分で終わる」
    「あっちで待ってっから終わったら来いよ」
    デスクから離れてソファまで行くと、すでに三人分のお茶が用意されていた。
    「この前、俺様に話したこと、一郎に直接言え」
    「えっ……でも、」
    「でもじゃねえんだよ。話さなきゃ一郎も分かんねえだろ」
    「そうですけど……」
    「嫌なことを嫌っつーのはなんもおかしくねえんだからよ」
    「……分かりました。ちゃんと言います」
    「おう」
    一郎と話すと言った姿からは緊張が読み取れる。自分の意見は曲げたくないが、一郎とも対立したくないといったところか。俺自身、合歓と口喧嘩をしてきたことはあったが、結局はどちらかが折れることが多く、喧嘩と言っても、ピリピリとした空気感もなかった。だから弟や一郎を見て男兄弟の距離感というものを珍しく思う。といってもかなり穏やかな方に分類されるんだろうけど。
    「待たせたな」
    「んじゃ、さっさと本題な。おら、言えよ」
    「う……。兄ちゃんは過保護すぎる、と、思う」
    「それはお前のことを思ってだな。SNSをやるなとは言わねえ。けど危ない世界だってことも分かっておけって話だっただろ」
    「それは分かってるけど、でも、友達以外とつながっちゃダメなのはやだ。ていうか三郎もそうじゃん。ネットで知り合った人いるって言ってた。なんで俺だけダメなの」
    「確かに三郎は中学生で不安がないわけじゃねえけど、何かあったらちゃんと俺に報告してくるからだ。そういう点、お前はまず自分で解決しようとして危険な目に遭う可能性があるからやめとけって言ったんだ」
    「……」
    一郎のもっともな意見にぐうの音も出ない様子の弟に同情しないわけではない。心配だからと言ってSNSの使い方まで口出しされることも高校生のガキには辛いことだろう。しかし俺も合歓がいる以上、一郎の言い分も分かる。仕方ない、助け船を出してやるか。
    「つまり一郎はネットでダチになったやつらを報告すりゃ納得するんだな?」
    「そうだな」
    「だとよ。お前はそれじゃダメなんか」
    「ダメじゃないけど……なんかやだ」
    理屈では勝てない弟は感情的な話を持ってくる。俺も一郎も意地悪を言いたいわけではないから、そういわれるとなかなか崩しにくくなってしまう。大人二人に詰められて、拗ねたような泣きそうな顔で口をきゅっと閉じている様に一郎ではなく、俺が折れた。
    「そんならお前が困ったとかやべえと思ったらすぐ俺か一郎に言え。それが約束できんなら好きにすりゃいい」
    「おい、何勝手に話進めてんだよ」
    「てめーもこいつが大事ならちっとは冷静になれ。自分だけが我慢させられるっつー納得いかねえ気持ちも分かってやれよ」
    「けど俺はこいつのためを思って」
    「あ? じゃあてめえは納得できんのかよ。俺様がてめーに何もすんな、黙って見てろなんて言ったらよ」
    今度は一郎が黙る番だった。それを俺の隣で心配そうに見ている顔に多少の苛立ちを覚えるが、こいつもこいつで重度のブラコンであることを自身に言い聞かせる。
    「こんで話はまとまったな」
    二人して沈んだ顔をしているが、まあいいだろう。ズボンのポケットから煙草を取り出して火をつける。
    「いや、待て。左馬刻、まだ話は終わってない。というか俺が心配になる証拠を見せてやる。この写真をアップした後に来たのがこのメッセージだ」
    復活した一郎が弟にスマホを出させて受け取ると何やら操作して写真を見せられる。その写真には黒板の前で高校生が四人ほど後ろを向いてジャンプしている姿が映っていた。そして次に見せられたのは短いメッセージのやり取りだった。
    “今日も元気いっぱいだったんだネ!んん?カッコいい✨パンツはいてるけど、もしかしてデート🏩カナ??僕は最近デートできてないや(^^;)どこかにいい子いないかナ?”
    “まさか! これはいただきものなので、全然デートとかじゃないですよ~ 良い人いるといいですね!”
    “こんないいものくれる人がいるなんて妬けちゃうョ(^^;)それにいい子だから心配カモ…。いつでも相談に乗るから何でも言ってネ😘”
    “心配してくれてくれてありがとうございます!”
    やり取りはここで終わっていた。意味の分からないゴテゴテした文章に加えて、内容がこいつのことを誘っているとしか思えない。
    「こんなんセクハラだろ。なんで恋人からもらったって言わねーんだよ」
    「兄ちゃんもセクハラだと思う。まあ、恋人からっつうのは言うと変に詮索されたり執着されたりするかもしんねえから言わなくてよかったよ」
    「たぶんこの人おじさんなだけだと思うんだよ。表現がちょっと変な人」
    「笑いごとじゃねえんだよ。いい大人が高校生にこんなメッセージ送ってる時点でヤバいんだよ」
    「しょっちゅう来るわけじゃないよ。写真上げたときぐらいだし」
    こいつから出てくる情報にその男含めこいつの危機感のなさに頭を抱えたくなる。一郎も同じようで、イラついた様子でスマホを操作したあとに返していた。
    「あー!何で勝手にブロックすんの!」
    「そいつと話すならSNSなんかやらせねえ」
    「横暴! 左馬刻さんもそう思いませんか!

    喚く弟に絶対譲らないという一郎。これに関しては俺も一郎に賛成だった。あんなもの、下心がなければ送れないメッセージだ。かと言ってまた話を蒸し返すのも面倒だった俺は、煙草に口をつけて閉口する。
    「そういう兄ちゃんだってこの前、きれいな女の人に言い寄られて、いい感じになってたじゃん。そういうのはいいんだ。ふーん!」
    俺に味方になってもらえなかったのが効いたのか、怒りを一郎に向け始める。弟の言った話には心当たりがある。俺はその場に居合わせなかったが、こいつが遠くからその女と一郎を撮って送ってきたことがあったのだ。その時は浮気現場なんて笑っていたが、根に持っているあたりヤキモチは焼いていたことに今さら気付く。たかが声かけられたくらいでと思うが、気に食わない気持ちは分かる。そもそも一郎に弟をとやかく言う権利があるかと言われると、一郎は一郎で自分への好意に疎いところがあるのだ。
    「確か依頼の礼だっつって、ブレスレットもらってたよな?しかも手作り。あれは完全アウトだろ」
    「石山さんのことか? それならあの人はそういうのを趣味で作ってるからってくれたんだよ」
    「いくら趣味だとしてもあんなガチのやつ、やんねーだろ」
    「んー? それぐらい感謝してますって言う気持ちの表れとか?」
    「セクハラも分かんねえような乳臭えガキが黙ってろ」
    さっきまで怒っていたはずの弟まで一郎に加担して、これだからこのブラコンどもは……。なんで俺が変なことを言った空気になってんだ。おめーらじゃなきゃ沈んでんぞ。クソが。
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    PROGRESS一次創作。
    今書いてるものの、進捗。
    警備員×芸能人そろそろ空も白んできそうなころ、麻木トーマはやっと番組の収録が終わり、帰り支度をしていたところだった。テレビ局スタッフや他の演者に挨拶をしながら、エントラスが見えてきたところで、ササッと身なりを整える。もしあの人がいたら、と思うと少しでもよく見られたかった。
    「お疲れ様です!」
    少し高めのトーン。照れてしまいそうになるのをテレビ用の笑顔を貼り付けてなんとか隠す。
    「お疲れ様です」
    頭を少し下げて挨拶を返してくれたのは、この局の警備員をしている高根という男だった。トーマはこの警備員に対して、助けられた瞬間から恋をしている。高根の挨拶は無愛想な人間だと思ってしまうような抑揚のないものだったが、恋をしているトーマからすれば仕事を頑張っていると映り、胸をときめかせてしまう。彼の横を通り過ぎたあと、被っていた帽子をさらに深くする。彼の前では醜態を晒せないと気を張れるのに、姿が見えなくなると一気に顔の緩みと熱が襲ってくる。こんなところを見られたら何を言われるか。特にマネージャーにはあれこれ突っ込まれるだろう。車に戻るまでになんとかしないとと考えた末、思いっきりにやけてしまうのが一番だった。そうすればスッキリして案外早く収まるものだと気づいた。
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